長屋切り離しとは何か?長屋切り離しによるトラブルや注意点も紹介!
長屋切り離しという言葉を聞いたことがあっても、一体どういったことなのかわからない方もいるのではないでしょうか。そこで今回は、長屋切り離しに焦点を当てて、その方法や注意点、長屋切り離しによるトラブルなどについてご紹介していきます。
長屋切り離しは住民の同意が必要など、独自の対応も求められます。長屋切り離しの際の業者選びも含めて解説していきますので、どうぞご覧ください。
長屋切り離しとは?
一言で解体工事と言っても建物の形態や環境はさまざまです。そのうちの1つとして長屋切り離しがあり、文字通り長屋を切り離す工事のことを指します。長屋の解体工事とも言えますが、一般的な建物の解体工事との違いとして、建物全てを解体するわけではないという点があります。
長屋を全て解体するのではなく、長屋の一部分のみを解体することから長屋切り離しと呼ばれています。まずは長屋の基本的な知識を身につけつつ、解体方法について確認していきましょう。
長屋とは?
長屋とは、集合住宅の一形態で、複数の住戸が水平方向に壁を共有しながら連なっています。横に長い1つの棟を一軒一軒区分することで、それぞれが独立する住戸として存在するものだと扱われています。このような住宅形態を長屋・テラスハウス・連棟住宅と呼びます。
長屋の場合は1階建てが多くなっていますが、近年では2階建てやそれ以上のものも存在しています。長屋は古くからある日本の伝統的な建物としても知られており、関西地方では「文化住宅」と呼ばれて親しまれている部分もあります。
長屋は玄関や階段、廊下を共用していないところに特徴があります。長屋と共同住宅の違いについて疑問に思う方も多いですが、共同住宅の場合は階段や廊下といった共用部分があります。長屋には共用部分がないので覚えておきましょう。最近では、長屋のことを「テラスハウス」や「タウンハウス」と呼ぶこともあります。
町屋とは?
長屋と似た建物として町屋があります。町屋も平屋形式で横に長い造りになっているところに特徴があります。町屋とは町中にある家を指す言葉で、特に商家を指すことが多くなっています。
都市部や宿場町など、比較的人口密度が高い地域に町屋が建てられて商業が営まれてきました。通りに面して軒を連ねている並んでいるところに特徴があり、間口が狭いわりには奥行きが長い構造になっていることが多いです。
町屋は特に集合住宅というわけではなく、一軒の家として建っています。長屋と同様に古くからある伝統的な建物として親しまれてきました。
長屋(テラスハウス・連棟住宅)の解体方法
長屋の解体工事は「切り離し解体」という施工方法
一般的な家屋や建物の解体工事であれば、建物全体を取り壊すことが多いですが、長屋切り離しの場合は建物全てを取り壊すわけではありません。例えば、「長屋の一部分を切り離して、そこに新しい家を建てたい」といったニーズを満たすために切り離し工事を行うことがあります。
長屋は軒を連ねていることや壁を共有しているところに特徴がある建物でもあり、切り離しを行うのが難しいという部分もあります。軒が連なっていたり、1つの棟を区分していたりすることになるので、隣家との間隔が極端に狭いということもあります。あるいは両者が「くっついている」ような間隔になることもあります。
切り離し工事を行わない建物には人が住んでいることもあり、そうした住人に配慮しながら工事を進める必要性も出てきます。単純に全てを取り壊せば良いというわけではないことから、長屋の解体工事は「切り離し解体」と呼ばれることがあります。
その手順としては、通常の解体工事と大きく変わることはありません。ただし、隣接する建物の内部(解体しない側の建物)にも養生や仮補修を行うといった点は通常の解体工事と異なる部分です。
解体工事をしない側の建物を傷つけないようにすることが大切であり、通常の解体工事と比べてより慎重さが求められることも長屋切り離しの特徴です。また、長屋の解体の際は「残す柱と切っても良い柱」や「補修箇所」などを事前に調べておく必要があります。
誤って残しておくべき柱などを切ってしまうと、工事後に建物が傾いてしまったり耐震強度が極端に落ちてしまったりすることがあります。また、木造の長屋であればスムーズに切り離しができても、鉄骨造やコンクリート造の長屋となると、さらに難易度が高くなります。
古くに建てられた長屋であれば木造のケースが多いですが、比較的新しいものだと鉄骨造やコンクリート造であることもあります。そうした構造の長屋は解体が難しい部分もあるので、腕のある業者に工事を依頼することがポイントです。
長屋切り離しの際は屋根裏と床下のチェックも必要
長屋切り離しにおいては、屋根裏と床下のチェックも入念に行う必要があります。通常の解体工事でもチェックが必要な部分ですが、長屋切り離しにおいても屋根裏をチェックして通し梁がどうなっているのかや、床下をチェックして切り離し後にどういった補強工事をするべきかなど確認する必要があります。
長屋切り離しの場合は切り離して終わりということではなく、残された住戸の補強工事や補修工事まで行ってようやく完了となります。そのための手順を把握する上で事前に屋根裏や床下をチェックすることが重要です。
こうした1つ1つのチェックをきちんと行うことで、適切な形で長屋切り離しを進めていくことができます。また、切り離し費用の見積もりを出す上でも屋根裏と床下のチェックは必要になってくるので、施主としても意識しておきたい部分です。
長屋切り離しの注意点
長屋は独立した住戸が連なっている建物であり、複数の住人が住んでいます。長屋切り離しの注意点として、その中で切り離し工事を行うためには、他の住民に対する説明や同意を取り付けることも欠かせません。
個人の意思と判断だけで長屋切り離しを行うことはできないので注意が必要です。また、切り離し工事を行った後の補修費用や補修の責任範囲について理解しておくことも大切です。単純に自分の住戸だけを切り離せば良いという問題ではないので、さまざまな注意点について理解を深めていきましょう。
長屋切り離しに関する法律
長屋のように構造上区分され、それぞれ独立して部分利用することができる建物に関しては、区分所有法と呼ばれる法律による規定が存在します。区分所有法の考え方に則ると、隣家との間にある界壁や柱、梁に関しては共用部分にあたると考えられています。また、取り壊しを行うためには隣人の承諾と全所有者の4分の3以上の承諾が必要とされています。
これは区分所有法第17条で定められており、以下のような内容となっています。
- 共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く)は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議で決する。ただし、この区分所有者の定数は、規約でその過半数まで減ずることができる。
- 前項の場合において、共用部分の変更が専有部分の使用に特別の影響を及ぼすべきときは、その専有部分の所有者の承諾を得なければならない。
上記の規定があるように、個人の意思や判断のみで長屋切り離しを行うことはできません。区分所有法の規定に則った上で、然るべき行動をしてから長屋切り離しに着手することが求められます。
住民への説明と同意が必要
長屋切り離しを行う場合は住民への説明と同意を得る必要があります。隣接する住居の方や連棟の方全員に対して、作業手順や切り離し解体後の壁の養生などに関して十分な説明をすることが求められます。施主の説明だけでは不十分な場合、解体業者に直接説明してもらうと良いでしょう。
また、両側の隣接する住居の方との間では、工事中や工事後の揉め事や紛争を防止するためにも事前に覚書を取り交わしておくことが有効です。口頭での約束では後でトラブルになることもあるので、必ず書面に残しておくようにしましょう。
切り離し工事を行う前には、両側の隣接する住居の気になる部分を証拠写真として残しておくことも重要です。場合によっては当初からヒビ割れや不具合が生じていたにも関わらず、切り離し工事によって生じたものだと両隣の住人からクレームをつけられてしまう可能性があるからです。
本当に切り離し工事によって不具合が生じた場合は、施主の責任で補修工事をする必要がありますが、それ以前からあるものに関しては施主の責任ではありません。無用なトラブルをなくすためにも、ヒビ割れや不具合がある箇所について写真に収めておく必要があります。
家屋調査を予め行っておく
長屋切り離しを行う上では、家屋調査を行うこともおすすめです。当初からあったヒビ割れや不具合を写真に収めておくことも大切ですが、それ以外の部分で不具合が生じる可能性もあります。建築士の診断や家屋調査会社による家屋調査を行ってから長屋切り離し工事に入ることで、施主自身の立場を守ることにもつながります。
事前の家屋調査によって建物の傾きや各箇所の破損などを計測して記録に収めておくことで、その後何らかの破損や不具合が見つかった場合に、その原因を導き出しやすくなります。切り離し工事が終わった後に生じた傾きや不具合が本当に工事によるものなのか、それとも最初からあったものなのか判断するという意味でも役立ちます。
長屋の隣人や住人からクレームを入れられると不愉快な気持ちになることがありますが、施主の立場を守るという意味でも、事前の家屋調査を行っておくと良いでしょう。そうすることで、後々のトラブル回避につなげることも可能となり、安心して長屋切り離しを行えます。
補修費用は施主の負担
長屋切り離しの注意点として、補修費用は施主の負担となることも挙げられます。長屋切り離しの場合、自分たちの建物だけを切り離せば工事完了というわけにはいきません。残された建物の安全性や快適性を確保するための補修工事を行って初めて工事完了となります。
基本的に外壁の補修を行うことが多くなりますが、その費用は施主の負担となります。長屋切り離しは隣人や他の住人からの同意が必要であり、特に隣家の方の同意を得ることは大切なポイントです。隣家の方が納得いく条件を提示するためには、切り離し完了後の補修工事まで責任を持って行うと伝える必要があります。
例えば、「自分の家だけを取り壊しますが補修工事はしません」といった条件提示で隣家の住人が受け入れてくれるでしょうか。それでも良いということであれば長屋切り離しを行うことができますが、ほとんど同意してくれる人はいないはずです。
施主の負担で外壁補修工事を行うことを前提として、「極力ご迷惑をお掛けしない形で切り離しを行うので、どうか同意してもらえないでしょうか?」といった形で低姿勢で同意を求めることが重要です。無理な要求をして同意を得ることができなければ、そもそも切り離し工事自体を行うことができなくなってしまいます。そのため、基本的に補修費用は施主負担になると考えておきましょう。
補修の責任範囲
長屋切り離しを行った後の補修工事については、施主の負担によって行う必要があります。その際、気になるのが補修の責任範囲です。施主としては、どこまで補修工事を行えば良いのか疑問に感じることもあるでしょう。長屋切り離しにおける補修工事に関しては、その責任範囲というものが定められています。
一般的には「現状と同程度」まで工事を行うことが求められます。例えば、長屋切り離しによって耐震強度が落ちたと証明された場合は、切り離し工事を行う以前の耐震強度まで戻す必要があります。そのための補修工事に関しては、施主の負担で行うことが基本です。
一方で、長屋切り離し工事を行う前よりも高い性能の補修工事を求められることもあるでしょう。その場合、現状に戻す以上の補修工事の費用を施主が負担する必要はありません。
より高い性能を求める住人がいた場合、その増加分に関しては要望を出した住人側で負担することが一般的です。
そうしないとどこまで行っても施主の負担が増えることになり、長屋に住み続ける住人側の言いたい放題になってしまうことがあるからです。改めて補修の責任範囲は「現状と同程度」であることを押さえておき、それ以上の要望に関しては住人側に対応を求めることが重要です。
耐震強度が落ちる
長屋切り離しの注意点として、耐震強度が落ちることも押さえておきたいポイントです。取り壊した方の建物は問題ありませんが、残された方の建物は強度が落ちることになります。その理由としては、以下の2点を挙げることができます。
- もともと内壁だった壁が外壁になるため
- 長屋は切り離すことを前提として作られていないため
1つ目の理由として、もともと内壁だった壁が外壁になるためです。そもそも内壁と外壁は構造が異なるため、そのまま外壁として使うには強度的に問題があります。そうした理由もあって、基本的には施主の負担で新たな外壁の補修工事を行うことになります。
2つ目の理由としては、長屋は切り離すことを前提として作られていないという点です。1棟を1つの家として作られているのが長屋であり、その構造としても長屋全体で耐震強度を得られるような作りとなっています。部分的であっても切り離してしまうと、建物全体の強度が落ちることになってしまうのです。
こうした理由で長屋切り離しを行うと耐震強度が落ちることがほとんどです。落ちた分の耐震強度に関しては「現状と同程度」まで戻すことが施主に求められる責任であり、補修工事を行って対応することが求められます。
耐震補強以外の補強工事
長屋切り離しを行うと耐震強度が落ちることが一般的ですが、その他にも気をつけておきたい部分があります。それまで内壁だった部分が外壁になることによって、以下の点にも影響が及ぶことがあります。
- 防火性能
- 防水性能
耐震強度の部分もそうですが、防火性能や防水性能に関しても建物全体の作りとして考慮されている部分があります。そのため、一部分でも切り離し工事を行ってしまうと火事で延焼しやすくなったり、雨水などに対する防水性能が弱まったりすることがあります。
この辺も現状と同程度まで戻す必要があり、施主の責任で補修工事を行うことになります。現状とは工事を行う以前の状態であり、工事前の状況についても写真や動画を撮るなどして客観的に証明できるものを残しておくことが重要です。また、事前に家屋調査などを行って専門的な見地から意見をもらうことも有効です。
長屋切り離しによるトラブル
一般的な家屋や建物の解体工事であれば施主の意思や判断で解体することができますが、長屋切り離しの場合はそういうわけにもいきません。隣人やその他の住人の同意を取り付ける必要があり、複数の人たちの関係性の中で工事を行う必要があります。
そうした中で、事前の同意を得ることができなかったり、同意されたと思ったら反対されたりすることも珍しくありません。また、同意を取り付けて長屋切り離し工事を行った後にクレームが生じることもあります。長屋切り離しに関してはさまざまなトラブルがつきものとなります。そうしたトラブルについて、1つ1つ具体的に確認していきましょう。
住民の同意が得られない
長屋切り離しによるトラブルとして、まず挙げられるのは住民の同意が得られないというものです。区分所有法についても取り上げましたが、長屋切り離しを行うためには基本的に長屋の所有者の4分の3以上の同意を得る必要があります。つまり、それ以下の同意しか得られなかった場合、施主が長屋切り離しをしたくても行うことができません。
長屋の所有者としても、切り離し工事をされたら「家が悪くなるのではないか」、「何らかの不具合が生じるのではないか」といった不安を抱くことが多くなります。そうした不安やさまざまな諸事情に対して向き合うのが施主の責任であり、所有者の同意を得るためのポイントとなります。
また、長屋の所有者が実際に住んでいるとは限らず、場合によっては遠方に住んでいることもあります。その場合は所有者を特定することから始めなければならず、やり取りも文書になるなど何かと時間がかかることがあります。
最初は反対していた人に対しても、きちんとした説明や補修工事の内容を伝えることで最終的に同意してもらえることがあります。施主としては粘り強く交渉を重ねていくことで、4分の3以上の同意を取り付けることが求められます。
同意を得た後に反対される
長屋切り離しによるトラブルとしては、同意を得た後に反対されることも挙げられます。1度所有者の同意を得たにも関わらず、後になってから反対されて切り離し工事に支障を来たすということもあります。所有者の同意に関しては、所有者の家族間で意見が対立することも珍しくありません。所有者本人は切り離し工事に同意していても、他の人間が反対するという可能性は十分に考えられます。
基本的に書面で承諾や同意の意思を取り付けていれば、それが覆ることはありません。そのため、早い段階で所有者本人から書面による同意を得ておくことが大切です。その後、反対されたとしても工事を中止する必要はありませんが、最低限の説明や説得に向けた動きをすることも必要なケースがあります。
補修方法や金額で折り合いがつかない
さまざまなトラブルが考えられる長屋切り離しですが、補修方法や金額で折り合いがつかないこともあります。長屋の所有者や住民からの同意を得るためには、工事後の補修に関しても丁寧に説明をする必要があります。その責任範囲としては「現状と同程度」という考え方がありますが、それでは所有者が納得しないこともあります。
施主にとっては妥当だと思える補修内容であっても、住人側からすると不安な点や納得できない部分があるということも珍しくありません。また、それほど多いケースではありませんが、場合によっては隣人や所有者から金銭での補償を求められることもあります。
基本的に長屋の所有者に対して金銭で補償する義務はありませんが、場合によっては要求してくる住人もいると想定しておきましょう。事態が複雑になって施主自身では判断が難しいと感じた場合は、弁護士に相談するなどして専門的な知見を求めると良いでしょう。
構造的に切り離しが難しい
長屋切り離しに関しては、構造的に切り離しをすることが難しいというトラブルが生じることもあります。例えば、長屋自体が古くに建てられたものであり、老朽化して傾いている場合に切り離すことができないといった事態になることがあります。
何とか切り離しを行う方向に持っていったとしても、その後の補修工事で折り合いがつかない可能性が出てくることも考えられます。もともと傾いていたからと言って、そのままにしておけば残された住人の安全が脅かされることになります。
傾きを直すための補修費用を誰が負担するのかという問題で、議論が平行線をたどるということも十分に考えられるでしょう。施主自らが傾きを直す補修工事の費用を出しても良いということであれば、住人の同意を得られる可能性も高まります。
いずれにしても構造的に切り離しが難しい場合は、施主の負担が増えることになると理解しておく必要があります。
切り離し後のクレーム
長屋切り離しのトラブルについて、切り離し後にクレームが発生することもあります。事前に同意を取り付けていても、後になってからあれこれと言ってくる住人や所有者の方も珍しくありません。例えば、「工事を行ったせいで家が傾いた」、「事前に聞いていた話と違う」、「工事のせいで体調が悪くなった」など、さまざまなクレームを言われることがあります。
こうしたクレームに対応するために工事前の状況について写真や動画で収めたり、家屋調査を行ってもらったりすることが重要です。また、工事の仕様に関して書面で詳細に説明しておくことも大切です。口頭ではなく、書面や画像、動画など、後から見ても客観的な証拠が残るような方法で事前確認や説明を行うことが重要です。
クレームの内容によっては対応が難しくなることもあるので、弁護士に相談するなどして適切なアドバイスを受けると良いでしょう。
住民との関係性が大切
長屋切り離し工事においては、さまざまなトラブルが発生する可能性があることを理解しておきましょう。その上で、住民や長屋の所有者との関係性が大切であることを頭に入れておく必要があります。普段から良好な関係を築くことができていれば、事前の説明もスムーズに行いやすくなります。
また、工事中や工事後のクレーム発生の抑止効果にもつながります。普段からどれだけ良い関係を築けているかによって、住民側の態度も変わってくるでしょう。普段から良い関係を築けているからと言って必ず同意をもらえるわけではありませんが、それでも関係が悪いよりは同意をもらえる可能性も高まります。
普段の関係が良くないと説明の際に難癖をつけてきたり、工事中や工事後にやたらとクレームを言ってきたりすることもあるでしょう。また、補修の責任範囲について無理な要求を突きつけてくる可能性も出てきます。その辺も普段の関係性が影響することがあります。
いつどういった理由で長屋切り離しをしなければならなくなるかわからないので、普段から良好な関係を築けるように意識的に行動しておきましょう。
長屋切り離しの解体費用相場
一般的な家屋や建物の解体工事も高額な費用がかかることがありますが、長屋切り離しに関しても高い費用がかかります。その費用相場や実際の長屋切り離し費用の事例も取り上げていきます。
木造住宅などと比較した長屋の解体費用目安
長屋切り離しの費用相場について、一般的な木造住宅や鉄骨造の建物と費用を比較していきます。それぞれの費用相場については、以下の表を参考にしてください。
坪数 | 木造(坪単価) | 鉄骨造(坪単価) | 長屋(坪単価) |
---|---|---|---|
10坪~19坪 | 3万6,000円 | 2万7,000円 | 9万9,000円 |
20坪~29坪 | 3万2,000円 | 2万9,000円 | 3万7,000円 |
30坪~39坪 | 2万9,000円 | 3万3,000円 | 3万円 |
40坪以上 | 2万7,000円 | 3万5,000円 | 3万3,000円 |
坪数によって費用間にばらつきが出るのは、坪単価によって計算を行っているためです。解体費用の総額としては取り壊す面積が大きくなればなるほど高額になると考えておきましょう。
一般的な木造住宅に比べた場合、長屋の解体費用はやや高く設定されていると言えます。建物を全てを取り壊すよりも、一部分だけを切り離す方が労力や手間がかかることがあり、その分費用も高くなることがあります。
実際の長屋切り離しの費用に関しては建物の状況や立地、面積など、さまざまな事情によって変わってくることがあります。正確な金額に関しては必ず解体業者に確認するようにしましょう。
長屋切り離し解体工事の費用事例
長屋切り離し費用に関する目安として事例を確認してみましょう。以下の表を参考にしながら、費用に関するおおよその目安としてください。
長屋の特徴 | 解体費用 | 付帯工事費用 | 補修工事費用 | 合計 |
---|---|---|---|---|
木造の平屋(10坪) | 31万円 | 7万円 | 62万円 | 100万円 |
木造2階建て(21坪) | 66万円 | 0円 | 64円 | 130万円 |
木造の平屋(21坪) | 86万円 | 20万円 | 35万円 | 141万円 |
木造2階建て(13坪) ※手壊し解体 | 151万円 | 0円 | 49万円 | 200万円 |
木造の長屋(79.5坪) | 240万円 | 29万円 | 122万円 | 391万円 |
上記が長屋切り離し費用の事例としてご紹介できるものです。坪数によって解体費用が変わることもありますが、その他の付帯工事費用や補修工事費用の追加によって総額に変動が出ることもあります。また、重機を利用することができず手壊し解体の場合は、その分の手間と労力が増えることになるので、取り壊し費用が高くなる傾向にあります。
鉄骨造やコンクリート造の場合は、さらに費用が高くなると想定しておきましょう。木造よりも取り壊しに手間がかかることが多く、その分費用もかさんでいきます。付帯工事や補修工事を含めて、正確な金額については解体業者に問い合わせることが重要です。
長屋切り離しの業者選び・探し方
業者選びに関しては、複数業者への見積もりを行うことや経験のある業者を選ぶことがポイントとなってきます。解体費用を抑える考え方も含めて、長屋切り離しの業者選びについて理解していきましょう。
複数業者への見積もり
長屋切り離しに関しては数百万円単位の費用がかかることが一般的であり、個人で捻出するには大変な部分もあります。一般的な家屋や建物の解体と比較して、部分的に切り離しをすることになるため、その分の手間や労力が費用として反映されやすくなっています。
施主としては少しでも安い費用で質の高い工事を行ってもらいたいと考えるものでしょう。経済的にゆとりがあればそれほど問題ありませんが、そうでなければ解体業者選びにも工夫を凝らすことが重要です。その1つの方法として、複数業者への見積もりをおすすめすることができます。
一般的な家屋や建物の解体工事の場合もそうですが、長屋切り離しの場合も複数の業者から話を聞くことで適正な金額や工事スケジュールについて判断することができるようになります。付帯工事や補修工事などを含めて、業者によって金額にばらつきが出ることも少なくありません。
あまりにも安すぎる場合は注意が必要ですが、適正範囲内だと考えられる場合はなるべく費用が安い業者に工事を依頼すると良いでしょう。2社や3社以上から見積もりを取ることで、金額的にもスケジュール的にもよりベターな選択をすることができるようになります。
経験がある業者を選ぶ
長屋切り離しの業者選びの考え方としては、経験がある業者を選ぶことも重要なポイントです。長屋の切り離しはとても難易度が高い工事であり、経験の浅い業者が簡単に行えるような工事ではありません。
施主としては高いお金を支払って工事を依頼するのであり、失敗は許されないでしょう。複数の業者から見積もりを取る際に、これまでの長屋切り離し経験を尋ねておくことも大切です。全く経験がない業者に工事を依頼するのであれば、多少費用が高くなっても経験のある業者に依頼する方が安心感も出てきます。
費用面から業者選びを進めることも効果的ですが、経験や実績をもとにした業者選びも重要なポイントです。総合的な視点を持ちつつ、最適だと思える業者を探していきましょう。
まとめ
長屋切り離しに焦点を当てて、長屋切り離しとは何か、その注意点やトラブルなどを中心に解説を行ってきました。長屋切り離しは通常の解体工事とは異なり、部分的な取り壊しを行うところに特徴があります。また、施主の意思だけでは不十分であり、所有者の同意も得なければ切り離し工事を行うことはできません。
いつどんな状況で長屋切り離しが必要になるかわかりませんので、いざという時のために日頃から住人や所有者との関係を良好に保つよう意識しておくと良いでしょう。実際に切り離しを行うことになった場合も、さまざまなトラブルの発生が想定されます。そうした1つ1つのトラブルについて考慮した上で、慎重に工事を進めていくことが求められます。