解体工事費用が高くなる主な要因とイレギュラーな要因を解説
家屋や建物の解体工事を検討する際に費用が気になるという方も多いのではないでしょうか。解体対象の建物によっては数百万円から数千万円規模で費用がかかることもあり、決して安い工事だとは言えません。そこで今回は、なぜ解体工事費用が高くなるのかについて具体的にご紹介します。一般的な相場もありますが、相場以上に費用が高くなることには理由があります。どうぞ参考にしてください。
解体工事費用が高くなる主な要因
- 住宅密集地域や狭小敷地での工事
- 道路の幅が狭い場所での工事
- 交通量や人通りの多い場所での工事
- 解体業者の繁忙期
- 工務店などに解体業者を紹介してもらう場合
- 付帯工事が多い場合
- ごみや残置物の量が多い場合
- ベタ基礎の解体を伴う場合
- モルタル壁の撤去をする場合
解体工事に関しては基本的に坪単価が優先され、どの程度の規模の建物を解体するのかによっておおよその相場が決まります。しかし、坪単価以外にもさまざまな要因が絡み合って決まるのが解体費用の難しいところです。
具体的にどういった理由で解体工事費用が高騰するのか確認していきましょう。
住宅密集地域や狭小敷地での工事
一般的に解体工事では重機を使って家屋や建物を取り壊します。工事で発生したごみや廃棄物については大型トラックを利用して搬出します。そのためにはある程度のスペースや敷地面積が必要であり、重機や車両を搬出入させられることが最低条件です。
しかし、住宅密集地域や狭小敷地の場合は思うように重機やトラックを利用できない可能性があります。そうなると手作業が増えて、工期の遅れにつながります。
また、廃棄物をトラックに積み込む際も遠く離れた場所まで人力で運ばなければならない可能性があります。総じて作業に手間がかかり、人件費も高騰しやすくなるため解体費用の上昇につながります。
道路の幅が狭い場所での工事
道路の幅が狭い場所で解体工事を行う場合も、大型の重機やトラックを搬入できない可能性があります。住宅密集地や狭小敷地での工事と同様に手作業が増えるリスクがありますし、廃棄物の搬出も思うように進まない可能性があります。
そうなると、工期の延長や人件費の高騰によって費用総額が高くなることがあります。
したがって、解体を希望する建物の周辺に十分なスペースがあるかどうかはしっかりと確認しておいた方が良いでしょう。
交通量や人通りの多い場所での工事
交通量や人通りの多い場所での工事に関しても、解体費用が高くなる可能性があります。交通量や人通りが多い場合、周辺の安全を確保するためにガードマンを設置することがあります。
ガードマンを設置する場合、解体工事費用とは別に人数分の費用が毎日かかるため総額が高くなりやすいです。
特に現場周辺が通学路となっている場合は、ガードマンの設置を求められる可能性も高まります。解体工事は安全に行われることが一番ですが、施主にとっては経済的な負担が重くなります。
解体業者の繁忙期
解体業者の繁忙期に工事を依頼する場合も費用が高くなる恐れがあります。一般的に12月から3月の年度末にかけては公共工事が増えるため、解体業者の繁忙期と言われています。
業者によって忙しさは異なりますが、繁忙期シーズンに解体工事を依頼しようとすると一般的な相場よりもさらに高い金額がかかることも珍しくありません。
業者によってはそもそも繁忙期に工事の依頼を受け付けていないこともあります。解体工事の依頼ができたとしても、費用が高騰する可能性があるので注意しましょう。
工務店などに解体業者を紹介してもらう場合
解体工事後に新築工事を行う場合、工務店やハウスメーカー経由で解体業者を紹介してもらうこともあるでしょう。その場合も解体工事費用の総額が高くなりやすいので注意が必要です。
というのも、工務店やハウスメーカーに解体業者を紹介してもらうと、「中間マージン」と呼ばれる仲介手数料が発生するからです。手数料の割合に関しては工務店やハウスメーカー次第ですが、工事代金の10%から30%程度が目安です。
その分、施主が支払う費用も増えるので経済的な負担が重くなります。
付帯工事が多い場合
解体工事に伴う付帯工事が多い場合も費用高騰に注意が必要です。付帯工事とは簡単に言えば「オプション工事」のことで、建物本体の解体以外の工事を指します。例えば、以下のような工事が付帯工事に該当します。
- 庭木・庭石の撤去
- ブロック塀の撤去
- 門扉の撤去
- フェンスの撤去
- カーポートの撤去
- ガレージの撤去
- 倉庫・物置の撤去
- 残置物の処分
- 井戸や池の埋め戻し工事 など
これらのような付帯工事が増えれば増えるほど、解体工事費用の総額が高くなりやすいです。本当に必要な工事に関しては依頼するしかありませんが、その分の出費が増えることを覚悟しておきましょう。
ごみや残置物の量が多い場合
不要なごみや残置物が多い場合も費用が高くなりがちです。特に家電製品や粗大ごみなどをそのままの状態にしておくと、工事開始の遅れにつながることがあります。
また、家電製品や粗大ごみの処分にもお金がかかるため、追加費用が発生する可能性も出てきます。廃棄物の量によって費用計算を行う業者も多いため、自分たちで処分できるものはできるだけ事前に処分することがおすすめです。
ベタ基礎の解体を伴う場合
ベタ基礎とは地面がすべてコンクリートで覆われている基礎のことを言います。底板一面が鉄筋コンクリートとなっているため、解体に時間がかかりやすいことがデメリットです。
解体に日数がかかる分、人件費の高騰につながります。また、ベタ基礎の解体後にはコンクリートガラが大量に発生するため、処分費用もかさみやすくなることが特徴です。
モルタル壁の撤去をする場合
モルタル壁を撤去する場合も解体工事費用が高くなりやすいです。
モルタル
砂とセメントを水で練り混ぜて作る建築材料のこと。レンガや石、タイルの接着用を中心に仕上げ材や目地材、躯体の調整などに用いられる。
モルタルはかつてよく使用されていた建築材料であり、ペースト状で施工性が良いという特徴があります。一方で、撤去する際には手間や費用がかかりやすいという特徴があることも事実です。
特に外壁材や室内の壁に使用されている場合は費用が高騰しやすいので注意が必要です。
解体工事費用が高くなるイレギュラー的な要因
一般的な解体工事費用が高騰する要因以外にも費用が高くなりやすい事象やイレギュラー的なケースがあります。
解体工事を行う際は建物本体や周辺環境にも気を配りながら、予算について検討することが大切です。
- 建物にアスベストが使用されている場合
- 工事中に地中埋設物が見つかった場合
- 解体後に残土処分が必要な場合
- ツーバイフォー(2×4)住宅の解体
- 火事や地震などで倒壊した物件を解体する場合
- 消費税増税前の駆け込み需要
建物にアスベストが使用されている場合
アスベストには有害性があることが確認されており、現在では実質的な使用が禁止されています。しかし、古くに建てられた家屋や建物にはアスベストが使用されていることもあり、除去する際には専門的な経験やスキルが必要です。
アスベストが使用されている箇所や量によって費用が大きく変わることが特徴です。処理面積と単価の関係について、以下の表にまとめます。
アスベストの処理面積 | 単価 |
---|---|
300㎡以下 | 2万円~8万5,000円/㎡ |
300㎡~1,000㎡ | 1万5,000円~4万5,000円/㎡ |
1,000㎡以上 | 1万円~3万円/㎡ |
処理面積が大きくなればなるほど、1㎡あたりの単価は下がります。いずれにしても、建物にアスベストが使用されているがわかった段階である程度の出費を覚悟しておきましょう。
工事中に地中埋設物が見つかった場合
解体工事中に地中埋設物が見つかった場合も費用高騰に注意が必要です。家屋や建物を解体していると、解体後の地中から以前の解体工事の廃材などが見つかることがあります。
コンクリートガラや鉄筋、木材が大量に見つかることもありますし、場合によっては井戸や浄化槽などが発見されることもあります。
地中埋設物が見つかった場合は基本的に施主の責任で処分しなければなりません。処分するための費用が解体費用に追加されるため、最終的な費用高騰につながります。
地中杭の撤去
地盤が弱い地域では建物を建てる際に地中杭を使って地盤を補強してから建築することがあります。建物が建っている間は問題ありませんが、解体する際には地中杭も一緒に撤去しなければなりません。
杭にはさまざまな種類がありますが、鉄製のものやコンクリート製のものが使われることが多く、撤去にも手間や時間がかかります。
杭の深さや本数によって費用は変わりますが、地中杭が打ち込まれている場合は追加費用がかかることを想定しておきましょう。
解体後に残土処分が必要な場合
解体工事後に残土処分が必要な場合も費用が高くなりがちです。建物を解体した後に、新たな家屋や建物を建てる場合、既存の土の量が多すぎるケースがあります。新築工事のレイアウトに合わせて土の量を計算しますが、その際に不要な土のことを残土と呼び、処分が必要となります。
残土に関しては別の場所に運んで処分しなければならないため、解体工事とは別で費用が発生します。残土の量が多ければ多いほど費用も高騰しやすいので頭に入れておきましょう。
ツーバイフォー(2×4)住宅の解体
ツーバイフォー住宅を解体する際にも費用高騰に注意が必要です。
ツーバイフォー
木造の建築工法のことを言い、正式名称は「木造枠組壁工法」。木造枠組壁工法の中の1つで、ツーバイフォーは「2インチ×4インチ」のことを指す。
比較的新しい木造家屋でよく使われているのがツーバイフォーと呼ばれる工法ですが、解体工事の際には廃棄物が多く出やすいというデメリットがあります。
廃棄物の量が多くなると処分費用も高額になるため、施主の負担が重くなりがちです。また、ツーバイフォー住宅は耐震性に優れていることから、解体工事にも手間がかかりやすくなります。自然と後期が長くなって、解体費用が高くなることがあります。
火事や地震などで倒壊した物件を解体する場合
火事や地震などで倒壊した物件を解体する場合も、費用が高くなりやすいです。大前提として解体工事で発生したごみや廃棄物に関しては、分別して処分する必要があります。
火事や地震などの災害に遭った建物を解体する場合、廃棄物の分別が難しくなるというデメリットが生じます。災害によってさまざまな材料や部品が混じり合っているため、その分別に手間や時間がかかります。
解体工事自体も作業の危険性が高まりやすく、通常の工事よりも人件費が高くなることがあります。総じて、火事や地震などで倒壊した物件を解体する際は平均的な相場以上の費用が必要になることを頭に入れておきましょう。
消費税増税前の駆け込み需要
消費税増税前の駆け込み需要によって解体費用が高くなることもあります。近年では2019年10月にそれまでの8%から10%に引き上げられました。
施主としては少しでも安い費用で解体して欲しいという考えから、消費税増税前に解体工事を依頼しようとすることもあるでしょう。そうした考え方の人が増えることによって、解体工事の需要が高まり、結果的に費用高騰につながることがあります。
今後も消費税が増税される可能性はあるので、その際はできるだけ余裕を持って解体工事の依頼を検討することがおすすめです。
解体工事費用が安すぎる場合も注意!
解体工事費用に関してはできるだけ安い方が良いと考える方も多いのではないでしょうか。他社と比較して多少安い程度であれば問題ありませんが、あまりにも安すぎる場合は注意が必要です。
解体工事を行うためには人件費や重機の使用費、廃棄物処理費用やガソリン代、解体業者の利益など、さまざまな費用が必要です。したがって、それ以上下げると解体業者としての利益や旨みが出にくくなるという最低ラインがあるはずです。
その金額を下回った提示を受けた場合、きちんと解体工事を行ってくれるかどうかわかりません。途中で工事を投げ出したり、不法投棄をしたりして不当に利益を上げようとする可能性もあります。
あるいは、工事が始まってから高額な追加費用を請求してくる可能性もあるでしょう。さまざまな観点から、見積もり提示を受けた段階で費用があまりにも安いと感じた場合は契約を結ばない方が賢明です。
まとめ
解体工事費用が高くなる要因を中心に具体的に解説を行いました。解体費用に関して目安となる相場はありますが、その金額が絶対的なものではありません。物件ごとに異なる様々な事情や理由によって費用が高騰することがあります。
施主としてはそのことも頭に入れた上で契約交渉に臨むことが大切です。また、解体費用を少しでも安くしたいと考えるのは自然なことであり、そのための方法も複数あります。
自分でできることは積極的に行った上で、最終的に納得のいく形で解体業者との契約を結びましょう。