住宅の基礎解体はいくらかかる?基礎の種類や費用を抑えるコツも解説

住宅の基礎解体はいくらかかる?基礎の種類や費用を抑えるコツも解説

住宅の基礎解体とは、建物と地盤のつなぎ目部分にある「基礎」を解体する工事のことです。一般的なリフォームや改修工事などとは異なり、基礎解体は手間と処分費用によって高額な費用がかかります。

この記事では、建物の基礎の種類、住宅の基礎解体にはいくらかかるのか、基礎解体費用を安くする方法などについて解説します。

建物の基礎の種類と違い

建物の基礎には、大きく分けて杭基礎と直接基礎に分類されます。杭基礎は【支持杭、摩擦杭】に細分化され、直接基礎もそれぞれ【独立基礎、布基礎、ベタ基礎】の種類があります。

杭基礎 支持杭、摩擦杭
直接基礎 独立基礎、布基礎、ベタ基礎

なお、住宅の基礎として使われている主な工法は杭基礎、ベタ基礎、布基礎の3つです。

それぞれの工法の違いをさらに詳しく解説します。

杭基礎

杭基礎では、杭を地面に直接打ち込みます。杭基礎にも、柱状改良や鋼管杭を使う「支持杭」工法のほか、杭と土の間に発生する摩擦力で基礎を支える「摩擦杭」を使った工法があります。

支持杭は地盤が軟らかい土地や液状化の恐れがある場所にも使われます(下の画像)。杭の先端を地盤の強度が高い支持層に値入して、建物を支える構造です。

杭基礎 支持杭

一方、軟弱な地盤部分が厚い場合、摩擦杭を使って基礎を作ります(下の画像)。杭の周りの摩擦を利用して建物を支持する仕組みです。

杭基礎 摩擦杭

支持杭と摩擦杭の工法は併用できません。二種類以上の工法を組み合わせてしまうと、支持力の取り方が異なるため、設計上望ましくありません。

参考リンク:第10章基礎工(国土交通省)

直接基礎

直接基礎は、地盤に基礎を直接設置させる方法のことです。直接基礎には、それぞれ【独立基礎・布基礎・ベタ基礎】と呼ばれる方法があり、建物の状況や地盤の状態に応じて工法を変える必要があります。

独立基礎

独立基礎は、主要な柱の下にだけ基礎を設置する工法のことです。地盤の強度が高い土地で利用できますが、現在の住宅ではほとんど使われなくなりました。

独立基礎

ただし、非住居の建物については現在でも独立基礎が多く使われています。

布基礎

布基礎は、主要な柱や壁の下に基礎を敷き詰める工法のことです。地面に逆T字型にコンクリートを打ち込み、ベタ基礎よりも深く鉄筋コンクリートを入れています。

布基礎

また布基礎は、ベタ基礎よりも地盤に接する部分が少ないです。床下に土がむき出しになって湿気がこもりやすいことから、通気口を設けたり床下換気を行う必要があります。

ベタ基礎

ベタ基礎は、床下全体をコンクリートで覆う工法のことで、柱の位置に関係なく基礎を敷き詰めます。基礎全体で地盤に力を伝えるので、地盤の強度が小さな場所でも利用できます。また、土を掘る量も少なく済むので、施工がしやすいといった利点があります。

ベタ基礎

基礎解体の費用相場・安くするコツ

基礎解体の費用は、工法によって異なります。最も安いのは、布基礎のように地盤に接する部分が少ない基礎工事です。

布基礎は、撤去する際にも壁に沿って設置された構造を掘り起こすだけなので、早ければ一日で解体工事が終わります。

基礎解体の費用目安

基礎解体の目安は1㎡あたり1,500円~2,000円が相場です。ただし、布基礎、ベタ基礎、杭基礎で解体費用はそれぞれ異なります。

布基礎の解体費用相場

布基礎の一般的な解体費用は、1㎡あたり1,500円です。例えば、布基礎の土地を50㎡解体した場合には、約75,000円かかる計算です。また、発生した資材の処分費用は工事費に含む業者と、別料金として請求する業者があります。

ベタ基礎の解体費用相場

ベタ基礎の一般的な解体費用は、1㎡あたり6,000円です。例えば、ベタ基礎の土地を50㎡解体した場合には、約300,000円かかります。布基礎と比べても、高額になるのが分かりますね。

ベタ基礎は発生する資材も多くなるため、処分費用が工事費に含まれるのか別途請求されるのかで全体の工事費は大きく変わってきます。

養生費など追加費用がかかることも多く、全体の工事費は100万円を超えることも珍しくありません。

杭基礎の解体費用相場

杭基礎の一般的な解体費用ですが、1本あたり30,000円です。杭基礎の費用は【杭1本あたりの工事費用 × 杭の本数】で計算をします。

例えば、杭の本数が30本になると工事費用は90万円かかる計算です。このほか重機回送費として20,000円~25,000円の費用が別途必要です。

さらに杭の処分費用なども合わせると、軽く100万円を超える工事費用がかかります。

基礎解体の費用が高額な理由

ベタ基礎のように、コンクリートを一面に敷き詰める工法は時間がかかります。

なぜなら、コンクリートをすべて壊して掘り起こすだけでなく、コンクリートが頑丈すぎると解体と掘り起こし、コンクリートのガラを運ぶのに相当数の時間がかかるからです。

Why foundations are so expensive

また手間のかかる解体作業には、人件費や廃棄費用も余分にかかります。特に、基礎解体の費用で高額なのは「くい抜き工事」と呼ばれる作業です。

杭基礎を解体する際、特殊な機械で杭と地盤の縁切りを行い、杭にワイヤーをかけ、引き抜いた後も埋戻しまでに大がかりな作業が必要です。

布基礎のように手間のかからない工法もありますが、べた基礎やくい抜き工事など、基礎工事が高額になる工法があります。

最も安価で解体できる布基礎で見積もりが出たあと、実際に工事をして「ベタ基礎」だと分かった場合には、意図せぬ追加費用が発生してしまうので注意が必要です。

基礎解体費用を事前に知るには?

基礎解体にかかる費用は何かと高額になりがちです。後々、料金で揉めないよう先に見積もりを取るなど、どのくらいの費用がかかるのか調べるようにしましょう。

見取図を用意する

まず、解体予定の建物の施工会社に連絡し、見取り図を用意してください。見取図があれば、建物にどの基礎が使われているのか判明することもあり、見積もりの値段が出しやすくなります。

見取り図

現地調査を依頼する

現地調査を行うと基礎の種類や状態などが分かるので、より詳細な見積もりが出せます。解体費用を正確に知りたい方は、解体業者が現地調査を行っているのか、問い合わせてみてください。

追加費用がかかるケース

解体工事では思わぬ障害物の発生や追加作業によって、当初の予定よりも多く工事費用がかかるのも珍しくありません。解体工事で「追加費用」がかかるのは、次のようなケースです。

  • 建物関連(養生・処理費用・測定ミス)
  • 土地関連(地中の障害物・地中杭・建築廃材)
  • 近隣トラブル

工事中どのようなトラブルが生じたのかによって、追加費用の内容は変わっていきます。また、追加工事は実際に工事を行ってみなければ、分からないことも多いです。

施主側が不利益を被らないためには、双方が納得した上で工事を進めることが重要です。お互い見積もり書の内容と追加費用の内容が妥当かどうか、慎重に見極める必要があります。

基礎解体費用を安くするコツ

基礎解体費用は、べた基礎や杭抜きのように高額な工事もあり、料金をおさえるには業者選びが重要です。

基礎工事は建物を支える重要な部分なので、安かろう悪かろうではいけません。施工技術が高く、妥当な金額で工事をしてくれる業者を探すのが、基礎工事で失敗しないコツです。

複数の業者に見積もりをする

基礎解体費用を安くするには、一社で即決をせず複数の業者から相見積もりを取ることです。一社で見積もりを出すと、相手は強気な料金を出してくるかもしれません。

しかし競合となる業者があれば、各社が妥当な金額で見積もりを出してくれるので、より良い条件で解体工事が依頼できます。

住宅の基礎の仕組み

住宅の基礎とは、地面と建物のつなぎ目部分を指しており、建物の構造上重要な部分です。基礎を作ることで、建物の重さや地震の揺れによる不同沈下(建物の一部が傾くこと)を防ぐことができます。

建物の基礎は鉄筋コンクリートで作られており、建物を支える部分に【底盤・立ち上がり・地中梁】などがあり、全体で建物を支える構造となっています。

基礎工事の仕組み

こうした基礎を作る工事のことを「基礎工事」というのですが、基礎を正しく施工することで建物の耐久性が高まります。

木造建築と鉄筋建築の違い

木造建築には、鉄筋住宅よりも建築時の坪単価が安いため、初期費用が少なく済むことが多いです。木造建築は通気性が高く、熱や湿気がこもりづらい特徴があります。

対する鉄筋住宅は、木造よりも遮音性や防音性が高いです。また、木造よりも耐久や耐震性が高いといった特徴もありますが、木造に比べると通気性や断熱性は低くなります。

木造建築と鉄筋建築の違いをまとめてみました。

区分 木造建築 鉄筋建築
コスト 鉄筋より安い 木造より高い
耐震性能 鉄筋より低い※ 木造より高い
法定耐用年数 34年 47年
防音性能 鉄筋より低い 木造より高い
通気性 高い 普通~やや低い

※耐震性の高い建材を使用することで木材の耐震性も高めることができます。

木造建築では従来「布基礎」と呼ばれる、逆T字型のコンクリートを打つ基礎工事が主流でした。

ただ、近年では底板や基礎の立ち上がりまで一面鉄筋コンクリートを使用する「ベタ基礎」が主流となっており、鉄筋住宅でも同じくベタ基礎を採用するケースが増えています。

基礎の施工基準

基礎工事は、地盤のかたさや建物の性質によって工法を変える必要があります。

残念ながら、全国では適切な基礎工事が行われていないケースがあり、大きな社会問題となりました。例えば、建物を支えるくいが支持層に達していないケースや、くいの本数があきらかに足りないケースなど。

横浜市のマンションが施工基準を満たしていないこと(平成26年11月に発生)を発端に、全国で建築基準を満たしていない建物が相次いで見つかっています。

参考リンク:基礎ぐい工事問題に関する対応について(横浜市建設局)

建物の基礎や地盤改良工事の設計・施工不良による紛争も多く報告されています。

国土交通省の基準

全国的な基礎工事に関する問題発生を受け、国土交通省は「基礎ぐい工事問題に関する対策委員会」を設置し、平成28年3月4日には遵守すべき施工ルールを告示しました。

参考リンク:基礎ぐい工事の適正な施工を確保するために講ずべき措置(平成28年国土交通省告示第468号)

国土交通省の告示により、基礎工事に関する新たな工事監督ガイドラインも設けられています。

参考リンク:基礎ぐい工事における工事監理ガイドライン(国土交通省)

建築基準法では次のように「建築物の基準」を定めています。

建築基準法20条1項

建築物は、自重、積載荷重、積雪荷重、風圧、土圧及び水圧並びに地震その他の震動及び衝撃に対して安全な構造のものとして、次の各号に掲げる建築物の区分に応じ、それぞれ当該各号に定める基準に適合するものでなければならない。

建築基準法に違反した場合ですが、悪質なケースについては行政処分に加え、刑事罰を受ける可能性があります。

基礎解体が必要なのはこんな時

土台をつくる基礎工事に対して、基礎を壊すのが基礎解体工事です。既存の建物を壊して新しい住まいを建て直す場合や、建物を壊して更地にする場合にも基礎解体工事が行われます。

基礎の種類ごとの解体方法

建物の基礎はどのように解体されるのか、工法ごとに解体の流れを見てみましょう。

布基礎の解体方法

布基礎は、基礎部分を重機で掘り起こして解体をします。布基礎が使われている土地は地盤が強固なため、工事もしやすく解体の手間もかかりません。取りかかってから、はやければ1日で解体できてしまいます。

布基礎の解体方法

ベタ基礎の解体方法

ベタ基礎は、床一面にコンクリートが打たれているため作業は難しく、専用の重機を用いる必要があります。

また、ベタ基礎では発生する資材の量も多くなるため、鉄筋とコンクリートを解体や廃材の運び出しも含めて2~3日。場合によっては、4日以上の工期が必要になります。

ベタ基礎の解体方法

杭基礎の解体方法

杭基礎の解体では、まず特殊な重機の切断刃(ケーシング)を使い、杭と地盤との縁切りを行います。次に杭を引き上げ、地中に充填剤を注入し埋め戻しを行います。

杭基礎の解体方法

杭が大量にある場合は、杭をカットして更地にする方法もあり工事費は安くおさえられます。ただし、杭を完全に撤去する訳では無いので、場合によっては土地の価値が下がってしまうこともあり、注意が必要です。

基礎解体にかかる日数の目安

基礎解体にかかる日数は、布基礎、ベタ基礎、杭基礎の順に時間がかかります。

布基礎の解体日数目安

布基礎の解体自体は、1日で終わることが多いです。ただし、土地の大きさや地中埋没物などの状況によっては、解体完了までさらに時間がかかる場合もあります。

ベタ基礎の解体日数目安

ベタ基礎の解体は、早くても2~3日。基礎コンクリートの層が厚ければ、さらに工事日数がかかります。またベタ基礎の解体には、コンクリート破壊などで振動も多く、養生などの作業にも時間がかかります。余裕をみて4~5日の工期を見ておくと良いでしょう。

杭基礎の解体日数目安

杭基礎の解体にどのくらいの日数がかかるのか、計算をするのは難しいです。なぜなら、敷地の広さや杭の本数によって工事日数が大きく変わってくるからです。

また、工事に関わる作業員の数や使用する重機によっても工期に差があります。相見積もりの段階で、各社どのくらいの日数で工事ができるのか、あわせて質問をしてみてください。

住宅の基礎解体工事でよくある質問

  1. 基礎解体の見積費用が高い気がします
  2. 基礎解体前に必要な物はありますか?
  3. 基礎部分で土地の価値は変わりますか?
  4. 基礎解体の現地調査で注意すべき点はありますか?

基礎解体の見積費用が高い気がします

普通のリフォームや一般的な工事とは異なり、技術や手間のかかる解体工事は費用がかさむことが多いです。坪単価によってある程度の解体費用は計算できますが、土地の大きさや基礎にどのような工法(布基礎、ベタ基礎、杭基礎)が使われているのかで解体費用は変動します。

実際、使われているコンクリートの層が厚くなればより工事費はかかりますし、また杭基礎の場合は1本の杭を抜くのに約3万円の費用がかかります。

コンクリートの強度が高い場合や、杭の数が多い場合は重機の回送費や廃材の運び出しなどにも別途費用がかかります。複数社で相見積もりを取るようにして、妥当な金額がいくらなのか事前に調べるようにしてください。

基礎解体工事中に地中埋設物が見つかることもある

解体の見積もりを出していても、途中で埋設物などが見つかると追加費用がかかることがあります。

基礎解体工事中に地中埋設物が見つかりました

こうした埋蔵物を放置すると、不法投棄を疑われてしまいます。万が一埋蔵物が見つかった場合には、どのくらいの費用がかかるのか業者に確認をとっておきましょう。

基礎解体前に必要な物はありますか?

基礎解体をする前に、建物や土地の見取り図を準備しておきましょう。見取り図があれば、どのような工法が使われているのか事前に分かるため、見積もりが出しやすくなります。

現地調査と合わせて、より正確な見積もりが出せるようにしましょう。建物の見取り図は、施工業者に依頼をすれば用意してもらえます。

基礎部分で土地の価値は変わりますか?

基礎の状態は、土地価格に大きな影響を与えます。地盤の強度が弱い場所や杭を残しておくなど、土地に埋蔵物がある状態では不動産価格は下がってしまいます。実際に、土地の価値を高める目的で基礎解体や基礎工事をする方も珍しくありません。

基礎解体の現地調査で注意すべき点はありますか?

基礎解体に伴い現地調査を受ける時には、以下の点に注意してください。

  • 建物の境界線、解体範囲の確認
  • 処分費用に廃棄費用は含まれているか
  • 追加費用の内容と金額

基礎を解体する際、隣家の所有地に許可無く侵入したり、近隣住民の塀などを誤って解体しては近隣住民とトラブルが起こってしまいます。

こうしたトラブルを避けるためにも、業者には見取り図を使い、取り壊す場所や土地の範囲を正しく伝える必要があります。

見積もり内容の解体処分費に廃材の運び出し費用や廃棄費用は含まれているのか、追加費用などはかからないのか、事前に確かめるようにしましょう。

まとめ

今回は住宅の基礎の種類、基礎工事費用の目安、基礎解体の方法などについて説明しました。住宅の基礎は、建物の耐震性や強度を高めるためにも重要なものです。また更地にする場合にも、土地の評価を下げないよう適切な方法で撤去、解体工事をする必要があります。

基礎工事費用は全体的に高額ですが、少しでも安く良い工事ができるよう業者選びに時間をかけましょう。複数社で相見積もりを取れば、基礎解体工事の妥当な金額が調べられます。

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