解体工事で追加費用が発生することはある?別途費用がかかるケースや注意点も解説
家屋や建物の解体工事を依頼する際に、追加費用が発生することはあるのか気になるという方もいるのではないでしょうか。そこで今回は、解体工事において実際に追加費用が発生することはあるのか、具体的にどういったケースで追加費用が発生するのか取り上げていきます。その他、別途費用請求があった場合の対応や追加費用によるトラブル防止策なども解説します。解体工事を依頼する際の参考として、どうぞご覧ください。
解体工事では追加費用が発生することも
解体工事では追加費用が発生することがあるのかという疑問をお持ちの方もいるでしょう。その疑問に対する回答としては「イエス」です。
実際に解体工事では追加費用が発生することもあり、施主の経済的な負担が大きくなるケースがあります。見積もりの段階では想定できなかった事象が発生した時に、追加費用が発生してしまうのです。いずれにしても、施主としては負担になりますが、追加費用の発生はあり得ることだと認識しておきましょう。
主な追加費用の種類
- 建物関連で発生する追加費用
- 土地関連で発生する追加費用
- 近隣トラブルによって発生する追加費用
上記の3点が主に追加費用発生の対象となる項目です。それぞれの項目に関しては後ほど詳しく取り上げますが、建物間連や土地関連、近隣トラブルによって追加費用が発生する可能性があると理解しておきましょう。
解体工事は常にトラブルがつきものであり、想定していなかった状況が発生することも珍しくありません。もちろん、施主や解体業者としては全力を尽くして解体工事を行うことになりますが、どうしても想定外の状況が発生することがあります。その際にかかってくるのが追加費用であり、施主の負担となるものです。
追加費用の目安
解体工事の状況によって発生する可能性がある追加費用ですが、その目安についても確認していきます。追加費用には具体的に決まった金額があるわけではなく、解体現場の状況やどういったトラブルが生じたのかによって変わっていきます。
例えば、地中障害物が発生した場合は、障害物の量によっても追加費用の額が変わっていきます。したがって、追加費用がいくら位になるのかについては、その場になってみないとわからないというのが正直なところです。
なお、見積書の内容を確認すれば合理性を判断できる可能性もあります。例えば、見積書に「残置物処理 10㎥ 10万円」と記載されていたと仮定します。実際に工事を開始してみると、残置物の量が10㎥で収まらず15㎥になることもあります。
この場合は、当初想定していた残置物の量よりも5㎥多くなったと考えることができます。見積書の内容を確認した時に「1㎥あたり1万円」と計算できるので、追加費用は5万円かかると想定できます。こうした形で客観的に追加費用の額を証明できる書類があれば、施主と解体業者共に納得した形で工事を進めることができるでしょう。
そういった意味でも見積書の存在は重要であり、作業項目ごとに細かく金額が書かれていることが重要です。
見積書の内容を確認
解体工事の追加費用の件に関しては、見積書の内容をよく確認することが大切です。上記でも触れましたが、項目ごとに細かく金額が記載されていれば、追加費用が発生する状況になった場合でも納得いく形で追加工事を行ってもらうことができます。反対に、見積書の記載が曖昧で、追加費用としてなぜその金額になるのかよくわからない場合は施主としても納得し難くなります。
例えば、見積書に「残置物処理 一式20万円」などと記載があった場合、残置物処理に20万円かかると想定するのが一般的です。しかし、解体業者が想定していたよりも多くの残置物があった場合、追加費用を請求してくることがあるかもしれません。
「残置物処理 10㎥ 10万円」と記載された見積書であれば、残置物の量がどのくらい多かったからどのくらいの追加費用がかかると判断できます。しかし、「残置物処理 一式20万円」という記載では、そもそもどのくらいの量を想定していたのかわかりません。また、追加費用として算出する金額に関しても、合理性があるとは言い難くなってしまいます。
追加費用として5万円を請求された場合は、何に対して5万円なのか分かり難くなるということです。そのため、見積書を提示された段階で「一式」などという言葉には注意しておく必要があります。後々に追加費用が発生する場合にトラブルにつながることも多く、施主が不利益を被りやすくなります。このような点を意識して見積書を確認することが重要です。
悪徳業者には要注意
解体工事を行う業者の中には悪徳業者と呼ばれるような存在も未だにあります。かつてほどではありませんが、現在でも不当に高い工事代金を請求してきたり、違法工事を行ったりする業者があるので注意しておきましょう。
追加費用に関しては、悪徳業者に共通する特徴があります。それは、最初の見積もり提示の金額を相場よりも安くすることです。悪徳業者としてはとにかく契約を取ることが最優先であり、契約を取ってしまえば後はどんどん追加費用を請求するだけという考え方を持っていることが多いです。
見積もりに関しては複数の業者に依頼することが重要ですが、その中であまりにも安い金額を提示された場合は疑いの目を持つようにしてください。ある程度値下げすることは可能であっても、一定のラインを超えると工事をするだけ赤字になってしまいます。そこまでして契約を取ろうとすることは、何らかの裏があると思っておいた方が良いでしょう。
また、悪徳業者の場合は、見積もり提示の段階で特に追加費用に関する話をしないことが多いです。
「契約前に追加費用はないと言われた」というケースや、「事前相談なしに勝手に追加の作業を行われて追加費用を請求された」といったケースもあります。「安かろう悪かろう」といったサービスを受けないようにするためにも、解体業者選びの段階で細心の注意を払うことが求められます。
建物関連で発生する追加費用
解体工事における追加費用はさまざまなケースで発生することがありますが、建物関連で追加費用がかかることも少なくありません。養生費用や残置物の処理費用、アスベストの処理費用や建物面積の測定ミスなど、想定できるものは複数挙げられます。
あらかじめ追加費用が発生する可能性がある項目を知っておくことで、施主としても事前に解体業者とコミュニケーションを取りやすくなります。本当にその金額で大丈夫なのかということを確認する意味でも、どういった事情で別途費用が発生するのかについて理解を深めていきましょう。
養生費用
騒音やほこり、粉じんの飛散などを防止する目的で建物の周囲に設置するのが養生です。
通常はメッシュシートと呼ばれる養生シートを利用しますが、あまりにも騒音が大きい場合、防音性能の高い養生シートに切り替えることがあります。近隣住民からの要望で養生を変更することも珍しくありません。
実際にシートを変更することになると、追加費用発生の対象となります。本来は通常の養生シートで良かったところを防音性能の高い養生シートに変更することで、施主が追加費用を支払わなければならなくなります。
あらかじめ騒音が大きくなりそうだと認識できていれば、最初から防音性能の高いシートを使うこともできるでしょう。その他、台風や地震、大雪などの自然災害によって養生シートが破れてしまうこともあります。新しいシートを使うとなった場合も、施主の負担で設置し直すことがあります。養生関連で追加費用が発生することはよくあるので、施主としても理解しておく必要があります。
残置物の処理費用
解体する建物や家屋内部に残っている物は残置物と呼ばれ、解体工事を行う前に処分することが一般的です。
本来であれば、建物内部を空っぽにした状態で解体業者に工事を依頼することが一番ですが、何らかの事情で片付け切れなかった家具や粗大ゴミが残ってしまうこともあるでしょう。もともとの契約で残置物の処理も含めた金額になっているのであれば、追加費用が発生することはありません。
しかし、残置物の処理は施主が行う予定になっていたケースや、契約していたよりも多くの残置物が残っていたケースについては追加費用発生の対象となります。この辺は施主の心がけ次第で追加費用の発生を防ぐことができます。
できるだけ残置物を残さずに自分で処理することで、追加費用の発生を抑えることができます。また、自分で処理すると言えば、解体費用の総額から多少値引きしてもらえることもあります。少しでも解体費用を抑えたいと考えている場合は、自分で処理することを検討してみましょう。
アスベストの処理費用
現在は原則として使用が禁止されているアスベストですが、築年数の古い建物では使用されていることがあります。アスベストが使用されている建物に関しては適切な除去作業が義務付けられており、アスベストを完全に除去してから解体工事に入る必要があります。
また、アスベストにはレベル1から3まで設定されており、レベルによって除去費用が高額になることもあります。想定していたよりも除去に時間がかかったり、特別なスキルが必要だったりすると人件費の高騰にもつながります。
解体予定の建物にアスベストが使用されていることがわかった場合は、相応の追加費用が発生すると想定しておきましょう。アスベストは人体にも悪影響を及ぼす物質であり、安全を最優先にして除去を進める必要があります。施主もその辺は理解しつつ、費用面で協力できる部分は協力してあげることが大切です。
建物面積の測定ミス
建物関連の追加費用がかかるケースとして、建物面積の測定ミスも挙げることができます。解体業者から「思っていたよりも建物が大きかった」などと言われることがあります。これは完全に業者側のミスであり、追加費用を請求されても安易に支払わないことが大切です。
業者側の単純な過失であったことを証明することができれば、見積もりで提示された金額のみを支払えば問題なく、施主側に追加費用を支払う義務はなくなります。業者側の過失が認められたにも関わらず、該当の建物を解体しない場合は、契約の不履行という形で解体業者側が何らかの処分を受けることになります。
業者側に過失がなければ施主が追加費用を負担する義務が生じますが、建物面積の測定ミスに関しては、施主に責任があるわけではありません。追加費用を請求されたとしても支払う必要はなく、工事が完了するまで代金の支払いを中断するのが賢明です。
土地関連で発生する追加費用
建物関連の事象で追加費用が発生することもありますが、土地関連でも同様の事態が起こることがあります。具体的には、地中障害物と呼ばれるゴミや地中杭、建築廃材や井戸、浄化槽や岩石などが見つかった場合に別途費用請求の対象になることがあります。
特に地中障害物の存在に関しては、工事開始前にわからないことも多く、別途費用が発生することも珍しくありません。それぞれの事象と追加費用発生の関係について確認していきましょう。
地中障害物とは?
地中障害物とは、家屋や建物の地中に埋まっているゴミのことを言います。現在は禁止されていますが、かつては解体工事の際に出たゴミや廃棄物をそのまま地中に埋めていたこともあります。その影響が現在でも残っており、解体した建物の地中からゴミが発見されることがあるのです。
高度成長時代やバブル時代にかけては建物の建築や解体が頻繁に行われていたこともあって、建築業界は多忙であったと言われています。その中で、きちんとした手順を踏まずにゴミや廃棄物を地中に埋めてしまう処理も横行していました。今では廃棄物処理法が制定されたおかげで、地中にゴミを埋め戻す行為をする解体業者はほとんどいません。地中にゴミや廃棄物を埋めることは違法行為となります。
廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)
廃棄物の排出を抑制し、廃棄物の適正な分別、保管、収集、運搬、再生、処分等の処理を行い、生活環境を清潔にすることで生活環境の保全及び公衆衛生の向上を図ることを目的として制定された法律。
万一、地中障害物が見つかった場合も、その量や種類によりますが、5万円から10万円程度の追加費用がかかることが少なくありません。施主としてはいい迷惑となりますが、地中障害物の発見によって追加費用請求の対象になる可能性を考慮しておく必要があります。
建物の地中杭
特に軟弱な地盤の上に建物を建てる場合、建物の重さで地盤が沈み込むことを防ぐために、金属製やコンクリート製の杭を地中深くに打ち込むことがあります。その上に建物を建築することで、地盤の軟弱性をカバーしようとするものです。
解体工事を行う建物の設計図面などがあれば、地中に杭が埋め込まれているかどうか事前に判断することができます。そうすれば最初から「建物の地中杭処分」についても費用に組み込まれるので、追加費用が発生することはないでしょう。
しかし、場合によっては以前あった建物の杭がそのまま埋め戻されているケースもあります。そうした状況では解体工事を始めてから杭の存在に気づくことになるので、追加費用がかかる可能性が高まります。
建築廃材
建築廃材の発見によって追加費用が発生することもあります。建築廃材もいわゆる地中障害物の1つであり、解体工事によって出たゴミとして認識されています。具体的には以下のようなものが挙げられます。
- コンクリート片
- 木片
- ガレキ
- 瓦
上記のようなものが建築廃材に該当するものであり、かつて埋め戻した建築廃材がそのままになっていることがあります。現在は廃棄物処理法によってマニフェストの作成が義務付けられています。マニフェストは建築廃材の処分方法を細かく記載したもので、施主もコピーを受け取ることができます。マニフェストの導入は1998年からとなっているので、それ以前に解体された建物の地中には建築廃材が埋まっている可能性も出てきます。
解体途中で地中に建築廃材が見つかった場合も、追加費用請求の対象となるので覚えておきましょう。
井戸
井戸がある場合も、追加費用請求の対象となることがあります。もともと井戸の存在を把握していて、その撤去も含めて解体してもらう場合は、見積もりの段階で解体費用に含めてもらえます。
しかし、かつて井戸が埋め戻されていて、そもそも井戸の存在に気づかないこともあります。過去に行われた埋め戻し工事が不十分であった場合は、新たに埋め戻し工事をしなければならない状況になってしまいます。そうなると、追加費用を取られるリスクが出てくるので注意が必要です。
浄化槽
井戸と同様に、解体工事中に浄化槽が見つかった場合も追加費用請求の対象になることがあります。かつて、下水道が整備される前は、敷地内に大きなタンク状の浄化槽を設置していることも珍しくありませんでした。
不要になった浄化槽がきちんと撤去されていれば問題ありませんが、場合によってはそのまま残っている可能性もあります。埋め戻しが不十分だった場合や手抜き工事などが行われていた場合は、新たに浄化槽も埋め戻さなければならなくなります。そうなると、追加費用が発生することになるので認識しておきましょう。
大きな岩石など
建築廃材や廃棄物などもそうですが、地中から大きな岩石が見つかった場合も地盤の安定感を確保するために撤去しなければなりません。
特に巨大な岩や岩石の量が多かった場合には、撤去や搬出のための労力も重くなっていきます。ちょっとした石や岩であればそのままにしておいても大丈夫ですが、大きな岩石となると状況は異なります。地中から大きな岩石が見つかった場合は、撤去や搬出のための費用を施主が負担することになる可能性も高まります。
近隣トラブルによって発生する追加費用
さまざまな事象や理由によって発生する可能性がある追加費用ですが、近隣トラブルが原因で発生することもあります。
解体工事は自分たちだけが良ければ良いというものではなく、第三者も含めて社会的な配慮をすることが重要です。施主としても解体業者としても、その認識を持った上で工事に取り掛かることが求められます。ここからは近隣トラブルと追加費用の関係に注目をして解説を行っていきます。
クレームなどにより工事が中断、延期分の負担
解体工事では振動や騒音の発生、ほこりや粉じんの飛散、道路の利用など、さまざまな形で近隣住民の方に迷惑を掛けることになります。近隣住民としても止むを得ないこととは言え、日常とは異なる状況にストレスを感じることも出てきます。
解体業者も慣れている部分がありますが、クレームの量が多かったり大きなクレームが発生したりした場合は、工事を一時中断せざるを得ない場面が出てきます。
また、振動や騒音などが一定の基準を超えると、行政から改善の指導を受けることもあります。その状況が改善されないと、行政からの勧告で工事を中断させられることがあります。
いずれにしてもそれまで順調に進んでいた工事が中断してしまうと、延期期間分の料金を請求される可能性も出てきます。工事が長引けば長引くほど人件費もかさんでいきますし、重機などをリースしている場合はリース料金も高くなっていきます。
工事延期に伴ってかかる費用は基本的に施主の負担になることが多いです。事情によっては解体業者が負担してくれることもありますが、追加費用が発生する可能性もあることを理解しておきましょう。
近隣住民や隣家への傷や損傷による損害賠償
解体業者が工事保険に加入しているかどうか確認することも大切です。単なるクレームやちょっとしたトラブルであればそこまで大きな問題ではありませんが、工事中に近隣住民や通行人に障害を負わせてしまうこともあります。場合によっては、近隣のブロック塀や庭木などを破壊してしまうこともあるでしょう。
そうした事故が発生した場合は単なる近隣トラブルではなく、損害賠償請求問題にまで発展する可能性があります。基本的に工事中に起きた事故に関しては解体業者の責任となるので、損害賠償も解体業者が支払うことになります。しかし、損害賠償の額が高くなると、解体業者の財力だけでは支払え切れなくなる可能性があります。
そこで頼りになるのが工事保険の存在です。解体業者が不慮の事故やトラブルに備えて適切な保険に加入していれば問題ありません。しかし、場合によっては適切な工事保険に加入していない業者もあります。そうなると施主に金銭的な被害が及ぶリスクも出てきます。
解体業者自身もそうですが、施主自身を守るという意味でも確実に工事保険に加入している業者を選ぶことが重要です。
近隣への事前の挨拶が重要
解体工事が始まったら、近隣からのクレームやトラブルが出ないように祈るしかありませんが、事前にできることはあります。それが近隣への挨拶回りです。解体工事を行う上では近隣挨拶が重要であり、解体業者としても十分に理解しています。
工事開始前に近くの住居を回って丁寧に挨拶をしたり、どういった工事を行うのかについての説明を行ったりすることが重要です。そうすることでトラブルやクレームの発生を抑えやすくなります。
挨拶回りの際は、解体業者と一緒にできる限り施主もついて行った方が良いでしょう。事前に顔を合わせておくことで、万一トラブルが発生した場合でも事態を収束させやすくなります。
口頭見積もりによる追加費用の発生を避けるポイント
口頭見積もりによって発生する追加費用は最も注意が必要です。解体工事中に想定外の事態やトラブルなどが起きて追加費用が発生することはありますが、同様に見積もりの段階で追加費用発生の原因になることもあります。
それこそが口頭見積もりであり、未だに書類を用意せずに口約束だけで工事を行おうとする業者もあります。かつてはそれで上手くいっていた部分もありますが、現在では必ず書類を用意してもらうことが大切です。未だに昔からの流れや慣習で口約束での契約を結ぼうとする業者もあるので注意が必要です。実際にどういったデメリットや注意点があるのか確認していきましょう。
- 口約束のデメリットを理解する
- 解体業者との認識の違いをなくす
- 「○○一式」には要注意
- 口頭見積もりを回避する方法
- 「追加費用請求なし」にも注意
口約束のデメリットを理解する
解体工事を初めて行うという方やそれほど知識がない方にとっては、プロの解体業者が言うことをそのまま信じたくなることがあります。解体現場に足を運んでもらった際に、「このくらいの規模の家であれば、だいたい○○万円くらいで工事可能です」などと言われると、それをそのまま信用してしまうこともあるでしょう。
確かに金額自体は言われた額で問題なかったとしても、口約束だけで契約してしまうと、後からどんどん追加費用を請求されるリスクが出てきます。書面で何も証拠が残っていないので、作業が進むに連れて費用がどんどん高くなっていったとしても、施主は何も言い返すことができません。
口約束の場合は「言った言わない問題」に発展することも多く、施主が圧倒的に不利な状況に立たされます。口頭でだいたいの金額を聞いた場合でも、必ず書面で見積もりを提示してもらうことが大切です。そうしないと、実際に支払う総額がどこまでも高くなるリスクを負うことになります。
解体業者との認識の違いをなくす
口頭見積もりや口約束をした場合に注意しておきたいポイントとして、解体業者との認識の違いがあります。書面で作業項目や項目ごとの金額を提示していれば、どの作業を行ってどの作業を行わないのかパッと見て判断することができます。しかし、口約束ではそれができません。
例えば、建物本体以外に離れや納屋、倉庫やカーポートなどがある家もあるでしょう。ブロック塀や植木の処分なども同様です。見積書に作業項目が記載されていれば、どの作業が行われるのか判断できます。
しかし、口頭見積もりの場合は業者と施主の間で作業に対する認識の違いが出てくる可能性も否定できません。工事が始まってから「離れは解体してもらえないのか?」、「カーポートは撤去しなくても良かった」などと、お互いの主張に食い違いが出てくることが考えられます。
そうした点を考慮しても、口頭での見積もりや口約束は避けておくべきです。場合によっては、多額の追加費用が発生するリスクを抱えることになるので注意が必要です。
「○○一式」には要注意
口約束や口頭見積もりに注意することを理解して、書面で金額提示をしてもらった場合でもまだ十分ではありません。それは、「○○一式 ○○万円」と書かれている見積書を受け取った場合です。確かに書面で見積もりを受け取っていますが、「○○一式 ○○万円」では具体的にどういった作業を行うのか、作業ごとの金額を確認することができません。
パッと見た感じでがシンプルでわかりやすいと思う施主の方もいるかもしれませんが、見積書はシンプルではいけません。これでは口約束をした場合とほとんど状況は同じになってしまいます。つまり、解体業者と施主の間で認識の違いが生じる可能性が高く、思わぬトラブルにつながるリスクが発生することになります。
見積書を受け取った場合でも、「○○一式 ○○万円」ではなく、作業項目や項目ごとの金額が記載されているかどうか確認することが大切です。そうすることで、無用な追加費用の発生や解体業者との認識の違いを避けることができます。
口頭見積もりを回避する方法
追加費用の発生につながるリスクもある口頭見積もりですが、可能であれば回避するのが賢明です。口頭見積もりを回避する方法としては、確実に書面での提示を受けるようにしましょう。いくら口頭で説明を受けても、それはその場限りの話であり、後になってからどのようにひっくり返されるかわかりません。
その点において、書面での見積もり提示や契約書の受け渡しをしてもらうことができれば、時間が経過してもお互いが合意した証拠として残しておくことができます。
また、解体業者から伝えられたことについて、わからない点や不明点があればその場で確認し、全て解決してから契約を結ぶことが望ましいです。特に離れや納屋、庭木やカーポートなど、建物本体以外に撤去する必要があるものを抱えている場合は、それも含めた総額を提示してもらうようにしましょう。工事が始まってからの無用なトラブルを避けるという意味でも、事前に確認できることは確認しておくことが大切です。
「追加費用請求なし」にも注意
口頭見積もりにも注意が必要ですが、その他に「追加費用請求なし」にも注意を払う必要があります。それほど多いケースではありませんが、解体業者の中には契約を結ぶ時点で「追加費用を請求することは一切ありません」などと伝えてくることがあります。
一見すると施主としては嬉しいように感じられますが、安易に鵜呑みにするのは避けておくべきでしょう。特に口頭で「追加費用を請求することはない」と言われた場合は要注意です。解体業者としては契約を取ることに精一杯になっており、施主に対してつい甘い言葉を投げかけているだけの可能性があるからです。
本当に追加費用請求がないのであれば、契約書などの書面上に該当の文言を入れて提示してもらうことが重要です。口約束では後から「言った言わない」の水掛け論になるリスクが高まります。
そもそもの前提として、解体工事において最初から追加費用を取らないと言い切るのは無理があります。地中障害物が出てこないとも限りませんし、近隣トラブルが絶対に起こらないと言い切ることもできません。したがって何か特別な事情がない限り、「追加費用請求なし」と伝えてくる業者には疑いの目を向けておきましょう。
追加費用請求があった場合の対応
別途追加費用がかかると言われた場合にどういった対応をすれば良いのか、事前に理解を深めておくことも必要です。追加費用の支払いを拒むことはできるのかといった点も含めて、追加費用請求があった場合の対応について確認していきましょう。
支払いを拒むことはできるか?
追加費用請求があった場合に支払いを拒むことができるかどうか。この疑問についてはケースバイケースと言えますが、基本的に追加費用の支払いを拒むのは難しいと考えておくのが無難です。
特に事前に予測困難な事象が発生した場合は、解体業者側に追加費用を請求する妥当性があると判断されることになり、施主としては追加費用を支払わざるを得なくなります。例えば、地中障害物が埋まっていたケースなど、事前に予測できない事象が発生した場合は、業者側としてもそれを撤去するための費用を新たに請求することができます。
反対に、建物面積の測定ミスなど、明らかに業者側に過失があると認められた場合は施主が追加費用を支払う必要はありません。これは業者側の責任であり、追加費用がないからと言って工事を行わないようなことがあれば契約の不履行となり、業者側が処分を受けることになります。
したがって、追加費用の支払いに関してはケースバイケースと考えておくことが重要です。
追加費用の妥当性を確認
追加費用請求に関しては、その妥当性を確認することが重要です。地中障害物の発見や近隣トラブルなど、想定外の事象が発生して追加費用が生じる場合は妥当性があると判断されるのが一般的です。
反対に業者側の過失や、高過ぎる追加費用請求があった場合は妥当性があると判断されないこともあります。両者で折り合いがつかない場合は、最終的に弁護士などに依頼をして法的な部分で解決してもらうことになります。
工事の途中で地中埋設物が見つかった場合など、明らかに追加費用請求の妥当性があると判断される場合は速やかに支払いに応じた方が良いでしょう。納得がいかないからと言って、いつまでも追加費用を支払わなかったり交渉に応じなかったりするのは得策ではありません。
解体業者としても追加費用を請求する権利があり、場合によっては後から多額の損害遅延金を請求されるといった事態に発展することもあります。また、事前にどういった場合に追加費用が発生するという説明があった場合も、妥当性が認められることになります。例えば、「地中障害物が見つかった場合、その量に応じて追加費用が生じます」などと説明を受けて、それに合意していた場合は支払いを拒否することができません。
施主側にも言い分があるかもしれませんが、妥当性があると判断されそうな事象に関しては速やかに追加費用の支払いに応じましょう。
安易に追加費用を支払わない
地中障害物の発見や大きな岩石が見つかった場合など、事前に予測できない事象で仕方のないものだと判断されれば、追加費用請求に応じる必要があります。しかし、何でもかんでも安易に追加費用の支払いに応じないという心構えは必要です。
それは業者側の単純な過失が認められるケースについてです。建物面積の測定ミスなど、業者側の過失で追加費用が発生する場合、追加費用請求に応じる必要はありません。該当の建物を契約した金額で取り壊すことが解体業者の責任であり、事前の調査ミスに関しては解体業者に責任があります。
事前の調査ミスの場合、追加費用の支払いを求められても安易に応じないこと重要です。万一、契約している工事業者が作業を中断してしまった際は、費用を手元に残しておくことで他の業者に依頼し直すこともできます。特に解体工事を終えた後で代金を支払う契約になっている場合は、費用を手元に残しておくようにしましょう。
また、悪徳業者にも注意が必要です。中には工事の途中に自分たちで地中に障害物を埋めて、あたかも最初から障害物があったかのように見せかけてくる業者もあります。他にもさまざまな手段を使って追加費用を請求しようとすることがあります。最初から見破るのは難しいことがあるかもしれませんが、途中で悪徳業者であることに気づいた場合はすぐに契約を解除して他の業者に切り替えることが賢明です。
悪徳業者に工事代金を求められた場合は弁護士に相談するなどして、法的な観点から解決策を検討してもらうようにしましょう。
解体業者から嫌がらせを受けた場合
解体工事では費用請求に関するトラブルや追加費用請求によって、施主と解体業者の関係がこじれてしまうことも珍しくありません。施主が追加費用の支払いを拒んだり交渉に応じなかったりすると、解体業者から嫌がらせを受けることがあります。高圧的な態度で接してきたり、手抜き工事をしようとしたりするなど、何らかの被害を被るケースもあります。
そういったケースには1人で抱え込むのではなく、消費生活センターに相談するようにしましょう。消費生活センターで必要なアドバイスを受けつつ、場合によっては弁護士への相談を検討することも有効です。
解体業者から嫌がらせを受けた場合、とにかく大切なのは1人で悩まないことです。第三者や公的機関を頼ることで、何かしらの解決策が見つかることがほとんどです。いざという時に行動を起こすことができるように、日常的に消費生活センターや弁護士の存在を意識しておくと良いでしょう。
追加費用によるトラブル防止策
解体工事では追加費用が発生することも多く、場合によっては施主と解体業者の間でトラブルが生じてしまうこともあります。
しかし、可能であればトラブルは避けたいと考える施主の方が多いでしょう。追加費用によるトラブルを防止するためにできることもあります。その具体的なトラブル防止策を把握して、実践できるように心がけていきましょう。
- 事前に図面や資料を提供する
- 現場調査を行ってもらう
- 別途費用が発生する条件を確認
- 追加費用発生を早めに知らせてもらう
- 疑問点はすぐに質問する
事前に図面や資料を提供する
追加費用によるトラブル防止策として、まずは事前に図面や資料を提供することが挙げられます。現在の建物もそうですが、以前の建物の図面や仕様書といった資料があれば、解体工事を行う前に地中の状況やアスベストの使用状況を確認できます。つまり、事前に以下の情報を共有しやすくなるということです。
- 地中障害物が出てきた場合に追加費用が発生する可能性がある
- アスベストが使用されていた場合に追加費用が発生する可能性がある
事前にこうした情報を共有しておくことで解体業者としても工事が行いやすくなりますし、施主としても追加費用が生じる可能性を認識しやすくなります。建物に関する図面や資料がないと、本当に行きあたりばったりの工事になってしまいます。
建物に関する図面や資料がある場合はあらかじめ解体業者に渡しておき、追加費用が発生する可能性について共有しておくようにしましょう。
現場調査を行ってもらう
解体業者に見積もりを依頼すると、多くの業者では解体現場を確認した上で見積もり金額を提示してくれます。しかし、中には電話やメールのやりとりだけで現場調査を行わない業者もあります。
施主としても電話やメールだけで交渉が進めば楽だと思うかもしれませんが、実際には危険が潜んでいるので注意が必要です。図面や資料だけでおおよその金額を出すことは可能ですが、やはり現場を見てみないとわからないことも多々あります。
解体現場に工事車両や重機を搬入できるだけの道幅はあるのか、隣家との境界線はどの辺か、隣家との距離はどの程度あるか、家屋以外に解体するものがあるかなど、現場に来ることではっきりすることは少なくありません。
正確な見積もりを出してもらうという意味でも現場調査は欠かせないものであり、仮に追加費用が発生した場合でも施主の納得感も高まりやすくなります。
反対に、現場調査をせずに工事を開始して、後からあれこれと言われて追加費用を請求された場合はどうでしょうか。なかなか素直に納得できる施主は少ないことが予想されます。施主自身の追加費用に対する納得感を高めるという点で現場調査は必要であり、工事をスムーズに行うという観点でも事前に現場に足を運んでもらうことが重要です。
別途費用が発生する条件を確認
追加費用に関するトラブル防止策としては、事前に別途費用が発生する条件を確認しておくことも大切です。「どういった事象が発生した場合にどのくらいの追加費用がかかります」と事前に教えてもらうことができれば、施主としても納得感が高まりやすいでしょう。
例えば、見積書に地中障害物が見つかった場合に発生する別途費用について記載があれば、実際に地中障害物が見つかった場合でも違和感なく追加費用を支払うことができます。なおかつ、障害物の量についても記載があればベストです。「障害物1㎥につき1万円」など、具体的な金額が提示されていれば、その記載に従うことができます。
止むを得ない事態が起きた時に追加費用がかかるのは仕方のないことであり、解体工事を円滑に行うためにも必要なことです。その状況について事前に合意しておくことで、無用なトラブルを避けることができるでしょう。施主としてもどういった場合に追加費用が発生するのか確認することが大切です。そうすることで、無用なストレスや不安を抱えることなく解体工事と向き合うことが可能となります。
追加費用発生を早めに知らせてもらう
事前に取り決めを行っていても、実際に追加費用の支払いをするのは経済的な負担です。そのため、追加費用が発生しそうになった場合は、必ず事前に相談してもらえるように解体業者に依頼しておくことがおすすめです。
解体工事が全て終わった後に、「大量の地中障害物が見つかって処理しておいたので追加費用を支払ってください」などと言われても、施主としては困ってしまいます。そうではなく、事前に追加費用の支払いが必要な事象があったと伝えてもらうことで、少しでもすっきりした形で追加費用の支払いをすることができるでしょう。
地中障害物があった場合などは、実際に現場を見せてもらうこともおすすめです。現場に行けない場合は写真や動画を撮影してもらい、それを見せてもらうこともできます。なるべく双方が納得できる形で工事を進めることが重要であり、追加費用によるトラブルを避けるための秘訣です。
疑問点はすぐに質問する
最後に意識しておきたいポイントとして、疑問点はすぐに質問して解消することが挙げられます。追加費用の点に関してもそうですが、解体工事全体についてもわからないことがあれば、その場で解決するように心がけることが重要です。
「後でいいや」、「よくわからなくても何とかなるだろう」といった姿勢でいると、後になって困るのは施主の方です。わからないことをわからないままにしておくと、「なぜ追加費用が発生するのか」、「なぜその作業が必要なのか」、「なぜ事前に相談してくれなかったのか」など、次々と不安な点や疑問点が出てくることになります。
解体工事は特に金額が大きくなりやすいこともあり、疑問点をそのままにしておくとどんどん支払う費用がかさんでいくことがあります。業者の言いなりにならないようにするためにも、わからないことはすぐに質問をしてその場で解決するという意識を持っておきましょう。
まとめ
解体工事では追加費用が発生することも珍しくなく、工事をスムーズに進めるために必要となることもあります。追加費用請求自体は問題ではありませんが、そのやり方や説明次第では施主との間でトラブルが生じる可能性も出てきます。事前に解決できる部分は解決しておき、施主と解体業者の双方が納得した形で追加費用と向き合うことが大切です。
施主としては口頭見積もりや口約束には注意を払い、必ず書面で見積もり提示や追加費用に関する規定を記載してもらうことが求められます。施主として意識できる部分を頭に入れておき、実際の行動につなげていきましょう。そうすることで追加費用に関する悩みを解消して、無用なトラブルを避けることができます。