区画整理による解体工事とは?費用面や流れについても解説
家屋や建物の解体工事でも、区画整理によって行われる解体工事について知りたいという方も多いのではないでしょうか。そこで本記事では、区画整理と解体工事の関係に焦点を当てて、解体の流れや費用の出所などについて具体的に解説を行っていきます。区画整理による解体の際には覚えておきたい用語も複数あります。それらの用語や基礎の撤去の兼ね合いも含めて解説していきますので、どうぞ参考にしてください。
区画整理による解体工事
それでは早速、区画整理による解体工事について解説していきます。家屋や建物の所有者の場合、本人の意思で解体工事を行うことはありますが、本人の意思とは関係ないところで解体の議論が湧き出てくることもあります。
それこそが区画整理であり、それまで住んでいた家を出なければならなくなる可能性があります。店舗やオフィスとして利用していたビルやマンションなども同様です。まずは区画整理とは何かを理解して、必要な対応を取ることが求められます。
区画整理とは?
区画整理とは、整備が必要な市街地で土地の所有者から土地を分けてもらい、道路や公園といった公共施設用地に充てて再整備することを指します。
都市再生計画などによって、土地の再利用や有効活用のために検討されるのが区画整理であり、地域活性化につなげる目的で実施されることもあります。
これまで無計画に土地が利用されてきた場所や宅地化が進められてきた場所では、以下のような問題が発生することがあります。
- 雨が降るとすぐに浸水してしまう
- 道幅が狭く、消防車や救急車が通行することができない
- 子供の遊び場がない
特に道路や公園、下水道といった公共施設が整備されていない地域では、上記のような問題が生じやすくなります。こうした問題発生を防ぐために、区画整理を通して地域の安全や快適性を担保することが大きな目的です。
区画整理の対象地域となった場合、土地所有者は土地を譲り、自身は引っ越しをする必要が出てきます。
区画整理には応じなければならない?
地域環境を守ることや、より快適な住環境を実現するために行われることがある区画整理ですが、区画整理の対象地域になった場合は必ず応じなければならないのでしょうか。
結論としては、区画整理には応じる必要があると考えておくのが賢明です。区画整理は民間事業ではなく、行政が行う公共事業の扱いとなります。そのため、強制力が生じることになり、対象地域の住民は区画整理に応じなければなりません。
正当な理由もなく拒否を続けていると、損害賠償請求をされたり、強制立ち退きを執行されたりする可能性があるので注意が必要です。そうなると、本来は補償金の支給によって損をすることはなかったはずでも、損害賠償請求などによって経済的に損をする可能性が出てきます。基本的に区画整理には応じるものだと心得ておきましょう。
区画整理による解体工事費用
ここからは、区画整理と解体工事費用の関係について解説を行っていきます。区画整理による土地の譲渡や建物の解体に関しては、家主の意思とは関係ないところで実施されるものです。そのため、解体費用は負担してもらうことができるのかと疑問に思う方もいるでしょう。
区画整理によって立ち退きを指示された場合の費用について理解を深めておくことが大切です。自己負担はあるのかどうかも含めて、具体的に解説を行っていきます。
立ち退き料が支払われる
区画整理によって立ち退きが指示された住民に関しては、立ち退き料が支払われることになっています。土地や家屋、建物を含めて、行政が直接的に個人の資産に影響を及ぼす行為が区画整理です。
そうした影響を考慮して、個人に対する補償の意味合いも含めて支払われるのが立ち退き料です。立ち退き料に含まれるものは以下の通りです。
- 現在の所有地とは別の場所に代替地を用意
- 解体工事費用
- 新たな住居を建てるための建設費用
- 引っ越しにかかる費用
解体工事にかかる費用を単体で支払われるのではなく、新たな住居に引っ越しを完了するまでの一連の流れの中でかかる費用を補償してもらうことができます。基本的に家主が金銭的に損をすることはないので、行政と適切に連携を取っていくことが大切です。
補助金や助成金の支給
区画整理による解体工事の場合、補助金や助成金の支給があるのかという点も気になるポイントです。基本的に解体工事から新居の建設、引っ越しにかかる費用は、立ち退き料という形でまとめて行政から補償されることになります。
そのため、いわゆる補助金や助成金といった金銭の支給はないと考えておくのが無難です。ただし、立ち退き料で支給された金額では解体工事費用をまかなえなかった場合に、改めて行政から補助金や助成金の支給を受けられることがあります。
区画整理においては、解体費用が単体で支払われることは珍しいケースです。万一、解体費用が予算オーバーになってしまった場合は、組合や区画整理事業担当者に確認することがおすすめです。担当者とのやり取りを通じて、新たに必要となった費用を補てんしてもらうことが重要です。
原則自己負担はなし
区画整理による解体工事費用や引っ越しにかかる費用などは、全て行政から負担してもらうことができるので、原則自己負担が生じることはありません。新居の建設費用も負担してもらうことができます。
ただし、全ての費用を負担してもらうためには、行政からの指示に従い、計画通りに立ち退きに協力することが前提です。いつまでもごねていたり立ち退きに応じなかったりすると、立ち退き料の支払いにも悪影響を及ぼすことになります。
最悪の場合、損害賠償請求をされて、ご自身が支払う金額の方が大きくなってしまうので注意が必要です。
思い入れのある住宅や土地など、どうしても手放したくない気持ちになることもあるでしょう。それでも感情に任せることなく、決まったものに対して従う勇気を持つことが大切です。
区画整理による解体工事の流れ
ここからは、区画整理による解体工事の流れについて確認していきます。原則として応じる必要のある区画整理ですが、実際にどういった流れで事業が進められていくのか理解しておくことも大切です。
計画決定から清算金の交付にいたるまで、一連の流れについて理解を深めていきましょう。
これから説明する一連の流れについてまとめておきます。
- 計画決定と住民説明会の実施
- 土地区画整理組合の設置
- 仮換地指定と建物移転補償交渉
- 立ち退き
- 換地処分
- 土地建物の登記
- 清算金の交付
計画決定と住民説明会の実施
区画整理による解体工事の流れとしては、最初に計画決定と住民説明会が実施されることになります。区画整理は行政が主導して行われる公共事業であり、都市再生計画や事業計画といった計画書を作成して、実際の事業へと移行することになります。
計画決定の段階では組合の定款なども作成され、地域住民にアナウンスを行います。区画整理の計画が決定すると、住民説明会を開催します。
区画整理は公共事業であり、基本的には応じる必要がありますが、それでもきちんと住民からの承諾を得たという形で事業を進めていく必要があるものです。そのため、最初に住民説明会を開催して、地権者の同意を得る手続きを進めていきます。
その場で同意してくれない地権者に関しては、個別に交渉を重ねて最終的には同意をしてもらうように促すのが行政に求められる役割です。地権者としても、正当な理由なくいつまでも同意しないでいると、損害賠償請求の対象になることがあるので注意が必要です。
土地区画整理組合の設置
区画整理の計画が決定されて住民説明会を実施すると、続いて土地区画整理組合の設置へと移行していきます。
土地区画整理組合とは、土地区画整理事業の施行される区域内の宅地所有者と借地権者が組合員となる組合のことです。原則として7名以上の組合員が必要で、都道府県知事の認可によって設立することができます。
また、土地区画整理組合設立の条件として、区域内の宅地所有者と借地権者のそれぞれ3分の2以上が事業計画に同意することが必要であることも定められています。住民説明会を通じて同意を得ることによって、スムーズな組合の設置につなげることが求められます。
仮換地指定と建物移転補償交渉
続いての区画整理の流れとして、仮換地指定と建物移転補償交渉を挙げることができます。仮換地指定とは、それまで所有していた土地に代わる新たな土地を仮の換地として設定することです。これは、土地を交換することと同義だと認識しておけば問題ありません。
建物移転補償交渉に関しては、区画整理によって立ち退きする際に生じる補償金の査定を実施するものです。いわゆる立ち退き料と呼ばれる補償金の総支給額を決定するものであり、組合や行政の調査員が金額提示を行います。
建物の不動産価値や所有者の思い入れなども考慮して、最終的な金額が決定されます。所有者が補償金額に合意をして、書類に署名をすれば交渉終了となります。
立ち退き
仮換地指定と建物移転補償交渉まで終えると、居住している建物から立ち退きを行うことになります。立ち退きをしてから解体工事を行うことになるので、居住者は決められた期間内に速やかに立ち退く必要があります。
立ち退きの前後で立ち退き料の半金が支払われることもあります。支払いの条件に関しては、組合や行政の調査員に対して事前に確認しておくことが大切です。
換地処分
立ち退きを終えると、換地処分が行われることになります。換地処分とは、それまで所有していた土地の権利が新たに割り当てられた土地に移行することを指します。
原則として、換地処分が行われたタイミングで立ち退き料が全額支払われます。
土地建物の登記と清算金の交付
区画整理の流れとして、最後に行うのは土地建物の登記と清算金の交付です。土地建物の登記に関しては、区画整理組合が換地上に登記を行います。別名で本換地と呼ぶこともあります。
その後、清算金の交付が行われます。これは、換地によって生じた所有者間の利害の差を埋めるための行為です。清算金の交付と徴収が行われ、利害の差をなくします。
ここまで終えてようやく区画整理が完了となります。全ては地権者と行政の協力のもとで行われる公共事業となります。組合員も含めてスムーズに区画整理が進むように、1人1人が協力することが大切です。
区画整理で覚えておきたい用語
ここからは、区画整理に際して覚えておきたい用語について解説していきます。実際に区画整理の対象地域になるかどうかはわかりませんが、区画整理の対象となった場合はさまざまな用語が飛び交うことになります。
行政や組合の担当者と話し合いを行う場合も、専門的な用語を交えながらコミュニケーションを進めることがあります。その際に少しでもスムーズに会話できるように、用語の意味を理解しておくことがおすすめです。特に覚えておきたい用語に絞って取り上げていくので、理解を深めておきましょう。
公共施設
まずは、公共施設について確認していきます。区画整理における公共施設とは、道路や公園、水路といったものを指す言葉です。これは土地区画整理法で規定されているものであり、区画整理に限って規定されているものです。
学校や図書館、下水道なども公共施設と言えますが、区画整理について規定する土地区画整理法においては「公共施設」ではありません。これらの違いに注意をして認識することが大切です。
宅地
続いては、宅地について解説します。区画整理における宅地とは、国または地方公共団体が所有している公共施設の用地以外の土地のことを全て指します。
一般的に宅地と呼ばれている住宅用の土地や建物の敷地である土地に関しては、区画整理における「宅地」ではありません。この辺も分けて理解しておく必要があります。
保留地
保留地に関しては、区画整理事業が施行されて整備された土地のうち、換地として定めずに売却を前提に事業費に充てるために施行者が定める土地のことを指します。
一般的に、保留地はその地域における相場価格よりも安く購入できることが多くなっています。そのため、購入希望者が複数現れて抽選販売が行われることも珍しくありません。
区画整理を行うと、それまでいびつだった土地もきれいに整形されて使いやすくなることがあるので、土地の価値が高まることがあります。それでも相場より安く販売されることが多く、人気の土地となることが多いです。
減歩(げんぶ)
続いては、減歩について確認していきます。区画整理では、区画整理事業に必要な土地を公平に出し合うことが基本的な仕組みとなっています。区画整理の対象区域内の地権者が、事業による個々の宅地の利用増進に見合った分だけ分けて提供するのが原則です。
それぞれの地権者が区画整理事業に必要な土地を公平に出し合うことで、個々の宅地面積が減少することになります。このことを「減歩」と呼んでいます。
公共減歩と保留地減歩
減歩には道路や公園などの公共施設用地にあてるための「公共減歩」と、事業費の一部にあてるための土地を生み出す「保留地減歩」があります。
減歩によって、新たに生み出された土地が社会的にも有効活用されていきます。
換地(かんち)
最後に換地について解説していきます。区画整理では、個々の宅地の位置や面積といった立地条件を考慮して、より有効活用しやすいように宅地の再配置を行うことになります。道路や公園といった公共施設を整備することもそうですが、宅地の再配置も区画整理においては重要な事項です。
元の宅地に対して新しく置き換えられた宅地のことを「換地」と呼んでいます。また、宅地ではなく、区画整理によって土地の入れ替えを行った場合も、新たに割り当てられた土地を「換地」と呼ぶことがあります。
土地だけの場合も、土地の上に建物がある場合も利用することができる言葉です。
区画整理による解体工事と基礎の関係
ここからは、区画整理による解体工事と基礎の関係について解説を進めていきます。区画整理によって家屋や建物を解体することがありますが、その際に基礎を残すのか、それとも撤去する必要があるのか悩むという方もいます。
行政や組合から基礎に関しての指示がある場合もありますが、何の指示がないこともあります。区画整理では、更地にした土地に新しい建物を建てることが大きな目的となります。その際に基礎を残しても良いのかという疑問を解消するべく、理解を深めていきましょう。
基礎は残すのか?
まず、区画整理の際の解体工事で基礎は残すのかという疑問については、ケースバイケースと言うことができます。基礎を残すかどうかは区画整理事業によって異なることであり、何か決まった方針があるわけではありません。
基礎をそのままにしておいても、その後の整備計画に支障を来たすことがないと判断された場合は、あえて基礎を撤去しないことがあります。基礎の撤去に関しても費用がかかる工事であり、行政としては経費削減を念頭において基礎を残した状態で更地にすることがあります。
反対に、基礎があることによってその後の整備計画や道路計画に支障が出ると判断された場合は、基礎を撤去することになります。この辺の判断は行政側が行うことが一般的で、地権者側で判断することは多くありません。
解体業者への確認
組合や行政から基礎に関する指示があった場合は、その指示内容に従うことが求められます。基礎を撤去するように伝えられた場合は、解体業者へその旨を伝えるようにしましょう。事前に基礎の撤去が必要だと伝えておくことで、その費用も合算した上で見積もりを提示してもらうことができます。
解体費用の中でも基礎コンクリートの処分台は大きな割合を占めることがあり、基礎を撤去するかしないかで総額も大きく変わっていきます。したがって、事前に解体業者へ基礎の撤去が必要かどうか知らせておくことが大切です。
また、組合や行政から基礎の撤去は必要ないと言われていても、家屋や建物の仕様によっては基礎の立ち上がりの取り壊しが必要なケースもあります。詳しい仕様について組合や解体業者に確認しつつ、適切な対応を取ることがポイントです。
基礎の撤去がおすすめ
基礎の撤去に関してはどちらでも良いというのが実際のところですが、できるだけ基礎は撤去しておいた方が良いものです。と言うのも、廃棄物処理法の規定が絡んでくる可能性があるからです。
廃棄物処理法では、たとえ自分の敷地であっても廃棄物を投棄することを禁止しています。この規定の解釈は自治体によって異なる部分もありますが、基礎をそのままにしておくことが廃棄物処理法の規定に抵触すると判断される可能性もあります。
行政や組合からの指示で、基礎をそのままにしている場合はそれほど心配ありません。しかし、基礎があることで地中に廃棄物が埋まっていると判断されると、不動産価値が低下する可能性も出てきます。
こうしたことを総合的に判断すると、基礎はできるだけ撤去しておくことがベターです。
まとめ
区画整理による解体工事に焦点を当てて、その関係性や解体費用の出所、解体工事の流れなどを中心に解説を行ってきました。区画整理の対象となった場合は、原則として居住している住まいから立ち退くことが求められます。
それまでの思い出が詰まっている家であっても、新たな場所へ引っ越さなければなりません。その代わりに、引っ越しにかかる費用や新築物件の建設費用などは立ち退き料という形で補償してもらうことができます。
いろいろと悩ましいこともありますが、区画整理の対象となった場合は組合や行政の指示に従うことが賢明です。区画整理による解体工事の流れも理解しつつ、地権者としてできることをスムーズに進めていきましょう。