フロン法と解体工事の関係とは?フロン製品を回収する理由も解説!
解体工事を依頼する際に、「フロン法」という言葉を耳にしたことがあるという方もいるのではないでしょうか。今回はフロン法と解体工事の関係に注目をして、その内実について具体的に解説を行っていきます。21世紀に入って地球温暖化やオゾン層破壊といった問題が表面化されるようになってきました。そこで解体工事の際もフロン法を守った中で作業を進める必要性が認識されています。フロン製品の合理化やライフサイクルの関係、回収しなければならない理由も含めてご紹介していきます。解体工事を行う際の参考として、どうぞご覧ください。
解体工事とフロン法の関係
それでは、解体工事とフロン法の関係から確認していきます。家屋や建物の解体工事は何でもかんでも自由に行って良いというものではなく、一定の規則や法律にしたがった中で行う必要があります。その1つとして意識しておきたいのがフロン法であり、考え方を理解しておく必要があります。
また、機器所有者や元請業者、排出事業者に課せられる義務や責任もあります。それらの内容も含めて理解を深めていきましょう。
フロン排出抑制法の制定
まずは、フロン排出抑制法の制定について見ていきます。フロン排出抑制法はもともと平成13年に制定されました。その際の名称は「フロン回収・破壊法」と呼ばれていました。この法律が制定された経緯としてはフロン製品をみだりに処分したり廃棄したりすると、オゾン層を破壊して地球温暖化につながってしまうという懸念があったことに起因しています。
そのフロン回収・破壊法が平成25年に改正されて「フロン排出抑制法」が誕生しました。基本的には従来の法律を踏襲していますが、時代や状況の変化に合わせて規制内容を修正しようとした結果、法律名も変更となりました。
法律改正の背景には代替フロンの排出量が急増したこともあり、本格的にフロンの排出を規制する必要があるということからフロン排出抑制法の誕生へといたりました。
正式には「フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律」と呼ばれ、フロン類の合理化や適切な処理を求める内容が基本となっています。
罰則規定
フロン排出抑制法の規定を遵守せずにフロン製品やフロン類を放出した場合は、罰則が定められています。その規定としては1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられることになっています。解体業者はもちろんのこと、機器所有者や排出事業者も含めて関係者全員が規定を守ることが重要です。
機器所有者に課せられる義務
フロン排出抑制法では、それぞれの立場に応じた義務や責任を規定しています。まずは、機器所有者に課せられる義務について見ていきます。主な内容としては以下の点を挙げることができます。
- 業務用空調冷凍機器を廃棄する際にはフロン類充填回収業者への引き渡しを行うこと。
- フロン製品の回収や再生、破壊に必要となる料金の支払い。
- 解体工事元請業者が行うフロン製品の有無の確認への協力。
- 解体工事から90日以内にフロン類充填回収業者から「引取証明書」の交付がなかった場合、都道府県知事へ報告すること。
- フロン製品の「引取証明書」に虚偽記載があった場合は、都道府県知事へ報告すること。
- フロン製品の「委託確認書」もしくは「回収依頼書」の写し、「引取証明書」の3年間の保存。
上記がフロン製品の機器所有者に課せられている義務となります。フロン製品を処分したり廃棄したりする際は、上記の規定を意識しつつ1つ1つの作業を丁寧に行うことが求められます。
解体工事元請業者の義務
続いては、解体工事元請業者に課せられている義務について確認します。主な義務の内容としては下記の通りです。
- 業務用冷凍空調機器の有無を確認すること。
- 解体工事を行う前に書面で施主に対して事前の調査結果を説明すること。
元請業者としては事前のフロン製品の有無をしっかりと確認し、その結果を施主に対して報告することが義務として定められています。工事が始まってしまってからでは遅いので、必ず事前に調査を行う必要があります。特に飲食店やオフィスビルなどの解体工事を行う場合は、フロン製品が使用されている可能性も高いので慎重に調査を行うことが求められます。
解体業者等の義務
続いては、解体業者等に課せられる義務について見ていきます。以下にその内容をまとめます。
- フロン類充填業者に対するフロン製品の引き渡し。
- フロン類充填業者に対して「委託確認書」を提出すること。
- 「委託確認書」と「引取証明書」の3年間の保存。
上記がフロン製品を取り扱う際に解体業者に課せられている義務の主な内容です。委託確認書に関しては、業務用冷凍空調機器の所有者から交付してもらうことになります。フロン類充填業者とのやり取りとあわせて複数の関係者との折衝が必要となるので、その辺も意識しておく必要があります。
排出事業者の責任
フロン製品の取り扱いに関して、排出事業者に求められる責任もご紹介します。フロン類の取り扱いについては基本的に解体業者や機器所有者の責任が大きくなります。解体業者や元請業者が主導して事前の調査や処分を行う必要がありますが、排出事業者としても事前の調査に協力することが求められています。
解体業者などから調査に協力するように依頼された場合は、基本的に断ることはできません。その辺は排出事業者の責任として正当に対応する必要があることを理解しておきましょう。
フロン製品を回収しなければならない理由
ここからは、フロン製品を回収しなければならない理由について確認していきます。フロン類を何の規制もなく自由に排出し続けていると、やがて人類の滅亡へとつながる問題へと発展していくリスクも危惧されています。それがオゾン層の破壊や地球温暖化といった問題であり、フロン製品を回収しなければならない理由につながっていく部分です。
それぞれの内容について具体的に確認していきましょう。
オゾン層破壊問題
まずは、オゾン層破壊問題についてです。何の規制もなくフロン製品を自由に排出し続けていると、オゾン層の破壊につながっていく危険性が指摘されています。地球の周囲はオゾン層と呼ばれる膜で
覆われており、その膜のおかげで紫外線をさえぎってくれている部分があります。
しかし、フロン類を排出し続けていると、やがてオゾン層と呼ばれる膜が崩壊していき、地球上に暮らしている人間がより多くの紫外線を浴びることになってしまいます。そうなると、目や皮膚の病気につながり人体への悪影響につながる危険性が高くなっていきます。
私たちの快適な暮らしを守るという意味でもオゾン層を守る必要があり、そのためにフロン製品を回収する必要があると理解しておくと良いでしょう。
地球温暖化の問題
フロン製品を回収しなければならない理由としては、地球温暖化の問題も挙げることができます。オゾン層の破壊ともつながる部分ですが、地球を覆う膜が破壊されていくと、それだけ太陽の光を直接的に浴びやすくなっていきます。そうなると、徐々に地球の温度が上昇していき、温暖化の一途をたどるようになってしまうリスクがあります。
フロンには太陽の熱が溜まりやすいという性質もあり、地球全体が暖まりやすくなってしまいます。その結果、異常気象が発生したり地球全体の平均気温が上昇するといった事態につながることが懸念されています。
地球の温度が段階的に上昇していけば、農作物がこれまでと同じように育たなくなり収穫が減ってしまうことも考えられます。最悪の場合、食糧危機によって人口が減るというリスクもはらんでいます。
地球の平均気温が上がること自体が大きな問題ですが、それに付随する弊害があることからも、フロン製品をみだりに排出することは禁止されています。
代替フロンでは不十分
オゾン層破壊や地球温暖化といった問題があるフロン製品の排出ですが、その対策として代替フロンの活用が検討されています。実際に代替フロンを冷凍冷蔵機器に活用する事例もありますが、地球環境問題と照らし合わせてみると十分だとは言い切れません。
エアコンや冷凍機器などを使用するという点では代替フロンで問題ありませんが、地球温暖化を防ぐといった点については効果がないと考えておいた方が良いでしょう。
代替フロンを使用した場合でも、一般の空気中にある二酸化炭素の数百倍程度の温室効果ガスを排出してしまうことになります。代替フロンを活用すれば地球温暖化やオゾン層破壊は防げると安易に考えるのではなく、フロン排出抑制法の規定にしたがって然るべき対応を取ることが重要です。
フロン製品の合理化とライフサイクル
ここからは、フロン製品の合理化とライフサイクルに焦点を当てて解説を行っていきます。みだりに排出することが規制されているフロン製品ですが、各メーカーや管理者によって合理化に向けた行動やライフサイクルの指針が定められています。
フロン製品の再生利用なども含めて合理化とライフサイクルの考え方を理解しておくことが重要です。地球環境を守るという視点も持ちつつ、確認を進めていきましょう。
フロン類メーカー
まずは、フロン類メーカーに求められる指針について取り上げます。フロン類メーカーに関しては、「フロン類の製造業者等の判断の基準となるべき事項」と呼ばれる指針に沿って製品の製造を行うこととなっています。この規定は国が作成したもので、フロン類使用の合理化や地球環境の保全をベースにおいたものとなっています。
指定製品メーカー
フロン類の指定製品メーカーとしては、国が決めている「指定製品の製造業者等の判断の基準となるべき事項」にしたがった形で取り扱いを行うことが求められています。環境への影響を考慮しつつ、フロン類の排出を減らすことができるように製品の製造を行うことが重要です。
管理者
第一種特定製品の管理者と呼ばれる方にも合理化に向けた動きが規定されています。第一種特定製品とは業務用の冷凍空調機器のことを指しています。なおかつ冷媒としてフロン類が使われているものが対象であり、カーエアコンなどは除きます。
その管理者になった方は、「管理者の判断基準」に則った形で特定製品の調査や点検を行うことが義務付けられています。地球環境への影響を考慮しつつ、人々の安全と安心を担保する役割があります。
第一種フロン類充填回収業者
第一種フロン類充填回収業者が製品の充填や回収を行う場合は、それぞれの基準にしたがった中で行う必要があります。都道府県知事から許可を得た回収業者については、第一種の扱いということになります。
回収したフロン製品を改修しない場合、フロン類破壊業者に依頼して処理を行ってもらうことも重要です。
破壊・再生業者
第一種フロン類破壊業者や再生業者に関しては、請け負ったフロン製品を所定の基準に則って破壊したり再生したりすることが求められます。使用可能なものであれば、再生して再利用につなげることが重要です。
再生が難しいと判断されたフロン類については、適切な形で破壊をして処分します。
行程管理制度
フロン類の回収や再生、破壊といった行為については、行程管理制度と呼ばれる仕組みで管理されています。フロン類の回収から引取、再生や破壊といった一連の行為に関しては書面で管理することが求められており、各業者間での連携が必要となります。
まとめ
フロン法と解体工事の関係に注目をして、具体的に解説を行ってきました。フロン類やフロン製品は自由勝手に処分したり排出したりすることは禁止されています。オゾン層の破壊や地球温暖化といった事象につながる危険性もあり、人類の存亡に関わる重大事に発展するリスクもはらんでいるのがフロン類です。
それらは適切に取り扱われる必要があり、解体業者をはじめとして、機器所有者や排出事業者にもさまざまな義務や責任が課せられています。1つ1つの事業者や個人がやるべきことをきちんと行うことで、地球環境を守っていけるようにしましょう。