解体工事での瑕疵担保責任とは?土地の売買と瑕疵担保責任も解説!
家屋や建物の解体工事を依頼する際に、瑕疵担保責任はどうなっているのか気になるという方もいるのではないでしょうか。そこで今回は、解体工事と瑕疵担保責任の関係に焦点を当てて解説を行っていきます。解体工事が完了した後に何らかの不具合や障害が見つかることもあります。その際に重要になってくるのが瑕疵担保責任であり、考え方を理解しておくことがポイントです。土地を売買する際の瑕疵担保責任や瑕疵担保のポイントなどもご紹介していきますので、どうぞご覧ください。
解体工事と瑕疵担保責任の関係
それでは解体工事と瑕疵担保責任の関係から確認していきます。建設工事を行う場合は、基本的に瑕疵担保保証と呼ばれる保証制度があります。後ほどご紹介しますが、瑕疵担保責任と瑕疵担保保証には違いがあるので明確に区別して理解することがポイントです。
まずは瑕疵担保責任とは何か、瑕疵担保保証とは何かを理解しつつ、解体工事の場合の瑕疵担保についての認識を深めていきましょう。
瑕疵担保責任とは?
瑕疵担保責任とは何かという部分から確認していきます。瑕疵担保の「瑕疵」とは、本来あるべき品質などが満たされていないことを示すものです。解体工事の場合であれば、解体完了後のガラの取り忘れや近隣の構造物の破損、工事範囲の差異といった事象を瑕疵として挙げることができます。
つまり、本来約束されていた状態とはかけ離れた状態になったことが認められた場合に瑕疵と判断されることがあります。施主が求めていた工事開始前の契約に反した形で工事が完了した場合に、瑕疵が発生すると考えることもできます。
瑕疵担保責任とは瑕疵の原因を取り除く責任のことであり、工事契約を交わした内容を十分に満たすまで任務を遂行することを指します。解体業者としては契約内容に則った形で業務を行う必要があり、契約内容を満たさない場合は工事を完了したことになりません。
何らかの過失や工事内容の誤りが見つかった場合、施主としては瑕疵担保責任を理由に解体業者に対して手直しの依頼をすることができます。工事契約の内容に差異が出ないようにすることが重要であり、解体業者が瑕疵担保責任を負うことになります。
瑕疵担保保証とは?
瑕疵担保責任について理解することができたら、続いては瑕疵担保保証について確認していきます。瑕疵担保保証について理解するためには、新築工事や外構工事をイメージするとわかりやすくなります。新築工事や外構工事をハウスメーカーや工務店に依頼した場合、完成後の引き渡しの際に施主と建築側で物件の点検を行うことになります。
その場で瑕疵が見つかれば再度工事を依頼し直すことができますが、その場で瑕疵をすぐに見つけることは簡単ではありません。そのため、一般的には引き渡し後も一定期間内であれば補修工事ができるように「瑕疵担保保証」を契約書に盛り込んで契約を締結することが多くなっています。
引き渡し後の一定期間内に不備や故障などが見つかった場合、請け負ってくれた業者に依頼すれば瑕疵を取り除いてもらうことができます。これが瑕疵担保保証であり、瑕疵の発見に関して時間的な猶予ができるところに特徴があります。
解体工事の場合の瑕疵担保保証
瑕疵担保保証について改めて整理すると、施主とハウスメーカーや工務店の間であらかじめ合意した一定期間内であれば、瑕疵を取り除いてもらえるものだと言えます。それを踏まえた上で、解体工事の場合の瑕疵担保保証についても確認していきます。
解体工事の場合、工事完了後の立ち会い時に確認する範囲は限られており、新築工事や外構工事の場合と比べて瑕疵があった場合は発見しやすい状況となります。また、工事完了後しばらくしてから不備を見つけたとしても、それが解体工事による瑕疵なのかどうか判断することはとても難しくなってしまいます。
こうした理由もあって、解体工事の場合は契約内容として瑕疵担保保証が含まれていることはほとんどありません。解体完了後の立ち会いで瑕疵を見つけた場合は、解体業者に瑕疵担保責任が発生して修理や補修をしてもらうことができます。
しかし、解体後一定の期間が経過してから不備や不具合を見つけても解体業者に手直しをする義務はないということです。
解体工事後の瑕疵担保責任
ここからは、解体工事後の瑕疵担保責任について確認していきます。瑕疵担保責任と瑕疵担保保証の違いを理解することで、解体工事後の瑕疵担保責任の考え方も把握しやすくなります。上段でもご紹介したように、解体工事に関しては工事完了後の一定期間にわたる瑕疵担保保証はないことがほとんどです。
つまり、工事完了後の立ち会いを重視して不備や不具合を見つけることが重要だと考えることができます。万一、工事後に瑕疵が見つかった場合の対応も含めて理解を深めていきましょう。
工事完了後の立ち会いが重要
解体工事後の瑕疵担保責任について意識しておきたいこととして、工事完了後の立ち会いが重要である点が挙げられます。解体工事の場合は、工事が完了してしばらくしてから不備や不具合を見つけたとしても、解体業者がそれに対して何かしてくれることは難しいためです。
工事契約を結ぶ際に瑕疵担保保証が盛り込まれていれば、不備が見つかった場合に一定期間内にわたって手直しをしてくれます。しかし、解体工事の場合は瑕疵担保保証がつかないことがほとんどであり、後から何かを言っても無駄に終わる可能性が高いのが実情です。
そういった背景もあって、工事完了後の立ち会いを重視して行う必要があると言えます。工事完了後の立ち会いの時点で不備や不具合を発見することができれば、手直しをする対象と見なされます。
したがって、工事完了後の立ち会いにおいては隅々まで入念にチェックすることを意識して、納得のいく仕上がりになっているのかどうか厳しい目で確認することが大切です。施主によっては「解体業者に手間を取らせるのは申し訳ない」、「時間的に早く終わらせた方が良いかもしれない」などと遠慮がちな姿勢を見せてしまうことがあります。
しかし、そういった姿勢では施主が後悔することになります。本当に何の瑕疵もなければ問題ありませんが、後になって瑕疵が見つかった場合に、もっとしっかり確認しておけば良かったとなるからです。
解体業者は家屋や建物を解体するだけでなく、瑕疵の原因を取り除くところまでが仕事であり求められる責任です。施主としては契約通りの工事を行ってもらうという約束に対してお金を支払っているのであり、全く遠慮などをする必要はありません。
何か不安な点や疑問点があれば立ち会いの際に確認するようにすることが重要です。聞きそびれて放置してしまい、後になってから不備や不具合が発覚しても手遅れになることがあるので注意が必要です。
工事後に瑕疵が見つかった場合
工事完了後の立ち会いの重要性を意識して、入念にチェックを行ったとしてもその場では瑕疵が見つからず、工事後に瑕疵が見つかるケースもあります。基本的に解体工事の場合は瑕疵担保保証がついていないので、工事後に瑕疵が見つかったとしても解体業者に手直しをする義務はありません。
施主としても、それが本当に解体工事の影響で発生した不備や不具合なのか証明することは難しいでしょう。しかし、だからと言って簡単にあきらめる必要はありません。工事後に瑕疵が見つかった場合でも手直ししてもらえる可能性は低いですが、解体業者によっては対応してくれることがあります。
中には自らの非を認めたり、施主の気持ちを尊重したりして善意で手直しに応じてくれるケースもあります。可能性としては高くありませんが、工事後に瑕疵が見つかった場合もまずは解体業者に相談してみることがおすすめです。解体業者が対応してくれない場合でも、何か他のアドバイスをしてくれることがあるので問い合わせてみると良いでしょう。
土地の売買と瑕疵担保責任
ここからは、土地の売買と瑕疵担保責任の関係について取り上げていきます。新築工事や外構工事、解体工事の際も関連してくる瑕疵担保責任ですが、同様に土地の売買を行う場合も瑕疵担保責任が関係してきます。
地中には建築廃材と呼ばれるものが埋め込まれていることがあり、その影響で地価に影響が及ぶことがあります。また、購入した土地に何らかの問題があって新築物件を建てられないなどの弊害が生じた際に買主を保証するという意味でも、瑕疵担保責任が設定されています。その他のケースも含めて、土地の売買と瑕疵担保責任の考え方について確認していきましょう。
建築廃材に含まれている主な物
まずは、建築廃材に含まれている主な物について確認していきます。解体工事が行われた現場などでは、工事の際に出た廃材が地中に埋め込まれている可能性があります。建築工事の場合も同様で、不要になった廃材を地中に埋め込んでしまうというケースも珍しくありません。現在では法律で厳しく規制されていますが、かつては不法投棄をする業者もありました。
そういった影響で地中にごみや建築廃材が埋め込まれていることもあり、地盤に影響が出てくることもあります。建築廃材に含まれる主な物としては以下が挙げられます。
- コンクリート塊
- アスファルト・コンクリート塊
- 木材
- 紙くず
- 汚泥
- 金属くず
- ガラスくず
- 陶器くず
少量の建築廃材だけであれば一般的なごみとして処理することもできますが、上記のような建築廃材が大量に埋め込まれている場合は、廃棄物として然るべき対応をする必要があります。買主としては、地中に建築廃材が埋まっていることを確認した段階で写真や動画に収めておくことが大切です。
建築廃材の状況証拠をしっかりと記録しておき、解体業者や不動産会社に連絡を入れることです。不動産売買や土地の売買においては瑕疵担保責任が存在するので、基本的に買主が不利になるようなことはありません。自ら判断するのではなく、まずは契約している業者に連絡を入れることがポイントです。
売主が買主に対して負う責任
土地の売買においては、売主が買主に対して瑕疵担保責任を負うことになります。たとえ売主が気づかないまま土地を販売した場合であっても、契約時の段階ですでに欠陥や不具合があったことが確実であれば売主が買主に対して瑕疵担保責任を負う必要が出てきます。
売主が買主に対して責任を負う期間としては、買主が瑕疵の事実を知ってから1年以内となります。また、売主が不動産会社である場合は引き渡し日から2年以内と定められています。この期間内に瑕疵が見つかった場合、売主としては瑕疵担保責任を全うする必要があります。
具体的には、瑕疵の修復や損害金の支払いなどを行うことになります。損害金の支払いに関しては、その瑕疵によって損害や不利益が生じたことが明らかである場合に売主の責任で行う必要があります。
基本的に、土地の売買に関しては買主が法律によって手厚く保護されています。買主としては瑕疵担保責任があるので安心して土地を購入することができますし、反対に売主としては売却前に埋設物がないか確認しておく必要があります。
自らが土地を売る側に回った場合は、事前に必ず確認しておくようにしましょう。万一、建築廃材などの埋設物が見つかった場合、売主が瑕疵担保責任を負うことになるので注意が必要です。
中古住宅付き土地を更地にして購入した場合
中古住宅付き土地を更地にして購入した場合の考え方についても確認していきます。住宅の新築を検討している方の中には、中古住宅が建っている土地を「更地引き渡し条件」付きで購入するというケースがあります。
こうしたケースで新築時に何らかの不備や不具合が見つかった場合、売主に対して土地の瑕疵担保保証責任を求めることができます。中古物件が建っている場合、更地にしないと地中の様子を確認することができません。更地になった段階で地中から建築廃材などが見つかった場合は、通常の土地の売買と同様に売主が瑕疵担保責任を負うことになります。
万一、地中埋設物を発見した場合は、土地の売主に直接相談するか仲介業者である不動産会社に相談することがおすすめです。
個人売主からの土地購入は要注意
土地の売買と瑕疵担保責任の関係について、注意しておきたい部分もあります。それは個人売主から土地を購入した場合です。民法上の規定では、買主が瑕疵を知った時から1年以内の瑕疵担保責任が定められていますが、売主が個人の場合、当事者同士の合意によって瑕疵担保責任の期間を変更することが可能となっています。
一般的には2ヶ月から3ヶ月程度で契約を結ぶケースも多く、契約期間が過ぎた後に問題が発覚したとしても売主に対応してもらうことは難しくなります。そうなると、瑕疵を取り除くための工事や作業に関しては買主の自己負担となってしまうので注意が必要です。
契約時に瑕疵担保責任を負う期間をなるべく長くしてもらうように交渉することも大切なポイントです。売主としては少しでも短くしたいと考えますし、反対に買主としてはできるだけ長い瑕疵担保責任期間を設定したいと考えることでしょう。
不動産業者などから土地を購入する場合は、瑕疵を知った時から1年以内であれば手直しをしてもらうことができます。個人売主の場合は売買契約書に記載されている内容が有効となるので、意識的に確認することが重要です。
参考リンク:底地買取専門・借地権トラブル解消|株式会社ニーズ・プラス
瑕疵担保のポイント
ここからは、瑕疵担保のポイントについて解説を行っていきます。解体工事の際も業者側に瑕疵担保責任が問われることがありますが、施主としてもポイントを把握してできることを行っておく必要があります。
解体工事後に何らかの不備や不具合が見つかったとしても、何も行動したり質問したりしなければ施主が泣き寝入りすることになってしまいます。施主が実際にできることとしては、契約書の内容を確認することやトラブルが生じた場合の対策を確認することなどが挙げられます。
瑕疵担保に関しては裁判になることもあります。そうした1つ1つのポイントについて理解を深めていきましょう。
契約書の内容を要チェック
まず、瑕疵担保のポイントとして契約書の内容をしっかりと確認することが挙げられます。解体工事の契約を結ぶ場合、地中に廃材が見つかった時の対応や廃材の処理に関する方法、多額の費用がかかった場合の補償内容などについて契約書に記載してもらいます。
現地調査などを行った時に口頭で説明してもらうこともありますが、最終的には必ず契約書に記載してもらうことが重要です。書面による証拠が残っていないと、後で問題が発生した時に正当に交渉することができません。口頭での約束だけでは「言った言わない」問題に発展するだけであり、結局は施主が泣き寝入りすることになってしまいます。
解体工事を行う場合、解体業者には瑕疵担保責任が問われることになり、その内容を契約書に明記することが求められます。万一、瑕疵担保責任に関する記載がない場合、施主としては契約を結ぶ前に必ず確認することが大切です。
トラブルが生じた場合の対策を確認
瑕疵担保のポイントとして、トラブルが生じた場合の対策を確認しておくことも挙げられます。契約書の内容をしっかり確認することと関連しますが、何らかのトラブルが発生した場合に業者がどのように対応してくれるのか事前に擦り合わせておくことが重要です。
例えば、「契約時と異なる状況になった場合の保証を明確にして欲しい」などと伝え、その対策を書面で提示してもらうといった方法を挙げることができます。こちらも口頭での約束ではなく、書面に記載してもらうことがポイントです。
トラブルが生じた場合の対策を一切話し合わず、そのまま工事を開始してしまった場合、万一、不備や不具合が生じても施主は何の交渉の手段もないことになります。善意で解体業者が対応に応じてくれる可能性はありますが、何の手直しをしなかったとしても解体業者に非はありません。
だからこそ、契約前にトラブルが生じた場合の対策を確認することが大切だと言えます。それは施主自身を守ることにもつながり、万一の際の経済的な負担を緩和することにもつながります。「これを言ったらどう思われるだろうか」、「業者に手間を取らせるのは不憫だな」などと考える必要はありません。施主を守るための手段として、事前に確認しておくべきことは徹底的に確認するようにしましょう。
裁判になることも
瑕疵担保のポイントについて紹介していますが、、土地の売買で瑕疵が見つかった場合は裁判になることもあるという点を挙げることができます。特に買主が購入した土地の地中から埋設物を発見した場合に、誰がその処分費用を支払うのかによって裁判になることも珍しくありません。
基本的にはそれまでの土地の所有者であった売主が瑕疵担保責任を負うことになり、売主の責任で地中埋設物の撤去を行わなければなりません。売買契約を結んだ時点で、地中埋設物が発見された場合に売主と買主のどちらが負担するのかはっきりと明記しておけば、その内容が優先されます。
しかし、そうした特約事項がない場合、どちらが処分費用の支払いを行うのかで揉めることがあります。買主が埋設物があることを知ってから1年以内で、なおかつ売買契約から10年以内であれば売主に対して瑕疵担保責任を問うことができるようになっています。
埋設物が見つかった時点で、買主としてはその状況証拠を残しておくことが大切です。一番良いのは売主の立ち会いのもとで埋設物の確認をすることですが、お互いの都合がつかないこともあります。その場合は写真や動画に残しておき、撤去作業を進めてもらうことになります。現場の作業者は早く撤去したいという気持ちがあるので、いつまでも売主の都合を優先させるわけにはいきません。
裁判になることを想定した場合、必ず証拠を残しておくことが大切です。
瑕疵に当たらないと判断されることもある
土地の売買において地中から埋設物が見つかった場合、裁判になることもありますが、その中で瑕疵に当たらないと判断されることもあります。地中埋設物に関しては基本的に売主の責任で事前に撤去しておく必要があるものです。しかし、地中に土以外の異物が存在していても、買主に対して特に不利益を与えるものでなければ、瑕疵には当たらないと判断されることがあります。
例えば、地中埋設物があることによって地盤が不安定になって家を建てることができないといった具体的な被害がある時は、売主に瑕疵担保責任が生じることになります。一方で、ちょっとしたごみや建築廃材などが見つかっただけで、新築物件の建築に影響はないと判断された場合は売主の瑕疵は認められません。
埋設物の状況にもよりますが、埋設物の影響で買主はどういった被害を被ることになるのかという点が争点となります。そのため、地中に異物や埋設物が見つかったからと言って、すぐに裁判を起こそうとするのは早計です。土地の買主としてもどういった影響があるのかどうか確認しつつ、その後の行動につなげることがポイントです。
まとめ
解体工事と瑕疵担保の関係に注目をして、具体的に解説を行ってきました。建設工事の場合は瑕疵担保保証まで生じることがありますが、解体工事の場合は瑕疵担保保証が生じることは少ないと理解しておくことが大切です。そのため、解体工事の場合は工事完了後の立ち会いがとても重要であり、その場で瑕疵がないかどうか入念にチェックする必要があります。
解体工事完了後しばらく経ってから不備や不具合を見つけても、解体業者がそれを手直しする責任はありません。善意で対応に応じてくれる可能性はありますが、何もしてくれなかったとしても施主としてはどうしようもありません。改めて瑕疵担保責任や瑕疵担保保証の違いを理解しておき、当事者となった場合は然るべき行動を取れるようにしておきましょう。