解体工事の際の騒音振動問題とは?騒音や振動のクレーム対策も紹介!

解体工事の際の騒音振動問題とは?騒音や振動のクレーム対策も紹介!

解体工事の際に発生する騒音や振動について、問題になることはないのか疑問に思う方もいるでしょう。そこで今回は、解体工事の騒音振動問題に焦点を当てて解説を行っていきます。騒音や振動の発生を規制する法律として、騒音規制法や振動規制法といったものも制定されています。法律の中身の確認や特定建設作業とは何かといったところまで解説を行います。その他、騒音や振動の発生によってクレームを受けた場合の対策もご紹介していきます。合わせて騒音や振動を減らす方法も取り上げていきますので、どうぞ参考にしてください。

解体工事の際の騒音振動問題

それでは早速、解体工事の際の騒音振動問題について確認していきます。家屋や建物の解体工事を行う際は、くい打機やびょう打機の使用など、どうしても騒音や振動が発生してしまうことがあります。近隣住民や通行人としては仕方のないことだと割り切ることも必要ですが、どうしても我慢ならないこともあるでしょう。

近隣住民や通行人たちの我慢やストレスの限界を超えてくると、クレームやトラブルの発生につながりかねません。そこで制定されたのが騒音規制法や振動規制法といった法律です。騒音や振動の基準と合わせて、法律の概要を確認していきましょう。

騒音や振動の基準とレベル

解体工事において騒音や振動が発生してしまうのは止むを得ない部分もありますが、どこまでも大きな音を出したり振動させたりして良いというわけではありません。後ほどご紹介しますが、騒音規制法では解体工事で出して良い騒音レベルを85デシベルまでと定めています。

また、振動に関しては振動規制法で75デシベルまでが許容範囲として定められています。それぞれの数値を超えると行政から指導を受ける対象となります。85デシベルや75デシベルといった数値について、日常生活に感じる音の大きさと比較してみます。

  • 70デシベル:ステレオの音、騒々しい音
  • 80デシベル:地下鉄の車内、ピアノの音(正面1mで聞いた場合)
  • 90デシベル:カラオケボックスの客席
  • 100デシベル:電車が通過するガード下

上記の状態に該当するのが、70デシベルから100デシベルに関してです。したがって、75デシベルや85デシベルというのはかなり不快に思う人もいるレベルであり、日常生活の中で同じ状態が続くことにストレスを感じる人も多いでしょう。

解体工事でも相当大きな音がなることがありますが、解体業者としても一定の基準値を超えないように注意を払う必要があります。

騒音規制法とは?

解体工事で発生する騒音や振動については仕方のないものであると理解されることもある一方で、法律によって規制されている部分もあります。まずは、騒音規制法とは何か確認していきましょう。

騒音規制法

工場及び事業場における事業活動や建設工事に伴って発生する騒音について必要な規制を行うことにより、生活環境を保全し、国民の健康の保護に資することを目的として制定された法律。

家屋や建物を解体する際には、くい打機やびょう打機をはじめとして、さまざまな重機を使いながら工事を行うことになります。騒音規制法では、解体工事による著しい騒音の発生する作業を規制することで近隣住民や通行人たちの安全や安心を担保しています。

具体的には騒音の大きさや作業を行える時間帯、日数や曜日等の基準を定めており、解体業者としては、その基準内で工事を行う必要があります。例えば、住宅地では連続して工事できる日数が6日までと定められており、週1日は必ず休日を設けることが求められています。

基準が守られない場合は、市町村長が解体業者に対して改善勧告等を行うことができます。

振動規制法とは?

続いては、振動規制法とは何かという部分について確認していきます。

振動規制法

工場及び事業場における事業活動や建設工事に伴って発生する振動について必要な規制を行うとともに、生活環境を保全し、国民の健康の保護に資することを目的として制定された法律。

振動規制法も、基本的には騒音規制法と同じような考え方をすることができます。解体工事によって発生する振動によって住民の方の安全や安心が脅かされないようにするために、一定の基準を設けた法律となっています。

具体的には振動の大きさや作業時間帯、作業日数や曜日等の基準を設定しており、解体業者はそれらの基準を守った上で工事を行う必要があります。騒音規制法の場合と同様に、基準に従わずに工事を続けている場合は市町村長が改善勧告等を行うことができるようになっています。

特定建設作業とは?

騒音規制法や振動規制法に関しては、特定建設作業と呼ばれる作業に対して一定の規制がかけられます。その特定建設作業とは何かという部分について確認していきます。

特定建設作業とは、著しい騒音が出がちが機械や道具を使う現場作業について一定のパターン化をして定めているものです。全ての工事に該当するわけではなく、特定の機械や道具を使うというところにポイントがあります。特定建設作業に該当するものとして、具体的には以下のような機械や作業を挙げることができます。

  • くい打機:くい打機やくい打くい抜機を使う作業。もんけんと呼ばれる手動式のくい打ち道具は除く。
  • びょう打機:びょう打機を使用する作業。
  • さく岩機:1日における当該作業にかかる2地点間の最大距離が50mを超えない作業に限る。
  • 空気圧縮機:電動機以外の原動機を用いるもので、原動機の定格出力が15キロワット以上のものに限る。
  • コンクリートプラントを用いる作業:混練機の混練容量が0.45㎥以上のものに限る。
  • アスファルトプラントを用いる作業:混練機の混練重量が200キログラム以上のものに限る。
  • バックホウを使用する作業:原動機の定格出力が80キロワット以上のものに限る。油圧ショベルカー、ユンボと呼ばれる建設機械がバックホウに該当。
  • トラクターショベルを使用する作業:原動機の定格出力が70キロワット以上のものに限る。
  • ブルドーザーを使用する作業:原動機の定格出力が40キロワット以上のものに限る。

上記の機械を使用する作業が特定建設作業と定められており、騒音規制法や振動規制法の対象となっています。上記の機械や条件を満たさないものに関しては、原則として規制法の対象とはなりませんが、それでも自由に騒音や振動を発生させても良いということではありません。

近隣住民や通行人の方にご迷惑をお掛けしないことを念頭においた上で、第三者に配慮しながら工事を行う必要があります。

解体工事を行える時間帯

騒音規制法で定められている解体工事を行える時間帯についても確認していきます。解体工事は早朝や深夜でも行えるものではなく、法律によって定められている時間内に行う必要があります。それが以下の時間帯となります。

区域 時間帯 1日の作業時間 日数
第1号区域(住宅地・商業地) 午前7時~午後7時 10時間以内 連続6日間まで
第2号区域(工業地域) 午前6時~午後10時 14時間以内 連続6日間まで

上記の表のような形で、解体工事を行える時間帯が定められています。住民があまり多くない工業地域に関しては、午前6時から午後10時まで工事を行うことができます。一方で、住宅地や商業地など、第1号区域に指定されている地域では、午前7時から午後7時までが指定作業時間帯となります。

また、1日の作業時間は10時間以内と定められているため、午前7時に工事を開始した場合は午後5時までに作業を終える必要があります。解体業者の中には地域住民に配慮して、午前9時から午後6時までなど、なるべく早朝と夜の時間帯に作業が被らないように配慮する業者もあります。

いずれにしても、いつでも工事を行って良いというわけではありません。解体業者や施主としては騒音規制法で定められている規定を遵守しながら、安全に工事を進めていく必要があります。

騒音や振動の基準値

ここからは、騒音や振動の基準値に焦点を当てて解説を進めていきます。騒音規制法や振動規制法といった法律があることをご紹介しましたが、解体業者としては一定の基準値を超えないように作業を進める必要があります。騒音や振動の上限に関しては、「環境大臣の定める基準」とされていますが、改めて整理しておくと、以下の基準となります。

  • 騒音の上限:85デシベルまで
  • 振動の上限:75デシベルまで

その他、地域によって条例で騒音の基準値を定めているケースもありますが、基本的には法令で定められている上記の基準値とそれほど変わりありません。基準値を超えた場合の対応などを含めて、さらに理解を深めていきましょう。

基準値を超えた場合

騒音に関しては85デシベル、振動に関しては75デシベルという基準が定められていますが、この基準値を上回ってしまった場合はどうなるのでしょうか。常時基準値を超えて作業を継続している場合は、市町村長からの改善勧告等を受けることがありますが、一時的に基準値を超えている程度であれば、何か問題が生じることはそれほど多くありません。

そもそも、解体工事は大型の重機を使って作業を行っているため、重機が出力を上げた際に瞬間的に基準値を超えるような騒音や振動が発生することもあります。その度に改善勧告を行っているときりがないので、多少の数値オーバーは見逃されるケースがほとんどです。

作業中に一瞬でも基準値を超える騒音や振動が発生した場合、すぐに違法なのではないかと思う方もいますが、ただちに違法な行為だと判断するのは難しいと考えておいた方が良いでしょう。恒常的に基準値を上回っている場合は別ですが、一時的なものであれば第三者側が我慢する必要があると判断されることが一般的です。

受忍限度とは?

騒音や振動の基準値に関して、受忍限度という言葉についても理解しておきたいところです。

受忍限度

「人が一般的な社会生活を送る上で、我慢できる限度を超えているかどうか」の判断基準となるもの。

受忍限度に関しては、具体的に何デシベルまでという基準があるわけではありません。そのため、抽象的な部分もあると考えることができますが、裁判になった場合は通常の社会生活を送っていく上で

我慢できる範囲であるか否かが重視されます。

解体工事に関して言えば、一般的には日中の時間帯に作業が行われ、戸建ての解体であれば数日程度で工事が終わることも少なくありません。そうした場合、たとえ基準値を超えるような騒音や振動が発生しても、「社会生活を送る上で我慢できない」と認定されることは難しくなります。

ビル解体やマンション解体のように、長期間にわたって基準値を超える振動や騒音が発生する場合は別ですが、規定に則って作業を行っている解体工事に関して、受忍限度を超えていると判断されるのは稀なケースです。近隣住民や通行人としてはストレスを感じる部分もあるでしょうが、この受忍限度を意識することで冷静になることも大切です。

騒音や振動のクレーム対策

ここからは、解体工事の際に発生する騒音や振動へのクレーム対策についてご紹介していきます。解体工事で騒音や振動が発生するのは止むを得ない部分もあり、近隣住民の方には一定程度我慢してもらう必要があります。それでも発生してしまうのがクレームやトラブルであり、最初から完全に防ぎ切ることは難しいと考えておくことが賢明です。

解体工事においてトラブルやクレームはつきものだと考えておき、発生した場合の対策を頭に入れておくことが有効です。それぞれのケースに合わせて、有効なクレーム対策について確認していきましょう。

事前の挨拶を欠かさない

まず有効なクレーム対策として挙げられるのが、事前の挨拶です。解体工事を開始する前に、通常は解体業者が主導して近隣住民への事前挨拶を行ってくれます。この時にできるだけ施主も一緒に各家庭を回ることで、近隣の方に対して誠意を見せることができます。

事前に挨拶に伺ったからと言って100%クレームを防ぐことができるわけではありません。それでも、挨拶をせずに工事を開始した場合と比べて、近隣住民の方が工事に協力しようと思う気持ちに多少の変化は出てくるでしょう。解体工事への理解と協力を得るという意味でも、事前の挨拶を欠かさずに行うことが大切です。

挨拶に伺う際は、工事日程や問い合わせ先などを記載した挨拶状と簡単な粗品を持っていくと、気持ちを伝えやすくなります。粗品に関してはお菓子やタオル、石けんや洗剤といったもので構いません。何も持っていかなくても問題ありませんが、余裕があれば用意しておくことがおすすめです。

万一クレームが発生した場合でも、一度顔を合わせておくことによってクレームの度合いを抑えられることがあります。解体工事を少しでもスムーズに進めていくために、施主としてできることはやっておきましょう。

早めの事情説明

事前に近隣挨拶に伺っていたとしても、どうしても発生してしまうのがトラブルやクレームといった問題です。トラブルやクレームが発生した場合は、とにかく早め早めに対応することがポイントです。時間が経てば経つほど、住民の方のストレスも高まっていき、本来の問題とは関係ないところまで指摘される可能性が出てきます。

工事中のクレームに関しては、解体業者の作業員が対応してくれることがほとんどです。それでクレームが収まれば問題ありませんが、それでも収まらない場合は施主が直接対応した方が良いケースもあります。工事の専門的な知識やスキルの部分については解体業者に任せるしかありませんが、それ以外の部分については施主が対応できることもあります。

一番良くないのは、クレームを受けているにも関わらずそのまま放置してしまうことです。そうした対応を続けていると、近隣住民の間で良からぬ噂が広まってクレームが拡大してしまう恐れがあります。

クレームを受けた場合は早めの事情説明をすることを意識しておきましょう。また、相手の話をよく聞くことも重要です。相手の話を聞いてあげることで、それがストレス軽減につながっていくこともあります。自分たちの言い分だけを伝えるのではなく、相手が抱えている悩みやストレスを吐き出させてあげることも意識すると良いでしょう。

解体工事の中断を求められた場合

クレームやトラブルが拡大していくと、解体工事の中断を求められることもあります。ここでは解体工事の中断を求められた場合の対応について確認していきます。結論から申し上げると、解体工事の中断を要求されても、安易に工事を中断しないようにすることが重要です。と言うよりも、近隣住民からのクレームで工事を中断するような事態は避けなければなりません。

一度、近隣住民からの要求で工事を中断してしまうと、次に何か問題が発生した時に再び工事を中断しなければならないという事態になってしまいます。それでは、工事が思うように進まず、解体スケジュールに悪影響を及ぼしてしまう可能性が出てきます。

解体業者が工事を中断しなければならないのは、裁判所から工事の差し止めを伝えられた場合です。通常、そこまで事態が悪化することはほとんどありません。受忍限度の箇所でも取り上げましたが、多少騒音や振動の基準値を上回ったぐらいでは、工事の差し止めを求めるような判決が出ることはありません。

そもそも、近隣住民が「裁判所に解体工事の差し止めを申し立てる」と主張してきても動じる必要はありません。多くの場合、工事差し止めの申し立てをしている間に解体工事が完了してしまうからです。

そういった意味で、住民からのクレームや要求を必要以上に重く受け止めなくてもそれほど大きな問題はありません。それでも、何もしなくても良いというわけではないので注意が必要です。

解体した現場に新築物件を建て直すという場合、施主としてはその場所に留まり続けることになるので近隣住民との関係悪化は避けたいところです。その場合は、近隣住民が言っているクレームを受け付けつつ、妥協案を提示することが重要です。

例えば、防音性能の高いシートに変えて騒音を減らすといったことを提示するのも1つの選択肢です。近隣住民からのクレームを重く受け止め過ぎる必要はありませんが、何とか改善しようと努力している姿勢を見せることがポイントです。

金銭を要求された場合

さらに近隣住民からのクレームがエスカレートしていくと、金銭を要求されるというような事態が発生することもあります。この場合も、解体業者や施主としては要求に応じる必要はありません。裁判所が下した判決である場合は、その判決に従う必要がありますが、一個人の主張に応じる義務はないと考えておいて良いでしょう。

社会通念上、解体工事で騒音や振動が発生することは仕方のないことだと理解されており、基本的には解体業者や施主側が守られることが多いです。そもそも解体工事によって慰謝料の支払いが必要になるほど、隣家や近隣住民の生活に影響を及ぼすようなことはほとんどありません。

例えば、法律の規制を守らずに深夜に工事を行っていた場合などは別ですが、通常の作業時間帯で通常の工事を行っていたのであれば、近隣住民の訴えが認められることは多くありません。

当然、金銭の要求に応じる必要もなく、場合によっては恐喝容疑でクレームをしてきた側が罪に問われる可能性もあります。あまりにもクレームがしつこい場合は、警察や弁護士に相談するなどして、専門的な知見から対応を任せることがおすすめです。

隣家が損傷した場合

ここでは、解体工事によって隣家が損傷した場合の対応について確認していきます。住宅密集地などで解体工事を行う場合、工事によって生じた廃材が飛来して隣家を損傷させるといった事態になることがあります。同様に、解体工事で生じた振動の影響で、隣家が損傷するというケースも散見されます。

明らかに解体工事の影響で隣家を損傷させたと証明できる場合は、解体業者側に否があることは間違いありません。その場合は、解体業者が損害賠償を支払ったり、補修工事を行ったりして隣家の被害に対応することになります。

一方で、解体工事の影響で隣家が損傷したのかどうか判断がつかないこともあります。例えば、振動の影響で隣家に傷がついたり何らかの被害が生じた場合などは難しい状況となります。

隣家が古い建物であった場合、もともと傷んでいたのか、それとも本当に解体工事の振動によって損傷したのか区別できないことがあります。一般的な建物であれば影響が出ない程度の振動であるにも関わらず、隣家が古い建物であったために影響が出るということも考えられます。

その場合、全てが解体業者の責任ということになると、業者側としては不合理に感じることもあるでしょう。この辺は両者の話し合いが必要であり、損害賠償請求や補修工事の必要性を巡って紛争になることもあります。

解体工事の影響を慎重に判断

解体工事の影響で隣家が損傷した場合は、解体工事との関連を慎重に判断する必要があります。最終的には裁判になることもありますが、事前の段階で、家屋調査をしておくことも有効です。特に隣家が古い建物の場合、解体工事前の建物の状況を記録しておき、本当に解体工事による影響なのかどうか客観的に判別できるようにしておくのです。

そうすることで、解体業者側の主張も正当に認めてもらいやすくなります。隣家が新築物件や比較的築年数の浅い物件であればそこまでやる必要もありませんが、古い建物の場合は家屋調査をしておくことがおすすめです。

また、解体する建物が鉄筋コンクリート製の建物である場合は、家屋調査をしておくのが有効です。ビルやマンションなど、鉄筋コンクリート製の建物を解体する際は、よりパワーのある重機を使用することが多くなるため、隣家への影響が出やすくなるためです。

ここまで見てきたように、隣家の損傷については解体工事の影響であることを客観的に証明することが難しい部分もあります。だからこそ、自分たちで安易に判断することなく建築の専門家に指示を仰ぐなど、専門的な知見からその後の対応を検討することが有効です。

騒音被害による裁判例

それでは、実際に解体工事による騒音被害によって発生した裁判例についてご紹介します。この裁判では、原告が工事現場の近隣住民、被告が建築土木等建設工事の請負会社となりました。実際の判決としては、以下のような裁定が下されました。

  • 被告は原告らに約165万円の支払うこと
  • 支払い済みまで年5分の割合を支払うこと
  • 訴訟費用の5分の1を被告側が負担

上記のような判決が下されたわけですが、騒音の調査結果としては、最大値が100デシベル、振動は90デシベルを超えていたとのことです。原告となる近隣住民からは、適切な工法を取っていないことや、工事による騒音について、基準値を超える日数が測定日のかなりの割合を占めていることなどを訴える声が上がりました。

また、振動に関しても最大で90デシベルを超えており、恒常的に基準値を超える騒音や振動が発生していると訴えました。実際に、近隣住民の1人は振動の影響で動悸がひどくなり、医師から虚血性心疾患との診断を受ける事態になりました。その他にも解体工事の影響で体調を崩す人が出るなど、平穏な日常生活が保たれていないことを主張しています。

また、近隣の住居には振動の影響とみられる損傷が多数出ており、その補修費用の支払いも求める訴えとなりました。

被告側である工事業者としては、、騒音及び振動の軽減措置を講じ、近隣住民に十分に配慮して解体工事を行っていると主張しており、双方の意見は真っ向から対立する形となりました。また、近隣住居の損傷についても、解体工事との因果関係は認められないと主張しています。

こうした双方の主張に対して、裁判所では騒音や振動の測定結果を重視し、数字間は大きな騒音や振動が発生していたことを認めています。その結果として、近隣住民の方に精神的、肉体的苦痛を与えたことは間違いなく、上記のような判決を下しました。

騒音や振動被害による訴えが認められるケースはそれほど多くありませんが、受忍限度を超えて日常生活に支障が出ると認められた場合に関しては、近隣住民側の訴えが認められることもあるということです。解体業者や施主としてはこうした裁判例があることも意識しつつ、慎重に工事を進めていくことが大切です。

騒音や振動のクレームを伝える相手

ここからは、騒音や振動のクレームを伝える相手について確認していきます。解体工事現場近くに住んでいる場合、第三者として解体工事に関わることになります。解体工事に伴って発生する騒音や振動に悩まされなければ問題ありませんが、どうしてもストレスを抱えてしまうこともあるでしょう。

そうした状況に陥った場合に、具体的にどういった対応を取れば良いのか知っておくことも大切です。騒音や振動のストレスを感じた場合に、誰にクレームを伝えれば良いのかについて理解を深めていきましょう。

まずは施主に伝える

解体工事で発生する騒音や振動にストレスを感じた場合、まずは施主に伝えることが重要です。騒音や振動の発生を減らしたり、できるだけなくしたりするためには、業者に工法を変えてもらう必要があります。あるいは、養生シートや防音シートをより強固なものに変えてもらうなど、いずれにしても業者側の協力を促す必要があります。

その場合でも、直接業者にクレームを言うのではなく、まずは施主に伝えることが効果的です。と言うのも、解体業者にとっての一番のお客様は工事を依頼してきた施主であり、近隣住民ではありません。

そのため、お客様である施主の言うことに対しては業者側も耳を傾けてくれる可能性が高くなるのです。施主に騒音や振動のことでストレスを抱えていると伝えることで、施主から業者に対して改善を促してもらうことが有効です。

施主も解体工事前に挨拶に来ている場合であれば、直接コミュニケーションを取ることも難しくないでしょう。まずは施主に状況を伝えて、解体業者に悩みを伝えてもらうことで状況が改善されるのを待つことがおすすめです。

業者へのクレームは避ける

解体工事中の苦情やクレームに関しては、解体業者に直接伝えたくなるという方もいるでしょう。しかし、業者に対しての直接のクレームは避けておいた方が良いです。上記でも触れましたが、解体業者にとっての直接のお客様は施主であり、苦情やクレームを言ってくる方ではありません。

そのため、何かクレームを伝えたとしても軽く受け流されてしまうことが多く、真摯に対応してくれない可能性が高くなります。今では少なくなってきましたが、場合によっては堅気ではないような人たちが営業している解体業者もあります。そういった業者に直接クレームを言ってしまうと、後で何をされるかわかりません。

そうしたリスクを犯してまで直接業者と向き合うことはおすすめできません。まずは、施主にクレームを伝えて、施主から解体業者の方に伝えてもらうようにしましょう。

最後は役所への相談

苦情やクレームを施主に伝えて、施主から解体業者に伝えてもらった場合でもなかなか状況が改善されないことがあります。その場合の最終手段としては、役所への相談を挙げることができます。最初にもお伝えしましたが、騒音に関しては85デシベル、振動に関しては75デシベルを超えて工事を続けることは違法とされています。

そうした騒音や振動が発生しているにも関わらず、業者が対応してくれない場合は、役所へ連絡を入れて対応してもらうことが有効です。騒音や振動が基準値を超えていることを証明できれば、法的な根拠を元にして、行政として解体業者に指導をしてくれます。

それでも状況が改善されなければ、工事差し止めや裁判といった展開に発展していきますが、いずれにしても役所に相談して対応してもらうことがポイントです。

スマホアプリの活用

騒音や振動に関して、その場にいるだけではなかなか具体的な数値がわからないこともあります。そこでおすすめなのがスマホアプリの活用です。

スマホアプリの中には、「デシベルメーター」や「騒音計測メーター」といったアプリが用意されており、それらのアプリを使うことで、具体的な騒音数値を測定することができます。App StoreやGoogle playで「デシベル」と検索すれば、該当のアプリを入手することができます。

役所に相談する場合など、数値に関する客観的な証拠が欲しい際に利用すると便利です。

騒音調査会社の活用

騒音に関する悩みやストレスを抱えた場合、スマホアプリなどを活用して自ら行動することもできますが、なかなかそこまで行動できないという方もいるでしょう。そういったケースでおすすめなのが、騒音調査会社の活用です。

同じような音であっても、苦痛に感じる人もいれば特に気にならないという方もいます。そこで、明確な基準として定められているのが75デシベルや85デシベルといった基準値であり、その基準値を超えて工事を続けることは原則としてできません。

きちんと騒音の調査を依頼して白黒つけたいというのであれば、騒音調査会社に依頼することが有効です。騒音調査会社であれば、専門の機械を使って正確な数値を計測してくれます。万一、基準値を上回っていた場合、その後のスムーズな対応をお願いするという意味でも、騒音調査会社の利用を検討してみることがおすすめです。

騒音や振動を減らす方法

ここからは、騒音や振動を減らす方法についてご紹介していきます。解体工事を行う解体業者や施主としては、できれば何のトラブルやクレームもなく工事を終えられることが一番です。そのために自分たちでできることがあればやっておいた方が良いでしょう。

最初から大きな音を出したり振動を発生させたりしようと思っている解体業者は多くないはずです。それでもどうしても出てしまうのが騒音や振動であり、できるだけ減らしたいと考えている業者も多いことでしょう。騒音や振動を減らすためにできる具体的な対策について、理解を深めていきましょう。

具体的な対策

まずは、騒音や振動を減らすためにできる具体的な対策について確認していきます。騒音や振動を減らすという意味では、養生シートや防音シートをより頑丈なものに変えるという選択肢を挙げることができます。

特に騒音に関しては、一般的な養生シートだとなかなか効果的な防音性能を有していないことがあります。その点で、防音性能に優れたシートを活用することで、多少なりとも騒音の発生を防ぎやすくなります。

また、場合によっては工法を変更するということも有効な対策となります。解体工事では重機を使って建物の取り壊し作業をすることが多くなりますが、使用する重機によって、振動や騒音の発生具合が変わっていきます。そのため、できるだけ騒音や振動が小さくなるような機械を使ったり、場合によっては手壊し解体を増やしたりするなどして、対策を取ってもらうことが有効です。

シートの変更や工法の変更に関しては、施主としても経済的な負担が増えるリスクがあります。その辺は解体業者との話し合いが必要となりますが、近隣住民からのクレームが発生した場合などは検討してみることがおすすめです。

作業時間の変更

騒音や振動に関してのクレームが発生した場合は、作業時間の変更を検討してみることも有効です。住宅地や商業地では、午前7時から午後7時まで作業を行うことができますが、実際に午前7時から工事を開始したり、午後7時まで工事を行っていたりするとクレームの発生につながりやすくなります。

近隣住民たちの生活リズムに配慮して、午前9時に工事を開始して午後5時までには終えるといった対策を取っている業者も少なくありません。法律上は問題なかったとしても、自らの独自ルールを設定することで、無用なクレームやトラブルの発生を防ぐことも可能です。

トラブルやクレームを完全に防ぎ切ることは難しいですが、作業時間の変更などを含めて少しずつ改善していくことで、近隣住民からの理解も得やすくなるでしょう。

まとめ

解体工事と騒音振動問題に焦点を当てて、具体的に解説を行ってきました。解体工事に騒音や振動はつきものであり、解体業者と近隣住民をはじめとした第三者が上手く双方が折り合うことも必要とされます。

騒音や振動に関しては、騒音規制法や振動規制法といった法律で規定があることも理解する必要があります。施主や解体業者としてはその規定を守りつつ、適切な形で解体工事を進めていくことが大切です。

解体工事では近隣住民からのクレームが発生することも珍しくありません。無用なトラブルやクレームを発生させないようにするために、施主や解体業者としてできることがあれば確実に実践するようにしましょう。そうすることで、よりスムーズで確実な解体工事を実現することができます。

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