解体工事と建築基準法の関係とは?建築物除却届や建築工事届も紹介!
家屋や建物の解体工事を行う際には、さまざまな法律や規定が関係してくることがあります。その中で今回は建築基準法に注目をして、具体的に解説を行っていきます。建築基準法の考え方を理解した上で、適切に規定を守ることが大切です。それは解体業者のみならず、施主も意識しておきたいところです。また、建築物除却届や建築工事届といった各種届出に関する情報も提供していきます。解体工事に欠かせない考え方として、どうぞ参考にしてください。
解体工事と建築基準法の関係
それでは、解体工事と建築基準法の関係から確認を進めていきます。家屋や建物の解体工事は自由に行って良いというわけではなく、複数の法律や規定を遵守しながら行う必要があります。そのうちの1つとして挙げられるのが建築基準法であり、解体工事を行う上で重要な法律であることは間違いありません。
その他に建設業法の考え方も取り上げていきます。解体業者選びの考え方も含めて、1つ1つの内容に対する理解を深めていきましょう。
建築基準法とは?
建築基準法とは何かという点について、以下の考え方をすることができます。
建築基準法
国民の生命や健康、財産を保護することを目的として、建物や土地に対するルールを決めた法律。都市計画法や消防法といった法律を基盤にしつつ、建物を建築する上で最低限守るべきルールを明確にしたもの。
建築基準法は人々が安全で快適に暮らせるような住環境を整えることを目的として制定され、法律を守ることによって私たちの安全性や快適性が担保されていると考えることができます。
基本的には建物を建てる際に守るべき規定が多い法律ですが、解体工事を行う場合の規定もあります。それが「建築物除却届」の提出です。建物を建てる時も一定の基準やルールを守る必要がありますが、建物を解体する場合にもルールを遵守する必要があります。施主としてもその点を肝に銘じて、解体業者と連携していくことが大切です。
除却届の提出
上記でも触れましたが、建物を解体する場合は建築基準法の規定によって建築物除却届の提出が必要となります。これは建築基準法第15条で定められた規定であり、必ず守ることが求められます。
ただし、除却届を提出する場合には条件があります。それは「建築物の床面積が10㎡を越える場合」という条件です。つまり、床面積が10㎡に満たない場合は除却届を提出する必要がありません。この規定も確実に頭に入れておきたいところです。
床面積の規定を満たす場合は、解体工事を行う施工者が都道府県知事へ届出を行うことになります。
解体する床面積が80㎡以上の場合
解体する建物の床面積が10㎡を超える場合は建築物除却届を提出する必要がありますが、さらに80㎡を超える場合は建設リサイクル法第10条による届出書の提出が必要となります。
建設リサイクル法
特定建設資材にかかる分別解体等及び特定建設資材廃棄物の再資源化等の促進を目的として制定された法律。
解体工事を行う上では建設リサイクル法の規定もしっかりと守る必要があり、分別解体や資材の再資源化といった行動を適切に行うことが求められます。解体対象の建物の床面積が80㎡を超える場合は、工事開始の7日前までに都道府県知事に対して、発注者または施工者が届出を行う必要があります。
委任状を作成すれば、解体工事業登録業者や建設業許可登録業者が代理で届出を行うこともできます。いずれにしても、床面積の広さに応じて提出する書類が変化してくることを理解しておきましょう。
建設業法とは?
建築基準法や建設リサイクル法といった法律以外に、建設業法についても理解を深めておきたいところです。建設業法とは、建設業の営業権に関してのルールや規則を定めている法律のことです。
解体業者として営業できるのは以下の3業種と定められています。
- 建設工事業
- 大工工事業
- とび・土木工事業
建設業法によって解体工事を行える業種が規定されています。ただし、発注金額が500万円を満たさない解体工事に関しては、特に規定があるわけではありません。その代わりに500万円未満の解体工事を行う場合は、建設リサイクル法で規定されている解体工事業者の登録を済ませておく必要があります。
いずれにしても、解体工事を行うためには何らかの許可や登録を受けている必要があるということです。工事を依頼する側としても、きちんとした営業権を持っている業者に依頼することがポイントです。
解体業者選びに注意
上記でも触れたように、解体工事を行えるのは建設業法で規定されている3業種か、解体工事業者の登録を済ませている業者のいずれかとなります。解体工事業登録の場合は、500万円未満の工事しか請け負うことができません。
それ以上高額な解体工事を依頼する場合は、きちんとした営業許可を受けている3業種のいずれかの業者に依頼することがポイントです。
規制やルールの周知が進み、営業権を持っていない解体業者の数は年々少なくなってきています。それでも無許可で営業しようとしたり、登録を済ませていないように工事を行ったりする業者も散見されます。そうした業者に引っ掛かることがないよう、事前に許可を得ているのか確認しつつ、信頼できる業者に工事を依頼することが重要です。
建築物除却届とは?
ここからは、建築物除却届とは何かという部分に焦点を当てて解説を行っていきます。建築物除却届は建築基準法とも関わりがある届出であり、工事の開始前に提出する必要があります。
届出をせずに解体工事を開始すると罰則を受けることになります。法律の規定をしっかりと守る上でも、届出の考え方を理解して適切な対応ができるようにしておきましょう。
届出が必要なケース
建築物除却届の届出が必要なケースとしては、解体する建物の床面積が10㎡を超える場合を挙げることができます。10㎡という床面積が基準であり、それよりも小さい面積であれば届出を行う必要はありません。
届出方法
建築物除却届は建築基準法第15条第1項の規定によって届出が義務付けられています。解体工事を行う前日までに、解体工事を行う業者が建築主事を通して都道府県知事宛てに提出することになります。
不明点や疑問点がある場合は、解体工事や除却工事を行う敷地がある都道府県庁に問い合わせをすることで対応してもらうことができます。基本的には解体業者が主導して届出を行うことになります。
届出の用途
建築物除却届については、統計資料として用いられることになります。国土交通省が主導して統計を作成し、建築物の滅失状況を明らかにして公表しています。
一定期間の間にどのくらいの建物が建てられていて、どのくらいの建物が除却されているのかといった状況を確認することが大きな目的であり、そのために届出を行うことが必要とされています。
罰則規定
届出をせずに解体工事を行った場合は、50万円以下の罰金が科される可能性があります。また、届出をした場合でも、内容に虚偽があった場合も同様の罰則規定が用意されています。期限を守って正しい内容で届出を行うことが重要です。
建築工事届とは?
ここからは、建築工事届とは何かという部分について確認していきます。家屋や建物を取り壊す場合には建築物除却届の提出が必要となりますが、反対に建物を新たに建設する場合に必要となるのが建築工事届です。
こちらも建築物除却届と同様にさまざまな規定が定められています。罰則規定も含めて理解を深めていきましょう。
届出が必要なケース
建築工事届の届出が必要なケースとしては、工事部分の床面積が10㎡を超える建築工事を挙げることができます。具体的には以下のような工事が挙げられます。
- 新築
- 増築
- 改築
- 移転
上記のいずれかの工事で、床面積が10㎡を超える場合に届出を行うことになります。除却届の場合と同様に10㎡という広さが基準であり、それ以下の場合は届出をする必要はありません。
届出方法
届出方法に関しても基本的には除却届の場合と同様です。建築工事を行う建築主が建築主事を通して、都道府県知事に届出を行うことになります。
建築工事届は確認申請書と共に提出することが一般的です。建築基準法や都市計画法などの法律をしっかりと守っているのか確認することなども含めて、審査に時間がかかることがあります。そのため、工事を行うことが決まった段階で早めに届出を出すことがおすすめです。
審査に通らないと工事を開始することができません。また、書類に不備があると再提出が必要とされることもあるので正確性を期すことが大切です。その上で早め早めの提出を心がけると良いでしょう。
届出の用途
建築工事届の用途としても、統計作成の目的で使われることになります。除却届の場合は、一定期間内にどれくらいの建築物が消滅したのかを把握することが目的ですが、建築工事届の場合はどのくらいの建物が新たに建てられたのか把握することが主な目的です。
こちらも国土交通省が主導して資料の作成を行っており、月間や年間の新築件数などを公表しています。また、数値の正確性を担保するために、建築工事届の内容について担当者から問い合わせがあることがあります。
基本的には建築業者が対応することになりますが、聞かれたことにはきちんと回答することが求められます。
罰則規定
建築工事届の届出を怠った場合は、50万円以下の罰金に科せられる可能性があります。この辺も建築物除却届の罰則規定と同様です。虚偽の申告があった場合も50万円以下の罰金に科せられる可能性があるので、指定期間内に正しい届出をすることがポイントです。
まとめ
解体工事と建築基準法の関係に焦点を当てつつ、建築物除却届や建築工事届の概要などもご紹介してきました。1つ1つの法律や規定を理解した上で、適切な行動を取ることが求められます。それが人々の安全で快適な暮らしにつながるのであり、建築基準法の概念を実現するための手段となります。
基本的には建築業者や解体業者が主導して行うことが多くなりますが、施主としても一定のルールや考え方を理解しておく必要があります。工事を依頼する際にはさまざまな法律や規定があることを理解した上で、安全性や快適性を意識できるようにしていきましょう。