解体工事で迷惑料は発生するのか?無用なトラブルを防ぐ方法も紹介!
解体工事を依頼する際に、近隣住民や通行人に対してご迷惑をお掛けすることを不安に思う方もいるでしょう。その際に迷惑料が発生するのではないかと心配される方も少なくありません。そこで今回は、解体工事と迷惑料の関係に焦点を当てて具体的に解説を行っていきます。解体工事の際に迷惑料が発生することはあるのか、迷惑料が発生しそうなトラブルも取り上げていきます。また、迷惑料が発生するようなトラブルを避ける方法についても解説を行います。本記事を参考にして、できるだけ穏便に解体工事を行うことができるようにしていきましょう。
解体工事で迷惑料は発生するのか?
それでは、解体工事で迷惑料が発生することはあるのかというテーマで解説を進めていきます。家屋や建物の解体工事は重機やトラックなどを利用し、道路を使用することも珍しくありません。つまり、解体現場だけで作業を行えるというわけではなく、何らかの形で近隣住民の方や通行人にご迷惑をお掛けすることがあります。
近隣の方たちの理解や協力を得ることも大切ですが、第三者がストレスを感じるとクレームやトラブルの原因につながることがあります。そこで問題になってくるのが迷惑料が生じる可能性についてです。実際に迷惑料を支払うような必要はあるのかどうかを含めて、理解を深めていきましょう。
迷惑料を支払うケースは稀
まず、結論から申し上げると、解体工事で迷惑料を支払うケースは稀だと考えておいて問題ありません。絶対に迷惑料が発生することはないと言い切ることはできませんが、実際に支払いをすることはほとんどありません。
例えば、実際に物を壊したり、隣家の外壁や家屋に傷をつけたりした場合は「損害賠償」という形で弁償する必要があります。これは、迷惑料ではなく損害賠償に当たります。
つまり、何らかの被害や損傷を与えた場合など、具体的に目に見える形での被害がない限り、迷惑料の支払いをするということはありません。損害賠償に関しては、多くの解体業者が工事保険に加入しており、その保険から支払うことが多くなります。
近隣住民からのクレームなどで迷惑料を支払うということは稀であり、裁判になっても解体業者や施主が不利になるようなことは少ないでしょう。第三者に対する実害があるかどうかというところがポイントであり、単純にストレスを与えたということだけで迷惑料を支払う必要はありません。
迷惑料の請求は難しい?
解体業者や施主側としても、基本的には迷惑料が発生するようなケースは少ないと考えておいて大丈夫です。また、解体工事に協力する第三者としても、迷惑料の請求は難しいと考えておく必要があります。
例えば、解体現場の近所に住む方などで、自分の土地にトラックや重機などを無断駐車されたと仮定します。事前に許可を与えていれば問題ありませんが、無断駐車されたことに対してはストレスを感じることもあるでしょう。あるいは自分の土地で作業員がタバコを吸っていたり、お昼休憩などを取っていたりすることもあります。
それは確かに良くない行動であり、無断で他人の土地を利用することは正当化できる行為ではありません。ただし、迷惑料を請求するとなると難しい部分が出てきます。
自分の土地を無断利用されたということに関して迷惑料を請求することになると、気分を害したことやストレスを感じたことに対する費用を求めることになります。しかし、それだけでは迷惑料を求めるに十分な条件ではありません。
例えば、土地を勝手に利用されたことによって植物が育たなくなった、土壌汚染が発生して家を建てることができなくなったなど、何らかの具体的な被害を証明する必要があるからです。反対に言えば、具体的な被害がなく、単純にストレスを感じた、気分を害したといった理由だけで迷惑料を取るのは限りなく難しいことです。
基本的には、解体業者や施主からの謝罪の言葉を受けて終了となる事案です。したがって、迷惑料を請求する立場になった場合、まずは具体的な被害があるのかどうか確認することがポイントです。そうでなければ、訴えや裁判を起こすだけで迷惑料よりも自らが支払う費用が上回ってしまうので注意が必要です。
解体工事で迷惑料が発生しそうなケース
ここからは、解体工事で迷惑料が発生しそうなトラブルについて解説していきます。基本的に迷惑料が発生するケースは稀だと言えますが、それでも好き勝手に解体工事を行なって良いというわけではありません。解体工事は解体業者や施主が良ければ良いというものではなく、近隣住民や通行人といった第三者の方々にも配慮しながら進めていく必要があるものです。
その点において、迷惑料が発生しそうなトラブルを把握しておき、できるだけトラブルを起こさないように配慮しながら作業を進めることがポイントです。その具体的なトラブルについて確認していきましょう。
騒音や振動
まず、解体工事で迷惑料が発生しそうなトラブルとして挙げられるのが騒音や振動です。解体工事では大型の重機やトラックなど、普段の生活では使わないような車両を使って作業を行うことがほとんどです。そういった車両を使って工事を行うので、騒音や振動も普段より発生しやすくなります。
重機を使って大きな建物を取り壊すことになるので、一定程度の騒音や振動の発生はやむを得ない部分もあります。近隣住民の方や通行人も含めて、ある程度は我慢しなければならないのが騒音や振動問題でもあります。
騒音に関しては、騒音規制法と呼ばれる法律で作業を行って良い時間帯が定められています。住宅地や商業地など、人が多い場所では午前7時から午後7時までが作業時間帯として指定されています。つまり、夜間や深夜の時間帯に作業を行うことは禁止されており、近隣の方を守る措置として法律で規制されています。
しかし、中には騒音規制法の規定を守らずに早朝や夜間に工事を行う業者もあり、近隣トラブルにつながることもあります。明らかに解体業者に非があると認められた場合は、行政から工事の中断や中止を求められることがあります。場合によっては近隣住民に対して損害賠償を支払うように命じるケースもあるなど、解体業者としても甘く見ることはできません。
解体工事で騒音や振動が発生することは仕方のないことですが、作業を行う時間帯は守る必要があります。また、許容範囲を超える騒音や振動が発生した場合も、トラブルやクレームの発生につながることがあるので注意が必要です。
粉じんの飛散
続いて、解体工事で迷惑料が発生しそうなトラブルとして粉じんの飛散を挙げることができます。解体工事を行っていると、細かい粉じんやほこりが周囲に飛び散ることがあります。それを防ぐために養生シートを使って建物の周囲を囲うことがありますが、それでも飛散してしまうのが粉じんです。
粉じんが飛散すると、洗濯物や車がほこりまみれになったり、場合によっては住居の中にまでほこりが入ったりしてしまうことがあります。これはまさに実害であり、近隣住民としても迷惑料を支払ってもらいたくなるような事案だと言えます。
解体業者としては事前に近隣挨拶に行っておき、粉じん対策をしてもらうように働きかけることが重要です。例えば、洗濯物に関して工事中は外に干さないように協力してもらうことや、車専用のシートを提供して車をシートで覆ってもらうなど、対策を取ることで粉じんによる被害を減らすことができます。また、養生シートで建物の周囲を囲うことも大切ですが、散水しながら工事を行うことによって粉じんの飛散を最小限に食いとどめることができます。
騒音や振動と同様に、解体工事中に粉じんが飛散してしまうのはやむを得ないことでもあります。したがって、粉じんが飛散したからと言ってすぐに迷惑料を支払うようなことにはなりません。事前にできることや作業中にできることをどれだけやっているかが重要です。最善の対策を取った上で、近隣住民の方からの理解を得ることが重要です。
重機やトラックの駐車
重機やトラックの駐車に関しても注意が必要です。基本的に、解体工事を行う場合は道路使用許可を取得して、重機やトラックの駐停車を行います。解体現場の敷地内だけで車両を駐停車させることができれば問題ありませんが、そうでなければ道路使用許可の取得が必要です。
道路使用許可
道路は本来「人・車両の通行」のためのものですが、本来の目的以外に道路を使用することがやむを得ないものについては、交通上の支障等の審査を受けて道路使用許可を受けることができる。申請内容によっては不許可になることもある。
本来は人や車両が通行するための場所が道路であり、解体工事のための重機やトラックを駐停車させるための場所ではありません。それでも、本来の目的以外に使用することがやむを得ないと判断された場合は、道路使用許可を得ることで正当に道路を利用することができます。
こうした手続きをきちんと取って道路を使用していれば問題ありませんが、中には適切な手続きをとらずに道路や他人の土地を利用してしまう業者もあります。特に他人の土地に無断で車両を駐停車させて、注意を受けても改善しない場合は迷惑料や損害賠償請求の対象となることがあります。
実際に普段通行している道路や土地を使えなくなることは、第三者にとっても具体的な被害であり、解体業者としてはそれを改善する義務があります。道路使用許可を得ていれば訴えられることはありませんが、そうでなければ話は別です。解体業者や施主としても、無用なトラブルを避けるために必要な手続きを行うことがポイントです。
迷惑料の発生やトラブルを避ける方法
さまざまな形で迷惑料が発生する可能性があることを理解しておくことが重要です。迷惑料が発生することは稀ではありますが、全く可能性がないとも言い切れないので注意が必要です。その点を踏まえた上で、ここからは迷惑料発生などのトラブルを避ける方法についてご紹介していきます。
解体業者や施主としては、できれば何のトラブルやクレームも発生せずに穏やかに解体工事を終えたいというのが率直な気持ちでしょう。それは近隣住民や通行人にとっても同じことであり、トラブルなく終えることが一番です。そのために解体業者や施主にできることは数多くあります。1つ1つの方法に目を向けて、実際の行動につなげていけるようにしましょう。
事前の挨拶
まず、迷惑料発生などのトラブルを避ける方法として挙げられるのが事前の挨拶です。解体工事を行う場合、近隣の方に対して事前の挨拶に伺っておくことがとても大切です。挨拶に関しては義務ではありませんが、できるだけ行っておいた方が良いでしょう。解体業者が主導して挨拶に行ってくれることが多いですが、できれば施主も一緒について行くことがおすすめです。
ここまでご紹介してきたように、解体工事では騒音や振動の発生、粉じんの飛散や道路の利用など、少なからず近隣住民の方に対してご迷惑をお掛けすることになります。ご迷惑をお掛けしてしまうことに対するお詫びと理解を得るための説明などを含めて、事前に顔を合わせておくことが重要です。
また、事前に挨拶に行っておくことで、近隣住民からの疑問や不安に対して回答することもできます。工事に対する疑問を教えてもらい、その場で回答することで少しでも理解と協力を得やすくなります。施主も含めて事前に顔を合わせておくことで、多少の振動や騒音、その他ストレスを感じることに対して我慢してもらうことができるようになります。
挨拶に行ったからと言って完全にトラブルやクレームを防ぐことはできませんが、それでも挨拶に行かないよりは良い結果を得やすくなります。万一トラブルやクレームが発生した場合でも、事前に顔を合わせておくことで、事態の収拾を図りやすくなることがあります。こうしたメリットがあることを考慮しても、解体工事が始まる前に近隣住民の家を回っておくことがおすすめです。
挨拶をしないとクレームが増える
事前の挨拶の重要性については、実際にトラブルやクレームが発生した時により鮮明になります。挨拶をせずにいきなり解体工事を始めると、近隣住民の方のストレスも一気に高まりやすくなります。少しでも騒音や振動が発生するとクレームを言ってきたり、解体工事の中断を要求してきたりすることがあります。
事前の挨拶がない場合、近隣住民としても、自分たちの存在を無視して工事を開始したのではないかという不信感を抱くことになります。そうなると、ちょっとしたことでストレスが溜まりやすくなり、解体工事に協力しようという姿勢が欠如していきます。
複数の住民から苦情やクレームが発生してその声が大きくなっていくと、最悪の場合、解体工事自体が中断を余儀なくされる可能性もあります。それはお互いに気分が悪いことであり、解体業者や施主としても良いことではありません。
逆の立場になって考えてみることも大切です。自分たちが挨拶なしで近くで工事を開始された場合、どういった気持ちになるのか考えてみると良いでしょう。相手の立場に立って物事を考えることで、挨拶の重要性を再認識することができます。挨拶をしないとクレームが増えやすくなることを理解した上で、適切な行動を取ることがポイントです。
近隣に配慮した工事を行う業者選び
近隣住民からのトラブルやクレームの発生を防ぐという意味では、近隣に配慮した工事を行う業者選びも重要なポイントです。解体工事を行う業者にはさまざまな業者があり、考え方や費用、工事の進め方や期間なども大きく変わっていきます。
その中で意識しておきたいのが、近隣に対してどのくらい配慮した形で工事を進めてくれるかについてです。事前の見積もり提示の段階で、業者に対して近隣対策をどのくらい行ってくれるか確認すると良いでしょう。粉じんの飛散や騒音防止、振動対策として散水や養生の設置を大切にしてくれるか、実際にクレームが発生した場合にどういった形で対応してくれるかなど、事例も踏まえながら説明してもらうことで、その業者の特徴がわかりやすくなります。
また、直接的な近隣対策のみならず、話している時の表情や態度、コミュニケーション能力などをしっかり見ておくことも大切です。口頭では上手いことを言っていても表情や態度などに違和感があれば、そうした業者を避けることがポイントです。身なりなどもそうですが、クレームやトラブルが発生した時も施主に対する対応と同じような対応となることがほとんどです。
話し合いをしている時点で違和感を覚えるようであれば、クレーム対応にも期待することはできないでしょう。事前の挨拶などを含めて、近隣住民の方とも上手く取り合ってもらえそうな業者を中心にリストアップを進めていくことがおすすめです。
複数業者への見積もり
近隣住民に配慮した工事を行う業者選びをするという点では、複数業者への見積もりを行うこともポイントです。解体費用面の比較をするという意味でも複数業者への見積もりは大切ですが、近隣への配慮をどの程度行ってくれるのか比較するという部分でも、複数業者の話を聞いておくことがおすすめです。
少なくとも2社や3社程度の話を聞くことで、その業者がどのくらい近隣対応に力を入れているのか比較しやすくなります。多少費用が高くなっても、近隣対応をしっかりしてくれる業者の方がスムーズに工事を終えられる可能性が高まります。反対に、当初の解体費用が安くても養生シートの設置がなかったり、工事の進め方に不安が残ったりすると、クレームやトラブルに巻き込まれて最終的に支払う費用が高くなってしまう可能性があります。
つまり、単純に提示された解体費用の多寡だけで業者選びを進めてしまうのは危険だということです。担当者の表情や態度、服装やコミュニケーション能力など、さまざまな点を総合的に勘案した上で、本当に信頼できると思った業者に工事を任せることが重要です。
養生シートの設置
迷惑料が発生するようなトラブルやクレームを防止する方法として、養生シートの設置も挙げることができます。解体工事を行う現場では養生シートを設置することが一般的ですが、義務ではありません。中には養生シートを設置せずに作業を行う業者もありますが、それは違法行為とは言えません。
しかし、それでも養生シートを設置して作業を進めてもらった方が良いでしょう。建物の周囲を養生シートで囲うことによって、防音効果の高まりや粉じんの飛散防止にもつなげることができます。また、利用する養生シートにも注目する必要があります。
ほとんどの業者ではきれいで傷も少ない養生シートを使って建物の周囲を囲いますが、中にはボロボロの養生シートやところどころ破れているような養生シートを使う業者もあります。シートが破れていれば防音効果にも期待できませんし、破れている部分から粉じんが飛散してしまう可能性も高まります。つまり、ボロボロの養生シートを設置してもトラブルの抑止効果を期待しにくくなるということです。
事前に設置する養生シートを見せてもらえる場合は確認しておくと良いでしょう。業者選びを進める過程で、きちんとした養生シートを使ってくれる業者を探し出すことがポイントです。
散水
散水に関しても作業中にできるトラブル防止策として有効です。解体工事中は粉じんやほこりが飛散して、周囲の家や車にかかってしまうことがあります。そうした被害を少しでも食いとどめるために有効なのが散水です。
散水とは単純に水をまくことを言いますが、粉じんやほこりを湿らせることによってより遠くまで飛散することを防止しやすくなります。重機を使って重たい外壁などを取り壊す際は、外壁が倒れた瞬間に大量の粉じんとほこりが飛び散ることになります。
養生シートの設置によって防げる部分もありますが、それ以上に大量の粉じんが飛び散るので、風に乗って遠くまで飛ばされてしまうことがあります。特に乾いた状態の粉じんはどこまでも飛んでしまう可能性があります。
そこでカギを握ってくるのが散水です。適度に散水をしながら作業を進めていき、粉じんやほこりを湿った状態にしておけば、そこまで遠くに飛散することはありません。作業の丁寧さという部分でも散水は重要です。そうした細かい部分を大切にしてくれる業者を選ぶことがポイントです。
借地料の支払い
解体工事の際に迷惑料が発生するようなトラブルを避ける方法としては、借地料の支払いも挙げることができます。特に隣人や周囲の人が所有している土地を借りて作業を行わなければならない場合、借地料を支払うことで正式に土地を利用させてもらうことができます。
解体工事では足場の設置や車両の駐停車など、解体現場の敷地内だけでは収まらないことがあります。そうした場合は、他人の土地を利用させてもらうことも少なくありません。本来であれば、挨拶をした時に無料で利用させてもらうのが一番ですが、近隣住民との関係性によっては無料で使わせてもらえないこともあります。
その際に借地料の支払いという形でお互いに合意をすることで、正式に土地を利用することができます。借地料を支払っていれば、多少のトラブルが起きた場合でも目をつぶってもらえる可能性が高まります。貸し主側としても、借地料をもらっているのだから多少は仕方ないという気持ちになることがあるでしょう。
解体工事が始まってから感情面での対立を防ぐという意味でも、借地料の支払いによってお互いの関係性を保つことは1つの有効な選択肢と言えます。
解体工事終了後のお礼
解体工事前の挨拶や解体工事中の配慮などはとても重要ですが、さらに解体工事終了後のお礼も大切にしておきたいポイントです。解体工事が終わったらそのまま現場を後にしてしまう業者もいますが、それでは礼儀に欠けると言わざるを得ません。解体工事が終わったら、それまで工事に協力してくれたことに対する感謝の気持ちを伝えることが重要です。
挨拶をせずにいると、近隣住民の方としても「工事が始まる前だけ挨拶に来て、工事が終わったら来ないのか」といった気持ちになることがあります。解体工事に関するクレームやトラブルに関しては、工事終了後に発生する可能性もあります。
後になって「外壁に傷がついていたことがわかった」、「車に損傷が出ていた」、「庭木や植木が傾いている」など、工事終了後に何らかのトラブルが見つかることも珍しくありません。そうしたケースにおいても、解体工事終了後のお礼を言っていたかどうかによって相手の対応が変わることがあります。
事前の挨拶に関してもそうですが、事後の挨拶の重要性も認識しておくことが大切です。最後まで気を抜くことなく丁寧な対応を続けることで、近隣の方との良好な関係をキープしていきましょう。
騒音や振動による迷惑をかけないために
ここからは、騒音や振動による迷惑をかけないための考え方について取り上げていきます。解体工事では騒音や振動が発生することも一般的であり、やむを得ない事象として認識されています。それでも、一定以上の騒音や振動が発生すると周辺住民のストレスも高まり、クレームの発生につながる可能性が出てきます。
トラブルやクレームが発生した時の基準として、騒音や振動に関する数値も定められています。その他、騒音規制法や振動規制法といった法律も定められており、解体業者としては法律の規定を守った上で作業を行う必要があります。その法律の内容や騒音を減らす方法なども含めて、騒音や振動に対する理解を深めていきましょう。
騒音規制法
まずは、騒音規制法について確認していきます。
騒音規制法
騒音規制法とは、工場及び事業場における事業活動や建設工事に伴って発生する騒音について必要な規制を行なうことにより、生活環境を保全し、国民の健康の保護に資することを目的としている法律のこと。
騒音規制法では、工事を行って良い時間帯についても規定しています。それが以下の時間帯です。
区域 | 時間帯 | 1日の作業時間 | 日数 |
---|---|---|---|
第1号区域(住宅地・商業地) | 午前7時~午後7時 | 10時間以内 | 連続6日間を限度 |
第2号区域(工業地域) | 午前6時~午後10時 | 14時間以内 | 連続6日間を限度 |
住宅地や商業地に関しては第1号区域と指定されており、午前7時から午後7時までの時間帯に工事を行って良いことになっています。公共工事の場合は、自主的に工事時間を午前8時から午後5時までに定めて行うこともあります。それだけ近隣の方に配慮して行う必要があるものだと考えることができます。
また、騒音規制法では、騒音の大きさに関して85デシベル以下に抑えるように定められています。後ほど基準となる騒音数値について取り上げますが、常時85デシベルを上回るような形で工事を続けてはいけないことになっています。周辺住民や通行人の方を守るために制定されたのが騒音規制法であり、解体業者としても法律の内容を守った上で工事を進める必要があります。
万一、規定を守らずに工事を続けた場合、市町村長が必要に応じて改善勧告等を行えるような仕組みとなっています。最悪の場合、工事の中断や中止を余儀なくされることもあるので、その点も理解しておく必要があります。
振動規制法
騒音規制法と同様に認識しておきたい法律として、振動規制法も挙げることができます。振動規制法とは、以下のような考え方をすることができる法律です。
振動規制法
振動規制法とは、工場及び事業場における事業活動や建設工事に伴って発生する振動について必要な規制を行うとともに、生活環境を保全し、国民の健康の保護に資することを目的としている法律のこと。
振動規制法も国民の健康や安全を守るために制定された法律であり、解体現場においてもできるだけ振動の発生を防ぐように規定しています。解体工事も含めた建設現場では、くい打機などの重機の使用によって振動が発生することも珍しくありません。
その中で、発生させても良い振動数値としては75デシベル以下と定められています。75デシベルを常時越えるような形で解体工事を行うことは違法です。騒音規制法の場合と同様に、振動規制法でも市町村長の権限で改善勧告等を行えるようになっています。解体業者や施主としては、騒音のみならず振動の発生にも注意を払いながら作業を進めていくことが求められます。
基準となる騒音や振動
それでは、具体的に基準となる騒音や振動についてご紹介していきます。振動に関しては具体例を挙げるのが難しい部分もありますが、騒音については日常生活で感じる音の大きさと比較して検討することができます。騒音規制法では85デシベル以下、振動規制法では75デシベル以下の数値が定められていますが、日常生活で感じる数値について確認していきましょう。
- 50デシベル:静かな事務所、家庭用クーラー(室外機)、換気扇(1m)
- 60デシベル:静かな乗用車、普通の会話、洗濯機(1m)、掃除機(1m)、テレビ(1m)
- 70デシベル:騒々しい事務所の中、セミの鳴き声(2m)、やかんの沸騰音(1m)
- 80デシベル:地下鉄の車内、電車の車内、ピアノの音(1m)
- 90デシベル:犬の鳴き声(5m)、騒々しい工場の中、カラオケボックスの中
- 100デシベル:電車が通る時のガード下、液圧プレス(1m)
- 110デシベル:自動車のクラクション(2m)
以上が日常生活で感じる主な音と騒音値の関係です。騒音規制法で指定されている85デシベルという数値は電車の車内やピアノの音よりも大きい音であり、人によっては大きなストレスを感じることがあるでしょう。
一時的に基準値を上回る程度であればそれほど問題にはなりませんが、常時基準値を上回っている場合は行政から指導が入ることもあります。過度な騒音や振動は、近隣住民にとっても解体業者にとっても気分の良いものではありません。騒音規制法や振動規制法といった法律があることも理解しつつ、施主や解体業者としてできる最大限の配慮をしながら作業を進めていくことがポイントです。
騒音を減らす方法
少しでも騒音を減らすための方法としては、防音シートの設置を挙げることができます。一般的な養生シートでも騒音を減らすことはできますが、より防音効果を高めたいのであれば専用の防音シートを活用することがおすすめです。
防音シートを設置した場合と設置しなかった場合とでは、周囲に与える音の大きさに大きな違いが出てきます。施主としても多少の出費にはなりますが防音シートの設置を依頼することで、トラブルやクレームの発生を防ぎやすくなります。
また、工事を行う時間帯も意識しておきたいところです。住宅地や商業地で工事を行う場合、法律では午前7時から午後7時まで行って良いことになっていますが、午前7時から大きな音や振動が発生する作業をするのは得策ではないでしょう。
大きな音や振動が発生する工事は午前9時から午後5時頃までにするなど、一般の方の生活スタイルに配慮した形で作業を行うことで、クレームやトラブルの発生を防ぎやすくなります。実際に発生する騒音の大きさに変化を加えることはできませんが、作業を行う時間帯を変えることで、周囲に与える影響に変化をもたらすことができます。
こうした方法があることを理解した上で、自分たちができることは何か判断しながら解体工事を進めていくことがポイントです。
原則として施主は責任を負わない?
騒音や振動の発生など、さまざまな形で近隣住民や通行人にご迷惑をお掛けする可能性があるのが解体工事です。その中で気になるポイントとして、誰が実質的な責任を負うことになるのかという点が挙げられます。
民法第716条の規定を確認すると、工事の発注者、つまり施主は原則として第三者に加えた損害を賠償する必要がありません。
民法第716条
注文者は、請負人がその仕事について第三者に加えた損害を賠償する責任を負わない。ただし、注文または指図についてその注文者に過失があったときは、この限りでない。
基本的に施主が責任を負うことはありませんが、例外ケースがあることも理解しておきたいところです。民法第716条でも規定があるように、「注文または指図について過失があったときはこの限りではない」という箇所に注意する必要があります。
例えば、解体費用を安く済ませるために無理なスケジュールや工法で発注をした場合、適切な指示や注文をしなかったと判断される可能性があります。その状況で第三者に対して被害を与えた場合は、施主が責任を負うことになる可能性も出てきます。
また、契約時点の過失のみならず、工事中の過失が施主の責任として問われることもあります。例えば、工事中に隣家の壁に傷をつけてしまった場合、隣家の住人が施主に対して相談してくれることがあります。その際に、施主としては速やかに解体業者や作業員に対して報告をする義務があります。
そうした報告を怠り、さらに隣家に対する被害が拡大した場合は、施主の過失と認定される可能性があります。工事中の事故やトラブルに関して、まず責任を負うのは解体業者となりますが、場合によっては施主が責任を負うことになる可能性もあるということです。
原則は施主の責任は問われないことになっていますが、過失があったと認められた場合はその限りではありません。施主としても、解体工事の関係者として自らの責任を全うする必要があります。
まとめ
解体工事と迷惑料の関係に注目をして解説を行ってきました。解体工事中は騒音や振動の発生、粉じんの飛散や道路の利用など、さまざまな形で近隣住民や通行人の方にご迷惑をお掛けすることになります。第三者としても一定程度は解体工事に協力することが求められますが、そこにも限度があることは間違いありません。
一定の限度を超えると、近隣からのクレーム発生やトラブルにつながることも珍しくなく、場合によっては迷惑料を請求される可能性もあります。迷惑料を支払うケースはそれほど多いわけではありませんが、できれば施主や解体業者としては穏便に工事を進めたいところでしょう。そのために事前にできることや工事中にできることに最大限注力して、スムーズに解体工事を進めていくことがポイントです。