畜舎の解体工事を行う流れや解体にかかる費用を紹介!捻出が難しい場合の対応も
解体工事にもさまざまな種類の工事がありますが、畜産業を営まれている方の中には畜舎の解体工事について検討することもあるでしょう。牛舎や豚舎、鶏舎といった畜舎の解体手順について理解することで解体工事に対するイメージも持ちやすくなります。実際に畜舎を解体するためにはどれくらいの費用がかかるのかも気になるポイントでしょう。解体費用の捻出が難しい場合の対応も含めて畜舎の解体工事についてご紹介します。
畜舎を解体する流れ
それでは畜舎の解体手順についてご紹介します。家屋や建物の解体と同様に、畜舎を解体する場合も一定の手順があります。解体業者によって多少やり方が異なることはありますが、基本となる手順はあります。
畜舎を解体する際の一連の流れについて確認しましょう。
養生の設置
まずは養生の設置から行います。畜舎の場合は比較的周辺がひらけていることが多いですが、作業の万全を期すために全体を養生で囲います。特にスレート瓦を使用している畜舎の場合は、アスベストが使用されている可能性もあります。
アスベストが周辺に飛散すると、健康被害につながるリスクが高まるので注意が必要です。
近くに住んでいる方や住宅がある場合は、そうした方々への配慮という意味でも養生を設置することが大切です。養生を設置することでほこりや粉じんの飛散防止、振動や騒音の軽減、廃材の飛散防止といった効果が期待できます。
スレートの撤去
養生の設置を終えたら、続いてスレートの撤去を行います。
スレート
粘板岩を薄い板状にした建築材のこと。外壁材や屋根材に使用されることが多い。
かつては、耐久性の低さやアスベストが使用されていることなどがデメリットとされてきましたが、現在では技術改良も進み、良質なスレートを使える環境が整ってきました。
畜舎の屋根材としてスレートを使うことも多く、1枚1枚丁寧にはがしていきます。手作業で撤去を行うことも多いため、ある程度の時間がかかります。
屋根材や外壁材にスレートが使用されていない場合は重機を使った作業も可能です。
躯体の解体
スレートの撤去を終えたら躯体の解体へと移ります。鉄骨や鉄筋コンクリートなどの躯体がむき出しになった状態で重機を使って躯体を解体します。
重機に鉄骨カッターなどのアタッチメントを装着すると、より効率的に作業を行えます。躯体の解体が解体工事の中でもメインとなる部分であり、作業が終われば畜舎の面影もほとんどなくなります。
地中埋設物の確認
躯体の解体を終えたら地中埋設物の確認を行います。特に古い畜舎の場合、地中に井戸や浄化槽といった埋設物が埋まっている可能性もあります。
地中埋設物をそのままにしておくと将来的な土地利用に影響が出てくるリスクもあるので、発見した時点で撤去することが望ましいです。
追加費用の対象となる部分であり施主としては経済的な負担が増しますが、確実に撤去しておきましょう。
清掃作業
地中埋設物の確認や撤去まで終えたら、最後に現場の清掃作業を行います。畜舎ならではでありますが、土地に動物の糞尿などが混入している可能性も十分にあり得ます。糞尿や異物は確実に撤去して、きれいな状態に戻すことが重要です。
ごみや廃棄物の撤去はもちろんのこと、消毒作業も含めて行うことできれいな状態を作り上げます。最後には整地を行い、土地をならして終了です。
畜舎の解体費用事例
ここからは畜舎の解体費用事例についてご紹介します。牛舎や豚舎、鶏舎などを解体する場合に、どれくらいの費用が必要なのか気になるという方もいるでしょう。
実際の事例を確認することで多少なりともその疑問を解決できます。全ての畜舎に当てはまるわけではありませんが、参考として把握する分には悪くありません。その他の注意点も含めて認識を深めましょう。
実際の事例
それでは実際の解体費用事例について、以下の表にまとめます。
畜舎の特徴 | 工期 | 総工費 |
---|---|---|
鉄骨平屋(25坪+20坪) | 8日~10日 | 114万円 |
鉄骨平屋(45坪) | 8日~10日 | 148万円 |
いずれの解体工事も総工費です。大きく分けると解体費用の他、資材や廃棄物の運搬費と処分費、さらには汚尿コンクリート処分料が含まれています。
敷地の広さや作業量などにもよりますが、畜舎の解体には100万円以上の費用が必要となることも珍しくありません。ある程度の予算を組んだ中で解体工事の依頼をすることが求められます。
アスベスト使用の場合は高額に
畜舎の解体に際して、外壁材や屋根材、躯体などにアスベストが使用されている場合はさらに高額な費用がかかります。かつては断熱材として利用されることが多かったアスベストですが、発がん性物質が含まれていることがわかってからは原則として使用が禁止されています。
全面的に禁止されるようになったのが2006年であり、それ以前に建てられた畜舎の場合はアスベストが使用されている可能性もあるでしょう。
アスベストが使用されている箇所や面積にもよりますが、通常の2倍程度の費用が必要となることもあります。
まずは、解体対象となる畜舎にアスベストが使用されているかどうか確認してもらいましょう。
地中埋設物の存在には注意
アスベストと同様に注意を払いたいのが地中埋設物です。躯体を解体した後に地中を確認しますが、そこで井戸や浄化槽、建物のコンクリートの一部やその他の廃棄物が見つかった場合、それらを撤去しなければなりません。
基本的に最初に提示される解体費用には地中埋設物の撤去料は含まれていません。地中に何もなければ追加で作業を行う必要はないからです。
そのため、万一地中埋設物が見つかると追加費用という形で費用が加算されます。追加費用負担の可能性があることも理解した上で、解体工事を依頼することがポイントです。
畜舎の解体費用捻出が難しい場合
ここからは畜舎の解体費用を捻出することが難しい場合の対応についてご紹介します。解体費用事例でも取り上げたように、畜舎の解体は決して安い費用でできるものではありません。
数十万円から数百万円程度の費用が必要であり、なかなか資金を用意できないということもあるでしょう。そうしたケースでの対応について確認した上で自身の行動を選択しましょう。
解体するための費用を借り入れ、更地にしてから土地を売却する
まずは、解体するための費用を借り入れて、更地にしてから土地を売却する選択肢が挙げられます。畜舎の解体に際しては、金融機関のプロパーローンやフリーローン(無担保型)といった借入を行うことも可能です。
一般的なローンと比較して金利が高いというデメリットもありますが、土地を売却して得られる収益があることがわかっていれば比較的スムーズに返済することも可能でしょう。
また、解体業者によっては解体費用を一時的に立て替えてくれることもあります。事情を説明して土地売却によって得られた収益で支払いを行う契約を結べば、経済的な困難を乗り越えることができるでしょう。
全額は難しくても一部立て替えであれば可能といった業者もあるので、事前に相談してみることがおすすめです。
借入額が売値を大幅に越える場合、固定資産税を払い続ける選択も
畜舎の解体費用が高く、土地の売却代金での支払いが難しい場合は畜舎をそのままにしておくという選択肢も挙げられます。
畜舎の広さや構造、アスベストの使用量などによっては解体費用が大幅に高くなることもあります。そうなると、借入を行ってもなかなか返済が難しいというケースもあるでしょう。
その場合は無理に解体しない方が身のためです。解体後に残る借金に追われるのであれば、固定資産税を支払う方が精神的にも楽でしょう。
解体費用と土地の売却代金を天秤にかけた上で最善の判断を下すことが大切です。
同じ土地・同じ建物で始めたい方を探して無償で譲渡する
畜舎をそのまま残しておいた場合は、その場所で畜産業を始めたい人に無償で譲渡するという選択もおすすめです。すでに土地と畜舎が揃っているのであれば畜産業をやってみたいという人が見つかるかもしれません。
知り合いや畜産仲間を頼って、引き取り手を募集してみるのも良いでしょう。自分で持っていると固定資産税を払い続けなければなりませんが、譲渡すればその負担もなくなります。
解体費用も浮かせることができるので、引き取り手が見つかれば最善の選択です。
まとめ
畜舎の解体に注目をして、解体手順や解体費用などについてご紹介しました。これまで利用してきた畜舎を解体する場合は、建物の解体工事と同様に解体業者に依頼して取り壊してもらうことが一般的です。
規模の大きな畜舎の場合は工事も大掛かりになるので、素人ではなかなか行えません。スレートの撤去や躯体の解体などを含めて、専門的なスキルを持った業者に委ねることがポイントです。
畜舎を解体する場合は数百万円単位の費用がかかることも珍しくありません。費用の捻出や難しい場合には土地の売却や無償での譲渡といった手段もあります。さまざまな選択肢を持った中で最善の行動を起こしましょう。