病院・医院・診療所の解体にかかる費用はどれくらい?状況別の金額目安なども解説
解体工事では家屋や建物を取り壊すことがメインですが、その中で病院や医院、診療所の解体、原状回復工事などをする場面も出てくるでしょう。今回は、病院や医院、診療所といった建物を実際に解体する場合の業者選びのポイントや費用相場、原状回復などについて解説します。医院やクリニックなどの解体を検討している方は参考にしてください。
病院・医院・診療所の解体業者選びのコツ
まずは、病院や医院、診療所を解体する場合の業者選びの考え方についてご紹介します。それまで診療を行ってきた病院等でも、老朽化や営業終了に伴って取り壊すことがあるでしょう。その際にどういった業者を選べば良いのか知っておくことは大切です。
具体的な解体業者選びのポイントについて確認しましょう。
通常の解体業者で問題ない
基本的には病院等を解体する場合でもあっても、通常の解体業者で問題ありません。一般的には家屋やビル、マンション、その他の建物を含めて解体することが多いですが、解体経験がある業者であれば病院等の取り壊しもスムーズに行ってくれます。
病院や医院を解体するからといって何か特別な資格や経験が必要なわけではありません。解体工事業の登録を行っている業者であれば大丈夫です。
おすすめは大型建物の解体経験豊富な業者
病院等の解体は通常の解体業者で問題ありませんが、対象の建物が大きい場合は大型建物の解体経験豊富な業者がおすすめです。具体的には4階建て以上の病院や医院、診療所を取り壊す場合は一定の経験がある業者に任せた方が良いでしょう。
4階建て以上になると、一般的なサイズの重機ではアームが届かないことが多く、長い腕を持ったロングブーム車などの操作が必要です。
大型建物の解体経験が乏しいと、そうした重機の操作に慣れていない可能性があります。また、そもそも大型建物用の重機を持ち合わせていない可能性もあります。
4階建て以上の解体を依頼する場合は業者に対して大型建物の解体経験があるかどうかや、大型建物の解体に対応する重機を所有しているかどうか尋ねることも有効です。
特定廃棄物の対応を確認
業者選びの際には、特定廃棄物の対応を確認することも重要です。
特定廃棄物
政令などによって特別な管理や処置が必要とされる廃棄物。一定濃度を超える放射性物質が付着した土や灰なども対象。
一般ごみとは異なり、地球環境に悪影響を及ぼすと考えられる廃棄物については特定廃棄物と見なされます。特定廃棄物の処理を行うには許可を得ていないとできないこともあるため、業者によって対応は異なります。
医療廃棄物
病院や医院、診療所を解体する場合は医療廃棄物が出てくることも多いでしょう。患者の体液が付着しているような廃棄物や使用済みの注射器などは感染症廃棄物と判断されます。
感染症廃棄物の処理を行うためには「特別管理産業廃棄物の取り扱い許可」が必要です。
特別管理産業廃棄物
爆発性や毒性、感染性など、人の健康や生活環境に被害を生じさせる恐れがある廃棄物。
取り扱い許可を持っている業者に解体を依頼することで、医療廃棄物の処理や処分をスムーズに行うことができます。
アスベスト
病院等を解体する場合は、アスベストの使用状況について確認することも大切です。法律改正や規制強化によって使用が禁止されるようになってきたアスベストですが、2006年以前に建設された建物には一定程度のアスベストが使用されている可能性があります。
古くから営業してきた病院等は規制強化前に建てられているものも多いでしょう。内装材やダクトにアスベストを使用していることもあるので、その場合は専門業者に除去してもらう必要があります。
アスベストは人体への有毒性が認められているので、慎重な作業が求められます。
PCB
病院等ではPCBが使用されていることもあります。PCBとは、ポリ塩化ビフェニルのことでコンデンサーや蛍光灯の安定器などに利用されていることが多いです。
PCBも人体に有害な影響を及ぼすことが判明しており、専門業者に回収を依頼する必要があります。事前調査を含めて、必ず建物の状況を確認してもらいましょう。
病院・医院・診療所の解体費用事例
ここからは病院や医院、診療所の解体費用事例についてご紹介します。病院や医院、診療所を解体する場合はどれくらいの費用が発生するのでしょうか。
広さや構造、階数や廃棄物の量など、さまざまな条件が組み合わさって決まるのが解体費用です。事例なども参考にしながら解体費用について確認しましょう。
一般的な店舗の費用相場
まずは、一般的な店舗を解体する場合の費用相場について取り上げます。
- 2万5,000円~4万円/坪
一般的な店舗を解体する場合は、1坪あたり2万5,000円から4万円程度が相場だと考えておけば問題ありません。重量鉄骨造の場合は坪単価が4万5,000円程度まで跳ね上がることがありますが、それ以外の木造や軽量鉄骨造であれば4万円以内に収まることが多いです。
これは建物本体を解体する際の費用相場であり、他に廃棄物処理費用や付帯工事費用などが加算されて最終的な金額が算出されます。
最終的な金額については必ず解体業者に尋ねることが重要です。
内装解体の事例
医院やクリニックを中心に内装解体費用の事例について、以下の表にまとめてご紹介します。
病院の種類 | 坪数 | 解体費用 |
---|---|---|
整骨院 | 16坪 | 31万3,000円 |
接骨院 | 13坪 | 48万6,000円 |
接骨院 | 13坪 | 57万2,000円 |
歯科医院 | 18坪 | 57万8,000円 |
歯科医院 | 17.5坪 | 62万円 |
歯科医院 | 15.8坪 | 84万円 |
歯科医院 | 27坪 | 108万円 |
クリニック | 40坪 | 183万6,000円 |
内装解体の場合は建物全体を取り壊すわけではなく、骨組みを残したまま内装だけを解体します。それでも数十万円から数百万円単位で費用がかかることが一般的です。
坪数や病院の種類などによって解体費用も変わりますが、実際に解体工事を依頼する際の参考として頭に入れておきましょう。
解体費用が高くなるケース
店舗の解体費用相場や医院等の内装解体費用の実例について取り上げましたが、相場よりも解体費用が高くなることもあります。解体工事では坪単価をはじめとした一定の相場がありますが、必ずしも相場通りに価格設定が行われるわけではありません。
場合によっては相場より安くなることもありますし、反対に高くなることもあります。具体的にどういったケースで解体費用が高くなるのでしょうか。
残置物が多い
まずは、残置物が多いケースが挙げられます。解体しようとしている病院等の施設内に残置物や不用品が多く残っていると、その撤去や処分にかかる費用が追加されます。
例えば、エアコンや冷蔵庫、洗濯機や診療で使う機材、道具などが多く残っていると、解体業者としても手間がかかります。
少しでも解体費用を安くしたいと考えるのであれば、病院内の不用品や残置物を自分たちで片付けることがポイントです。
追加工事が必要な場合
解体費用が高くなるケースとしては、追加工事が必要な場合も挙げられます。建物全体を取り壊す場合は別ですが、原状回復やスケルトン解体の際に電気設備の工事を行うといったケースもあるでしょう。
あるいは、水道管や排水設備の修繕、ガス点検や補修工事、床や天井部分の補修工事など、追加で作業が必要となる場合は費用も高めに設定されます。
建物にアスベストが使用されている場合も、特別なスキルを持った作業員に除去を依頼するため、費用が高くなります。
建物全体を取り壊した場合、地中に障害物や埋設物が埋まっているケースでも追加工事の対象となります。追加で必要な工事が発生した場合は、その分の費用が加算されると考えておきましょう。
相見積もりを忘れずに
病院等の解体工事は、その建物や内部の状況によって費用が大幅に変わります。解体業者のさじ加減で費用が変わる部分もありますし、施主としてどういった工事を依頼したいのかによって変わる部分もあります。
大切なのは複数業者に問い合わせを行い、必ず相見積もりを行うことです。相見積もりを行うことで解体工事の適正価格も見えてきますし、どういった工事を行うのが良いのか判断しやすくなります。
比較対象を作って専門業者の話を聞くことで、費用的にも工法的にも最適な業者を選びましょう。
病院・医院・診療所の原状回復やリフォーム
ここからは病院や医院、診療所の原状回復やリフォームに焦点を当てて解説を行います。建物全体を取り壊すこともありますが、まだ使える状態であれば原状回復やリフォームによって対応することも可能です。
テナント契約によっては原状回復が求められることもあるでしょう。さまざまな工法に対応できるよう、施主としても多くの選択肢を持っておきましょう。
テナントの契約内容を確認
原状回復やリフォームを含めた内装解体については、最初にテナントの契約内容を確認することが重要です。賃貸借契約を結んでいる場合は、必ず契約内容に沿って工事を行うことが求められます。
契約内容に原状回復という文言があれば、その状態で返却することになります。
原状回復
賃貸借契約を結んでいたテナントや物件から退去する際に、内外装を契約時に取り決めた状態まで戻すこと。
他にも「スケルトン戻し」や一部の設備を残した状態のまま返却するといった内容になっていることもあります。まずは契約内容を確認した上で、どういった工事を行えば良いのか検討しましょう。
原状回復に向けた工事の流れ
実際に原状回復工事を行う場合の流れについて確認します。原状回復の場合はテナントを借りた時の状態に戻すことがポイントです。その際の流れとしては、主に以下の順番となります。
- 内装解体
- 修繕工事
- 設備工事
まずは、内装解体から着手します。病院やクリニック内の設備や装飾といった造作物を撤去し、内装の解体を進めます。
内装解体を終えたら修繕工事へと移ります。壁や床、天井といった部分で修繕が必要とされる箇所の工事を行います。建物の構造体自体に補修や修繕が必要と判断された場合は、そちらの工事も併せて行います。
最後に設備工事へと移ります。内装解体によってむき出しの状態になった電気配線の確認を行います。ガス漏れや漏電などの不具合が発生していないかを確認しつつ、電気、ガス、水道などの設備を整備するための工事を行います。
基本的な原状回復工事の一連の流れとしては以上です。
物件オーナーとの打ち合わせ
賃貸借契約を終えてテナントを返却する場合は、物件オーナーとの打ち合わせを欠かさずに行うことが重要です。原状回復工事を行う場合もどこまで戻すのか、残しておいて良い設備や装飾はあるかなどの話し合いを行います。
場合によっては、次にテナント契約を結んでいるのも医院やクリニックである可能性もあります。その場合は、物件オーナーから「使えるものをそのまま残しておいて欲しい」と言われることもあるでしょう。
入居時に結んだ契約内容が最も重要なことは間違いありませんが、細かい部分はオーナーとの打ち合わせを行いながら工事を進めることがポイントです。
営業継続の場合はリフォームもおすすめ
病院や医院、診療所などの営業を継続する場合はリフォームを選択肢に入れることもおすすめです。近所に仮の医院や診療所を作ってからリフォームを開始することで、患者様にも迷惑をかけることなく、リフォームを行うことができます。
古くから営業している病院等の場合、外部構造や内装を含めて至らない部分が多々出てきます。建物自体を建て替えることは難しくても、リフォームであればコスト的にも行いやすいでしょう。
最新の設備や治療機器の導入、耐震化などを検討している場合も一時的に仮診療所を設置してリフォーム工事に入ることが有効です。
レイアウトの変更はリノベーションも
営業継続に向けたリフォーム工事もおすすめですが、レイアウトを変更したい場合はリノベーションを検討することもおすすめです。
リノベーションの場合も、建物の構造自体は活かしたまま内装に変化を加えることができます。病院やクリニック等も時代に合わせて進化を続けており、患者様の居心地の良い空間作りに注力する医院も多くなっています。
入り口から受付までの動線、待合室から診察室までの動線などを含めてこだわりを持ったレイアウトに変更したい場合はリノベーションに向けたスケジュールを組むと良いでしょう。
まとめ
病院や医院、診療所等を解体する場合も基本的には通常の解体業者で問題ありません。ただし、4階以上の大型の医院を解体する場合はそれなりに経験のある業者に任せると良いでしょう。
病院等の解体にも一定の費用がかかることは間違いありません。相見積もりを取りつつ、費用面でも工期面でも納得できる業者に任せることが一番です。
テナント契約を結んでいる場合は、物件オーナーと話し合った上で最善の行動を取りましょう。建物本体の解体以外にも、内装解体や原状回復、リフォームやリノベーションといった選択肢もあることを押さえた上で実際の行動へと移すことがポイントです。