解体工事の際の下水道はどう扱えば良い?手続きや手順を含め解説!

解体工事の際の下水道はどう扱えば良い?手続きや手順を含め解説!

家屋や建物の解体工事を行う場合、下水道の処理に悩むという方も多いでしょう。実際にどういった手続きや手順を経る必要があるのかわからないという方も少なくありません。そこで今回は、解体工事を行う場合の下水道の扱いについてご紹介します。解体工事を行う場合は、誤って下水道を破損させたり傷つけたりしないことが重要です。下水道と汚水の関係も含めて解説を行いますので、どうぞ参考にしてください。

解体工事の際の下水道の扱い

それでは、解体工事を行う場合の下水道の扱いについてご紹介します。解体工事に伴って下水道設備を撤去することもあれば、そのまま残しておくこともあります。いずれの場合でも自治体と話し合いを行うことが大切であり、施主や解体業者だけで判断できるものではありません。

排水設備を残す場合も含めて、一連の流れについて確認しましょう。

下水道使用休止届の提出

まずは、下水道を管理する自治体に「下水道使用休止届」を提出することが重要です。休止届は解体工事完了までに届け出れば良いことが多いですが、できるだけ早めに提出すると良いでしょう。

万一、提出を怠ると、解体工事中に使用した水道代と合わせて下水道使用料も徴収されるので注意が必要です。解体工事では防塵のために散水を行うことがあるので、確実に休止届を提出することがポイントです。

また、下水道使用休止届の提出が必要となるのは下水道に接続されている建物を取り壊す場合です。それ以外の場合は特に提出する必要はないので、事前に確認しておきましょう。

自治体との打ち合わせ

下水道に接続されている建物を取り壊す場合、下水道の取り扱いについて自治体と打ち合わせを行います。そのまま残すにしても撤去するにしても、自治体と連携した上で対応を取ることが重要であり、解体業者の判断だけで行動することはできません。

下水道を撤去する場合は、基本的に排水設備の指定工事店に作業を依頼します。下水道の撤去は、一歩間違えると敷地内の流水や下水処理の不備につながるリスクがあります。そのため、専門的な知識やスキルを持った指定工事店に作業を依頼することが大切です。

排水設備を残す場合

自治体との打ち合わせの結果、排水設備を残すことになった場合は閉栓手続きなどを行う必要があります。閉栓をせずに工事を進めると、下水道に汚水や土砂が流れ込むリスクがあるので注意が必要です。どういった手順で解体を進めるのか説明した上で、自治体からの指示に従うことが重要です。

排水設備を残す場合でも、閉栓などの作業を指定工事店に依頼することがあります。解体業者とは異なる役割を求められるので、排水関係の作業については専門業者に任せましょう。

キャップ止めの使用

閉栓の際にはキャップ止めを使用して、下水道本管への水流をストップします。キャップ止めを適切に使用することで、下水道本管へ汚水や異物が流れ込むことを防げます。

誤った方法や不適切な方法でキャップ止めを使用してしまうと、排水管が詰まったり、汚水や異物を下水道本管に流入させたりする原因となります。

予期せぬ事態が発生すると、修繕などを含めて多額の費用を請求されるリスクがあります。そうしたリスクを避けるためにも、キャップ止めは専門スキルを持った排水設備指定工事業者に依頼することが重要です。

下水道が破損した場合

解体工事に伴って下水道が破損した場合は、その修理費用などを支払う必要が出てきます。解体業者の過失によって下水道を破損させた場合は、解体業者の責任で修繕や費用の負担を行います。

一方で、解体する建物に下水道が接続されていることを事前に告知しなかった場合など、施主に過失が認められるケースでは施主に費用負担の責任が生じる可能性があります。

解体工事中は作業員に細心の注意を払ってもらうことが大切です。自治体との打ち合わせも含めて適切な対応を行い、下水道や排水設備に異常が出ないように心がけましょう。

解体工事の際の下水道と汚水の関係

ここからは、解体工事を行う際の下水道と汚水の関係についてご紹介します。下水道をそのまま残す場合は、キャップ止めをして汚水や異物が下水道本管の中に入り込まないようにする必要があります。

解体業者もそのことを意識する必要があります。しかし、実際には工事に伴って発生する汚水があることも事実です。汚水が発生した場合の対処方法や汚水の発生を減らす工夫を含めて確認しましょう。

工事に伴って発生する汚水

解体工事を行うと、どうしても汚水が発生することがあります。基本的には汚水が発生しても良いように下水道の閉栓やキャップ止めを行います。実際に発生する汚水としては、以下のものが挙げられます。

  • 基礎工事(掘削作業)によって発生する湧水
  • 建築作業で使用した重機や工具の洗浄排水
  • 工事中に発生する粉じんの飛散防止のために行う散水 など

解体工事を行う際は湧水が発生したり、散水のために水を利用したりすることが少なくありません。そうした水が汚水として水道管に流れ込まないように作業員としても高い意識を持つことが重要です。

汚水が発生した場合の対処方法

解体工事中に汚水が発生するのはやむを得ない部分もありますが、効果的な対処方法もあります。自治体が定める排除基準値を超える汚水が発生した場合は、以下の方法で処理を行うことが有効です。

  • 中和設備や沈殿槽などの除害施設(排水処理施設)を設置して汚水をきれいにする
  • 汚水が少量の場合は廃液として専門業者へ処分を委託する など

解体業者ができる対応としては上記の方法が挙げられます。自分たちで除害施設を設置できる場合は設置することが有効です。解体業者独自の対処方法があることもあるので、施主としても汚水が発生した場合の対応について確認すると良いでしょう。

汚水の発生を減らす工夫

解体工事中の汚水の発生をなくすことは難しいですが、その量を減らすことは可能です。汚水の量を減らせれば、処理や処分にかける手間を最小限にできます。その対応としては以下のやり方が挙げられます。

  • 濁った汚水やアルカリ水が発生しないような工法を採用する
  • 粉じん飛散防止のための散水は粉じんの湿し水として適切に行う
  • 汚水が発生する作業従事者に対して汚水の取り扱いについて周知徹底する など

こうした工夫をすることで汚水の発生を減らしたり、汚水への対応を上手く行ったりすることができます。汚水を発生させないことが一番ですが、発生しても対応できるだけの体制作りを強化することがポイントです。

排水基準などの確認

汚水の取り扱いに関しては事前に排水基準を確認することも大切です。排水基準については各自治体が公表しているので、その数値以下になるように工夫することが求められます。基準値を上回る排水を下水道に流し込まないように意識することも重要です。

ここでは大阪市の例を参考に、一部の基準についてご紹介します。

水質項目排水基準
カドミウム0.03mg/L以下
有機リン1mg/L以下
0.1mg/L以下
ヒ素0.1mg/L以下
トリクロロエチレン0.1mg/L以下
四塩化炭素0.02mg/L以下
フッ素8mg/L以下

ご紹介したのは一部の水質項目についてです。実際には、さらに多くの水質項目に関する排水基準が定められています。工事を行う前に一通り目を通して、指定された排水基準を意識しながら作業を行うことが重要です。

解体工事の際の接続ますの取り扱い

ここからは解体工事を行う際の接続ますの取り扱いについてご紹介します。下水道や排水設備の適切な取り扱いという点では、接続ますの取り扱いにも十分に留意する必要があります。接続ますとは何かという部分も含めて理解を深めることがポイントです。

撤去する際に行った方が良いことも含めて確認しましょう。

接続ますとは?

接続ますとは宅内から排出される排水を受け止める場所のことです。トイレやお風呂、洗面所やキッチンなど、それぞれ排水が行われる場所ごとに設置されていることが多く、下水道管に到達するまでに排水をためておくますのことを指します。

接続ますの他、雨水ますなどもあり、雨水をためるための場所として活用されています。1つ1つの接続ますや雨水ますなどの全ての排水が合流した箇所にあるますを「公共ます」と呼びます。

最終的には公共ますから下水道管へと排水して下水処理が行われます。各家庭から排出される排水の起点となるのが接続ますの存在です。

宅地側の取付管口をキャップ止め

解体工事に伴って接続ますや宅内排水設備を撤去する場合は、必ず宅地側の取付管口をキャップ止めすることがポイントです。適切にキャップ止めを行わないと、敷地内の土砂や汚水が取付管や下水道本管に流れ込んでしまいます。

そうすると閉塞事故につながる恐れもあるため注意が必要です。また、敷地内の土砂が流れ出すと陥没の原因になることがあります。

キャップ止めに関しては、排水設備指定工事業者が対応してくれます。施主としても専門的な知識やスキルを持った方を頼るように意識を持っておきましょう。

破損した場合は弁償も

解体工事に伴って接続ますを破損させたり損傷させたりした場合は、弁償となる可能性もあります。接続ますを撤去する場合は別ですが、残しておくにも関わらず重機などで損傷させてしまうことがあります。

損傷した接続ますでは上手く排水管理を行うことができないので、修繕や交換が必要となります。その際の費用は施主や解体業者に請求されるので、細心の注意を払って作業することが重要です。

撤去の際は写真撮影を欠かさない

解体工事に伴って接続ますを撤去する場合は、写真撮影を欠かさずに行うこともポイントです。写真撮影に関しては、自治体からどういった写真を残して欲しいのか伝えられます。基本的にはその内容に沿って撮影を行いましょう。一般的には以下の3枚の写真を求められることが多いです。

  1. 工事着手前:撤去する接続ますを確認できる写真
  2. 工事完了後:着手前と同じアングルで撤去したことを確認できる写真
  3. 施工状況:取付管口をキャップ止めしたことがわかる写真

自治体によって指定する写真の内容が異なることがあるので、自治体の指示に従うようにしましょう。最終的には適切な形で接続ますの撤去を終えたことを証明するための写真提出が必要です。

まとめ

解体工事を行う場合の下水道の取り扱いに注目して解説を行いました。下水道や排水設備に関しては普段なかなか目にする機会が多くないので、どういった取り扱いをすれば良いのかわからないことも多いでしょう。解体工事自体は解体業者に任せれば問題ありませんが、下水道や排水設備関連については自治体との連携が必要です。

下水道や接続ますを撤去するにしてもそのまま残しておくにしても、排水設備指定工事業者の協力を得ることが大切です。排水設備は自分たちだけのものではないので、第三者へ与える影響も考慮する必要があります。社会的な影響があることを視野に入れつつ、必要に応じて適切な対応を取りましょう。

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