防水工事の騒音や臭いは気になる?施工前に知っておきたい対策と注意点
防水工事は、建物を保護し続けるためには欠かせない作業ですが、施工中には「騒音」や「臭い」の問題がつきまといます。集合住宅や住宅密集地では、騒音や強い臭いが入居者や近隣住民にとって大きなストレスとなり、トラブルに発展する恐れもあるため、施主にとっては悩みの種になるでしょう。
本記事では、防水工法ごとの想定される騒音レベル、防水工法ごとの想定される臭いレベル、防水工事に伴う騒音・臭いの原因と対策などについて解説します。
防水工事は音がうるさい?臭いは発生する?
基本的に防水工事では騒音や臭いが発生する
防水工事は多くの場合、施工に際して騒音や臭いが伴います。採用する工法や使用する材料など、工事の内容によって騒音のレベルや臭いの強さが変わりますが、防水工事で騒音や臭いが発生すること自体は避けられません。
防水工事の騒音や臭いが原因で、周囲の住人にとって健康被害や日常生活に悪影響を及ぼす場合もあります。騒音の問題に関しては、工事の規模や使用する機材の種類によって異なりますが、高圧洗浄や下地調整のための作業などで大きな音が発生します。足場の設置や解体時にも作業音が響きやすいです。
また、臭いの問題では、防水工事で使用される防水材や溶剤などの化学物質が原因で、シンナー臭や強い刺激臭が発生しているのです。特にウレタン防水やFRP防水などの工法でシンナー系の溶剤が使用されるため、施工中に強い臭いが発生します。
防水工事で発生する騒音や臭いは、人間のみならずペットにとっても大きなストレスとなるでしょう。
防水工事の臭いや騒音による健康被害や悪影響
防水工事中に発生する臭いや騒音は、特に妊婦や赤ちゃん、ペットにとって、健康に悪影響を及ぼす可能性が高いので注意が必要です。具体的には、以下のようなリスクがあります。
妊婦や赤ちゃんへの影響
妊婦や赤ちゃんは、臭いや騒音に非常に敏感です。シンナー系の溶剤を使用する工事では、その強い臭いが呼吸器系や健康に悪影響を与える恐れがあります。特に胎児や新生児への影響が懸念され、長時間にわたって吸入すると健康リスクが高まります。
また、騒音は睡眠を妨げる原因にもなり、長時間続く工事では妊婦や赤ちゃんにとってストレスとなり得る要因です。
ペットへの影響
ペットは人間に比べて嗅覚や聴覚が非常に発達しているため、工事中の騒音や臭いが強いストレスを与え、健康リスクを引き起こす恐れがあります。特にシンナー臭や他の化学臭は、ペットにとって非常に不快な臭いとなっており、場合によっては健康被害を引き起こすことも考えられます。さらに、工事音による不安やストレスで、ペットの行動が変わるといったこともあり得るでしょう。
ペットの安全を考える場合、換気を徹底し、臭いが強い工事の日には可能であれば外出させるなどを検討してください。
防水工事の工法ごとの想定される騒音レベル
防水工事では、工法によっても発生する騒音レベルが異なります。集合住宅や住宅密集地では、騒音が近隣住民や居住者に与える影響を最小限にするため、各工法の特性を理解しておく必要があります。以下では、代表的な防水工法ごとの騒音レベルと日数の目安*を紹介します。
※目安に関しては施工する平米数などによって異なります。集合住宅を想定した日数です。
防水工法 | 騒音度数 | 騒音日数 |
---|---|---|
ウレタン防水密着工法 | ★☆☆☆☆ | 2~3日 |
ウレタン防水通気緩衝工法 | ★★☆☆☆ | 2~4日 |
FRP防水工法 | ★★☆☆☆ | 2~3日 |
塩ビシート接着工法 | ★☆☆☆☆ | 2~3日 |
塩ビシート機械固定法 | ★★★★★ | 2~5日 |
アスファルト防水熱工法 | ★★★★☆ | 2~5日 |
改質アスファルト防水トーチ工法 | ★★★★☆ | 2~5日 |
改質アスファルト防水常温粘着工法 | ★☆☆☆☆ | 2~3日 |
ウレタン防水密着工法
騒音レベル
★☆☆☆☆
騒音日数目安
2~3日
工法の総評
ウレタン防水密着工法は、液体状のウレタン防水材を塗布し、硬化させて防水層を形成する工法です。音が出るような機材の使用がほとんどなく、手作業が中心の工事となるため、騒音はほとんど発生しません。静かな工法として知られており、特に住人がいる環境でも比較的影響を抑えられます。
ウレタン防水通気緩衝工法
騒音レベル
★★☆☆☆
騒音日数目安
3~4日
工法の総評
ウレタン防水通気緩衝工法は、通気効果と緩衝効果を併せ持つシートの上にウレタン防水材を塗布し、通気層を設けて防水層を形成する工法です。一部で機材を使用するため、わずかな騒音が発生する程度です。通気層の設置や機材の駆動によって音が発生しますが、工法全体としては比較的静かで住人に与える騒音の影響は軽度です。
FRP防水工法
騒音レベル
★★☆☆☆
騒音日数目安
2~3日
工法の総評
FRP(繊維強化プラスチック)防水は、液状の不飽和ポリエステルと硬化剤を混合した防水材を塗布し、防水層を形成する防水工法です。劣化した既存防水層を撤去後、下地調整の際に研磨機などの機材を使用することがあり、作業に伴って騒音が発生します。特に、凹凸のある下地や古い防水層の撤去時には大きな音が出やすいです。
また、材料を混合・塗布する作業自体は比較的静かですが、施工場所に応じて多少の騒音発生は避けられません。FRP防水は耐久性が高いことから、屋上やベランダなどの施工に適していますが、集合住宅での施工では事前に住人への配慮が必要です。
塩ビシート接着工法
騒音レベル
★☆☆☆☆
騒音日数目安
2~3日
工法の総評
塩ビシート接着工法は、塩ビシートを接着剤で固定して防水層を形成するため、騒音となるような音の発生はほとんどありません。大規模な機材を使用しないので騒音レベルが非常に低く、住環境への影響を最小限に抑えられます。大規模な住宅街や集合住宅でも安心して施工できる静かな工法です。
塩ビシート機械固定法
騒音レベル
★★★★★
騒音日数目安
4~5日
工法の総評
塩ビシート機械固定法は、固定ディスクと呼ばれる専用の機材を用いて塩ビシートを固定して防水層を形成するため、やや騒音が大きくなります。集合住宅やマンションでの工事では、騒音などの発生に関して住人への事前の説明が必須です。また、騒音が発生する時間帯についても配慮した上で、工事時間を調整することが求められます。
アスファルト防水熱工法
騒音レベル
★★★★☆
騒音日数目安
4~5日
工法の総評
アスファルトを加熱して施工するため、加熱機材や搬入・搬出時に大きな音が発生します。また、作業員がアスファルトを施工する際の機材音や作業音も加わるため、騒音のレベルが高くなります。必然的に、住宅密集地での施工時には周囲への配慮が求められます。
改質アスファルト防水トーチ工法
騒音レベル
★★★★☆
騒音日数目安
4~5日
工法の総評
改質アスファルト防水トーチ工法は、改質アスファルトシート裏面にコーティングされたアスファルトをトーチバーナーを用いて溶かし、炙りながらシートを貼り付けて防水層を形成する工法です。そのため、バーナーの音やその他の機械音が大きく響くことがあります。トーチ工法では作業中に火や熱を使うため、周囲の安全対策と共に騒音の対策も必要となります。
改質アスファルト防水常温粘着工法
騒音レベル
★☆☆☆☆
騒音日数目安
2~3日
工法の総評
改質アスファルト防水常温粘着工法は、常温での施工が可能であり、粘着剤を使用して防水材を貼り付けて防水層を形成する工法です。常温で粘着剤を使用する工法で機械音は発生しないため、騒音がほとんど発生しません。騒音レベルが非常に低いことから静かな工法として評価されています。住環境や近隣への影響を最小限に抑えたい場合に適した工法です。
防水工事の工法ごとの想定される臭いレベル
防水工事では、使用する材料や工法によって発生する臭いレベルが異なります。防水工事で発生する異臭が近隣住民や居住者に与える影響を最小限にするため、各工法の特徴を理解しておきましょう。以下では、代表的な防水工法ごとの異臭レベルと発生日数の目安*を紹介します。
※目安に関しては施工する平米数などによって異なります。集合住宅を想定した日数です。
防水工法 | 異臭度数 | 異臭日数 |
---|---|---|
ウレタン防水工法 | ★★★☆☆ | 2~5日 |
FRP防水工法 | ★★★★☆ | 2~3日 |
塩ビシート防水工法 | ★☆☆☆☆ | 2~4日 |
アスファルト防水熱工法 | ★★★☆☆ | 2~5日 |
改質アスファルト防水トーチ工法 | ★★☆☆☆ | 2~5日 |
改質アスファルト防水常温粘着工法 | ★☆☆☆☆ | 2~3日 |
ウレタン防水工法
臭いレベル
★★★☆☆
異臭日数
2~5日
工法の総評
ウレタン防水工法は、塗料を希釈する粘度調整などにシンナー系溶剤を使用することが多く、施工中にシンナー特有の強い臭いが発生します。シンナー系溶剤などは防水材の粘度調整や硬化促進のために用いられますが、揮発性が高いため、特に換気が不十分な場所では臭いがこもりやすくなります。
施工中は臭いが強くなりますが、乾燥・硬化が進むと臭いは徐々に弱まります。最近では低臭のウレタン防水材なども登場しており、施工業者と相談しながら環境に配慮した材料を選ぶことも推奨されます。
FRP防水工法
臭いレベル
★★★★☆
異臭日数
2~3日
工法の総評
FRP(繊維強化プラスチック)防水工法では、不飽和ポリエステル樹脂やエポキシ樹脂に硬化剤を加えて混合し、ガラス繊維などの補強材と組み合わせて使用されます。硬化過程で揮発性有機化合物(VOC)が放出され、特有の化学臭が発生します。施工中は特に臭いが強くなり、換気が十分でない場合には臭いがこもりやすく、長時間にわたり残ることがあります。
スチレンという揮発性物質がFRP防水材に含まれており、施工時には強い臭いを放つ原因となります。スチレンモノマーを含む樹脂は特有の臭いを持ち、硬化が不十分だと施工後も臭いが残る場合があります。これは、硬化剤の適切な配合が不十分であることが原因です。
従来のFRP工法では前述したスチレン臭が問題視されていましたが、近年ではスチレン臭を抑えたノンスチレン樹脂型のFRP材料が登場しています。ノンスチレン樹脂型のFRP材料は、臭いの影響を軽減できるので、居住空間での使用にも配慮した選択が可能です。住環境や状況に応じてノンスチレン樹脂型の材料を使用することで、臭いによるトラブルを最小限に抑えられます。
塩ビシート防水工法
臭いレベル
★☆☆☆☆
異臭日数
2~4日
工法の総評
塩ビシート防水工法は、他の工法に比べて臭いの発生が非常に少ないのが特徴です。接着剤を使う場合もありますが、臭いが比較的弱いため、通気性の悪い施工場所や密集地などでの施工に向いています。さらに、機械固定工法を採用することで接着剤自体を使わない施工も可能で、この場合は臭いの発生をほとんど抑えられます。臭いが少ない防水工法として非常に人気があります。
アスファルト防水熱工法
臭いレベル
★★★☆☆
異臭日数
2~5日
工法の総評
アスファルト防水熱工法は、ルーフィングと呼ばれるシートと溶解釜の熱で溶かしたアスファルトを重ねて施工面に密着させる工法です。施工中に発生するアスファルト特有の臭いは、加熱時に最も強くなりますが、ウレタンやFRP防水に比べると控えめです。外部の施工では臭いが拡散されやすく問題は少ないものの、独特の臭いや煙の発生、火災のリスクがあるため、周辺環境への配慮が必要です。最近では、アスファルト防水の施工時に熱工法を採用するケースは少なくなっています。
改質アスファルト防水トーチ工法
臭いレベル
★★☆☆☆
異臭日数
2~5日
工法の総評
改質アスファルト防水トーチ工法は、アスファルトシートをトーチバーナーで加熱して溶かして施工面に接着させるため、アスファルトの独特の臭いが発生します。施工の際、加熱されたアスファルトから特有の臭いが生じますが、基本的には煙が出ず臭いもあまりないので、周辺環境への影響は少ないです。
アスファルト防水熱工法よりも臭いが発生しないほか、煙や火災の発生リスクがないことから採用されるケースが増えています。ただし、改質アスファルト防水トーチ工法の施工難易度は高いため、技術力を持つ職人が在籍している防水工事業者に依頼する必要があります。
改質アスファルト防水常温粘着工法
臭いレベル
★☆☆☆☆
異臭日数
2~3日
工法の総評
改質アスファルト防水常温粘着工法は、常温で施工可能な工法となっており、トーチバーナーなどを使って加熱する必要がなく、熱を使用する工法とは異なり、工事を行う際の臭いが非常に少ないのが特徴です。また、加熱機材を使用しないことから火気を避けたい場所でも安全に施工可能なので、アスファルト防水工事の中で主流な工法となっています。ただし、熱を使用する工法に比べると、防水層の密着度などは劣っているため、防水性能に多少の不安は残ります。
防水工事における騒音発生の主な原因
防水工事では、さまざまな作業工程で騒音が発生します。使用する機材や作業内容によって騒音のレベルが異なり、集合住宅や密集地では住人や近隣住民に影響を与えることが想定されます。以下では、防水工事で発生しやすい騒音の主な原因について紹介します。
- 高圧洗浄機の使用
- 工具による下地調整作業
- 足場の設置や解体作業
- 機械設備の運転音
- 資材の搬入・搬出
- 作業員の声や足音
- 工事車両のアイドリング音
高圧洗浄機の使用
高圧洗浄機は、防水工事の準備段階として施工箇所を洗浄するために使われます。洗浄作業では、高圧の水流を利用して建物の汚れや旧塗膜を除去しますが、高圧洗浄機の強力な水圧音が大きな騒音を引き起こします。特にコンクリートや金属表面、屋上や外壁など広範囲の洗浄では音が響くことがあります。マンションやアパートなどの集合住宅の場合、洗浄作業の音が響きやすいため、作業時間の調整や事前通知が必要です。
工具による下地調整作業
防水工事の施工方法によっては、施工前に下地調整が行われます。下地調整の工程では、ケレンハンマーやスクレイパーなどの工具を使用して下地の補修や整備を行う場面で大きな音が発生します。コンクリートのひび割れ修復や金属表面の削り作業などでは、金属音や振動音が周囲や建物全体に響き渡ります。施工方法によっては下地調整作業を避けられず、大きな騒音の原因となります。
足場の設置や解体作業
防水工事において、足場の設置や解体は大きな騒音を伴う工程です。金属パイプや部品の組み立てや解体時に発生する衝突音が工事現場周囲に響きます。マンションやアパートなどの工事では足場設置が不可欠なため、朝早い作業時間や騒音が出やすい工程には配慮が必要です。住人や近隣への事前通知を行い、作業の時間帯を調整することが求められます。
機械設備の運転音
アスファルト防水やシート防水の機械固定工法などでは、施工の際に機材を使用する場面が多く、運転音が騒音の原因となります。アスファルト防水ではアスファルトを加熱するトーチバーナーや溶融釜が使われ、シート防水では塩ビシートを固定するための機械の音が工事現場全体に響き渡ります。工事現場全体が音の発生源となるため、周辺住民への影響が大きくなります。
資材の搬入・搬出
防水工事の現場に必要な資材を搬入・搬出する際にも騒音が発生します。特に、大規模な防水工事では大量の資材を運搬するため、トラックや重機などの作業音、資材の落下音などが大きな騒音の原因となります。搬入・搬出に伴う騒音は住人や近隣住民に迷惑となりやすいため、集合住宅などでは搬入時間や作業のタイミングを調整する配慮が必要です。
作業員の声や足音
防水工事の現場では、作業員同士の声や指示が飛び交い、足音なども騒音の一因となります。足場の上での作業中や移動する際の金属音、作業員同士のやり取りする声、機材の運搬時には金属音とともに運ぶ際の騒音などが発生します。人が作業する以上は避けがたい騒音ですが、作業員の意識向上や声量の調整などである程度は軽減することが可能です。
工事車両のアイドリング音
防水工事で資材の搬入・搬出を行う際、大型トラックや重機などの工事車両が使用されます。工事車両は待機中にアイドリング状態になることが多く、重機のアイドリング音が住人や近隣住民にとって不快な騒音になる場合があります。また、車両が頻繁に出入りする工事現場では、エンジンの始動音や車両の移動音も騒音に加わります。特に住宅街やマンション周辺ではアイドリング音が響きやすいため、待機中はエンジンを停止するなどの配慮が求められます。
防水工事における騒音は、工事の種類や施工する場所に応じて大きく異なります。騒音トラブルを避けるためには、騒音発生の原因を把握した上で工事時間の調整や事前周知をするなど、住人や周辺環境への対応を行うことが重要です。
防水工事における臭い発生の主な原因
防水工事では、使用する材料や施工環境により、作業中にさまざまな強い臭いが発生します。使用する防水材や工法によっても異臭のレベルが異なりますが、強い臭いの場合は集合住宅や密集地だと近隣住民や住人に不快感を与えてしまいます。
以下では、防水工事で発生する異臭の主な原因について紹介します。少しでも臭いを抑えられる防水材や工法を選ぶ参考にしてください。
- シンナー系溶剤の使用
- 材料中の化学物質
- 換気が不十分な環境
- 施工時の温度や湿度
- 溶剤の乾燥過程での臭い
シンナー系溶剤の使用
シンナー系溶剤は、主にウレタン防水やFRP防水のような塗膜防水の工法で施工する際に使用されることが多いです。塗膜防水工事において、溶剤は防水材の硬化や希釈に使われ、強い化学臭や強いシンナー臭が発生します。シンナー系溶剤には揮発性有機化合物(VOC)が含まれており、揮発時に臭いが広がります。換気が悪い場所では臭いがこもりやすく、長時間の吸入は健康への悪影響も懸念されるため、作業時には適切な換気が不可欠です。
材料中の化学物質
防水工事を行う際、防水材に含まれる化学物質も臭いの原因となります。例えば、揮発性有機化合物(VOC)が含まれる材料は、施工中に揮発して空気中に拡散し、特有の臭いが発生します。これらの化学物質は健康に有害な影響を与えると考えられ、特に長時間の露出では頭痛やめまい、吐き気などの症状が出ることもあります。そのため、使用する防水材の選定や作業環境に応じた対策が求められます。
換気が不十分な環境
防水工事の施工場所が換気不十分な環境であれば、臭いが強くこもってしまいます。特に空気の流れが悪い施工場所だと滞留しやすく、臭いが長時間遺って住人に不快感を与えます。そのため、マンションや集合住宅では臭いが滞留しないよう、換気を考慮して外部に臭いを逃がす対応を行う必要があります。
施工時の温度や湿度
施工時の気温や湿度も臭いの発生に影響を与えます。温度が高いと溶剤の揮発が加速し、臭いが一層強くなる傾向があります。一方、湿度が高い環境では臭いが空気中にこもりやすく、外に逃げにくくなります。特に夏場の施工では、臭い対策として温度管理や作業時間の調整が必要です。
溶剤の乾燥過程での臭い
ウレタン防水やFRP防水などのような塗膜防水工事の施工後、溶剤を含んでいる防水材の乾燥過程でも臭いが発生します。防水材と溶剤が乾燥しながら揮発成分が空気中に放出されるためです。使用した防水材や混合比率によっては、乾燥に数時間以上かかる場合もあるため、その間も十分な換気が必要です。塗膜防水材に硬化剤を入れていなかったり、量が適切でない場合には乾燥してもしっかり硬化せず、施工後も臭いが発生し続けることがあります。なお、一般的なウレタン防水では硬化に時間がかかります。
防水工事で発生する臭いは、使用する防水材や溶剤、施工する場所の環境などに大きく依存します。臭い発生のリスクを軽減するためには低臭気の防水材を採用したり、十分な換気が不可欠です。施工前に防水工事業者と相談し、住民や周囲の環境に配慮した施工計画を立てることが推奨されます。
防水工事の騒音・臭い問題を防ぐポイント
防水工事の施工中に発生した騒音や臭いが酷い場合、物件の住人や近隣の生活に支障をきたし、トラブルになる恐れがあります。騒音や臭いの問題を最小限に抑えるためには、適切な対策と周囲への配慮が欠かせません。以下では、防水工事の騒音・臭いに関するトラブルを防ぐための具体的な対策を紹介します。
- 防水工事業者による事前案内とフォロー
- 工事日程や施工する時間帯の考慮
- 騒音・臭いを加味した工法や材料の選定
- 騒音を軽減化する養生による対策
- 臭いがこもらないよう適切な換気を確保
- マンションの24時間換気システムを切る
- 集合住宅の場合、相談窓口を設ける
防水工事業者による事前案内とフォロー
事前通知は、騒音や臭いのトラブルを防ぐための基本です。工事日程や発生する可能性のある騒音・臭いについて詳細に伝え、住人の理解と協力を得ることが重要です。特に集合住宅やマンションでは、掲示板やチラシを活用し、工事の開始日や終了予定日、影響が大きい作業の時間帯などを明示しましょう。結果的に、住人が事前に外出や換気の調整を行いやすくなります。
工事日程や施工する時間帯の考慮
工事時間帯の調整は、騒音・臭い問題を軽減するための大きな要素です。特に早朝や夕方は生活の影響が大きい時間帯のため、午前10時~午後4時などの比較的生活に支障が少ない時間に工事を行うように配慮します。また、工事の長期化を避けるために住人のスケジュールや周辺の状況に配慮し、最適な日程を組むことでトラブルを最小限に抑えられます。
騒音・臭いを加味した工法や材料の選定
騒音や臭いを抑える工法や材料の選定は非常に重要です。例えば、ウレタン防水やFRP防水ではシンナー臭が強く発生するため、有害物質を含まず環境対応型で低臭気のウレタン防水材を使用するか、臭いが少ない塩ビシート防水や改質アスファルト防水の常温粘着工法を選ぶことで、臭いの発生を抑えられます。また、機械音が少ない工法を選ぶことも騒音対策として有効です。施工業者と相談して、周辺環境に適した工法を検討しましょう。
騒音を軽減化する養生による対策
防音シートや防音パネルの設置により、工事現場の騒音を外部に漏らさない対策が可能です。特にマンションや住宅密集地では、防音シートを設置することで金属音や作業音を軽減できます。さらに、作業員による配慮や作業手法の工夫によっても騒音の発生を最小限に抑えられます。
臭いがこもらないよう適切な換気を確保
防水工事中に発生する臭いを効率的に排出するためには、適切な通気・換気を確保しておくことが推奨されます。シンナー系溶剤や揮発性有機化合物(VOC)が使用される防水工法では、臭いが施工場所にこもりやすいため、臭いを伴う空気の循環をさせてください。通気・換気によって臭いが室内や施工周辺にこもるリスクを低減し、住民や作業員の健康被害を防げます。
マンションの24時間換気システムを切る
マンションやアパートなどの集合住宅で24時間換気システムが導入されている場合、防水工事中に換気システムが稼働していると、外部からの臭いを室内に引き込む恐れがあります。そのため、工事中は一時的に換気システムを停止し、室内が臭い場合は窓を開けるなど自然換気に切り替えることが推奨されます。施工業者と相談し、適切な換気の方法を確認しておくとよいでしょう。
集合住宅の場合、相談窓口を設ける
集合住宅では、住人の意見や苦情へ迅速に対応するために、工事中の相談窓口を設置することが効果的です。住人が不快に感じた場合、迅速に対応できる環境を整えることでトラブルの発生や拡大を防ぎやすくなります。特に工事が長期化する場合には、定期的な進捗報告やフォローを行うことが、住人との信頼関係構築につながります。
防水工事における騒音や臭いの問題は完全には避けられませんが、適切な事前準備と周囲への配慮でトラブルを最小限に抑えられます。事前の通知、工法の選定、換気環境など、細やかな対策を講じることで、工事による不快感を軽減し、スムーズな施工が可能になります。
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防水工事でトラブルが発生する原因とは?面倒事を避けるための対処法も紹介
防水工事は、建物を保護し続けるためには欠かせない作業ですが、施工中には「騒音」や「臭い」の問題がつきまといます。集合住宅や住宅密集地では、騒音や強い臭いが入居者や近…
防水工事の騒音や臭いに関するよくある質問
- マンションやアパートの改修防水工事は騒音でうるさいのでトラブルになりますか?
- マンションやアパートの改修防水工事は臭いが発生してトラブルになりますか?
- ベランダや屋上の防水工事依頼を予定していますが、施工時の臭い問題が気になります
- 防水工事中に発生するシンナー臭などの臭いはペットへの悪影響はありますか?
- 防水工事中に発生する臭いや騒音は妊婦や赤ちゃんに健康被害や悪影響はありますか?
マンションやアパートの改修防水工事は騒音でうるさいのでトラブルになりますか?
マンションやアパートの防水工事は、高圧洗浄機の使用や足場の設置・解体、機材使用による下地調整作業などで大きな騒音が発生します。騒音トラブルを防ぐためには、作業時間帯の調整や住人への事前通知を行うなどの配慮が重要です。
マンションやアパートの改修防水工事は臭いが発生してトラブルになりますか?
防水工事に使用する防水材によりますが、ウレタン防水やFRP防水で使用されるシンナー系溶剤が原因で強い臭いが発生し、物件の住人や近隣住民とのトラブルになる恐れがあります。臭いが少ない低臭気の防水材を選んだり、通気・換気の確保などによって、臭いの影響を軽減できます。
ベランダや屋上の防水工事依頼を予定していますが、施工時の臭い問題が気になります
ベランダや屋上の防水工事では、ウレタン防水やFRP防水の場合、施工時にシンナー臭が発生するため、臭いが気になる方も多いです。換気が悪い環境では臭いがこもりやすく、生活や健康に影響を与える可能性があります。どうしても臭いが気になる場合、事前に施工業者に低臭気の防水材を使用できるか相談するのがおすすめです。また、防水工事の期間中は一時的に外出するなどの対策を取ることも検討しましょう。
防水工事中に発生するシンナー臭などの臭いはペットへの悪影響はありますか?
ペットは人間よりも嗅覚が非常に敏感であり、シンナー系の溶剤などによる臭いはストレスを与えるだけでなく、健康に悪影響を及ぼす可能性があります。防水工事中に異臭が気になる場合は換気を行い、臭いが強くなる工程ではペットを別の場所に避難させることを検討するのが理想的です。
防水工事中に発生する臭いや騒音は妊婦や赤ちゃんに健康被害や悪影響はありますか?
防水工事で発生するシンナー臭や騒音は、妊婦や赤ちゃんに悪影響を及ぼす恐れがあります。特にシンナー系溶剤を長時間吸入すると、妊婦にとっては胎児への影響や体調不良のリスクがあり、赤ちゃんの場合は呼吸器系に負担がかかります。また、騒音が続くと睡眠や精神状態に悪影響を与えるでしょう。必要に応じて工事期間中は外出したり、換気を行うなどして工事の影響を軽減することが大切です。
まとめ
今回は、防水工法ごとの想定される騒音レベル、防水工法ごとの想定される臭いレベル、防水工事に伴う騒音・臭いの原因と対策などについて解説しました。
防水工事を行う上では、騒音や臭いは避けられない問題となりますが、適切な対策を講じることで住人や近隣住民への影響を最小限に抑えられます。マンションや集合住宅の場合は、工事前の事前通知や住人とのコミュニケーションを徹底し、工事内容や時間帯を配慮して必要な養生や換気の対策を行いましょう。また、工事後のアフターフォロー体制を整え、万が一トラブルが発生した場合には迅速に対応すれば、長期的な信頼関係を築くことができます。
防水工事の工法や防水層を形成する材料の選定も、騒音や臭いを最小限に抑えるために考慮すべき要素です。騒音を抑えられる工法としては、塩ビシート防水や改質アスファルト防水の常温粘着工法があります。臭いを最小限に抑えられる対処方法としては、低臭気の防水材や工法を選定して使用するのが確実です。
最終的に、防水工事を成功させるには技術面だけでなく、施工業者と物件住人との円滑なコミュニケーションによって左右されます。騒音や臭いを適切に対処し、安心して防水工事を進められる環境づくりが大切です。
本記事が、施工中の騒音や異臭が気になっており、マンションや集合住宅など物件の防水工事を検討している方の参考になれば幸いです。