防水工事の費用はなぜ高いのか?坪・平米単価の費用相場と金額を抑える方法も解説

防水工事は建物の寿命や快適性に大きく影響する工事なので、10年前後で定期的に修繕を行う必要があります。防水工事は高額な費用がかかることも多く、依頼するにしても金銭的に負担を感じる方もいるでしょう。しかし、あまりにも安すぎる業者の場合は逆にリスクが高くなります。

本記事では、防水工事の費用が高くなる理由、防水工事の費用を抑える方法、金額が安すぎる場合のリスクなどについて解説します。防水工事を検討していて少しでも費用を安くしたい方は、ぜひ参考にしてください。

防水工事の費用が高くなる要因

建物の寿命や快適性を保つために必要な防水工事ですが、施工する建物の規模などによっては費用が高くなります。では、防水工事の費用が高くなる要因は何でしょうか?

防水工事の費用が高くなる要因は、主に以下の3つです。

  1. 防水工事の種類
  2. 防水工事の規模
  3. 防水工事の難易度

防水工事の種類

防水工事には、ウレタン防水、FRP防水、塩ビシート防水、ゴムシート防水、アスファルト防水など、さまざまな工法の種類があります。各工法それぞれに特徴やメリット・デメリットがあり、材料などによって費用も異なります。防水性能や耐久性が高い防水工事ほど費用も高くなります。

防水工事の規模

建物などにおいて防水工事を行う面積や範囲の規模が大きい場合、その分の費用が高くなります。防水工事を施工する規模が大きいほど、必要になる材料や人件費などの費用も増えます。また、施工範囲の規模が大きいと防水工事を行う工期も長くなります。工期が長くなると工事中の生活に不便が生じたり、工事による騒音や振動などの影響も大きくなります。

防水工事の難易度

防水工事を行う場所や建物などの状況次第では、技術力が求められて施工難易度が高くなってしまうため、費用に加算されることがあります。施工場所が高所や狭所だったり、屋根やベランダの形状が複雑になっていると、防水工事の難易度が高いので手間がかかります。防水工事の難易度が高いほど、専門的な技術や機材が必要なので費用も高くなります。

上記のように、防水工事の費用が高くなる要因は、施工方法、規模、難易度によって異なります。また、業者や地域によっても変わるため、複数社から見積もりを取って比較するようにしましょう。

防水工事の費用相場、坪・平米単価

防水工事の費用は様々な要因によって変わりますが、一般的な費用相場や金額の目安を知ることで修繕を計画する際に役立ちます。以下では、防水工事の種類ごとに費用相場や金額の目安を確認していきましょう。

施工方法 費用 耐用年数 工期 推奨
ウレタン防水 5,000~7,500円/㎡
15,000~22,500円/坪
10年 2日~1週間 全て
FRP防水 6,000~9,000円/㎡
18,000~27,000円/坪
10年 1~3日間 ベランダ
ゴムシート防水 4,000~8,000円/㎡
12,000~24,000円/坪
10年 1~3日間 屋上
塩ビシート防水 4,000~8,000円/㎡
12,000~24,000円/坪
10~15年 1~4日間 屋上
アスファルト防水 6,000~8,000円/㎡
18,000~24,000円/坪
15~20年 1~2週間 ビル屋上

1坪あたりの金額を求めたい場合は、㎡単価の金額に3.305を掛けて計算してください。1坪=3.30579平方メートル

ウレタン防水

ウレタン防水は、ウレタン樹脂を液状にして屋根やベランダなどに塗布する防水工事の工法です。防水性能が高く施工が簡単で、形状に合わせて柔軟に対応できるというメリットがあります。一方で、耐久性が低く紫外線に弱いため、色あせや劣化が起こりやすいというデメリットもあります。

ウレタン防水の費用相場は、約5,000~7,500円/㎡(15,000~22,500円/坪)です。金額の目安は以下の通りですが、別途細かい費用がかかるため、最終的な見積もり金額はもう少し増えます。

10㎡のベランダの場合 約50,000~75,000円
10坪のベランダの場合 約150,000~225,000円
50㎡の屋根の場合 約250,000~375,000円
50坪の屋根の場合 約750,000~1,125,000円

FRP防水

FRP防水は、繊維強化プラスチック(FRP)という素材を用いて、屋根やベランダなどに防水層を形成する防水工事の工法です。耐衝撃性や耐熱性が高く、耐水性や成形性も良い上、紫外線にも強いというメリットがあります。一方で、木造などの伸縮性がある場所で使用した場合、剥がれやひび割れが起こりやすいというデメリットもあります。

FRP防水の費用相場は、約6,000~9,000円/㎡です。金額の目安は以下の通りですが、別途細かい費用がかかるため、最終的な見積もり金額はもう少し増えます。

10㎡のベランダの場合 約60,000~90,000円
10坪のベランダの場合 約180,000~270,000円
50㎡の屋根の場合 約300,000~450,000円
50坪の屋根の場合 約900,000~1,350,000円

塩ビシート防水

塩ビシート防水は、塩化ビニル樹脂を素材の原料としたシートを屋根やベランダなどに貼り付ける防水工事の工法です。防水性能や耐久性が高く、色や柄の種類が豊富なので見た目が良いというメリットがあります。一方で、作業工程に専門性が求められるものが多いので施工が難しい工法な上、熱に弱く変形や縮みが起こりやすいというデメリットもあります。

塩ビシート防水の費用相場は、約4,000~8,000円/㎡です。金額の目安は以下の通りですが、別途細かい費用がかかるため、最終的な見積もり金額はもう少し増えます。

10㎡のベランダの場合 約40,000~80,000円
10坪のベランダの場合 約120,000~240,000円
50㎡の屋根の場合 約200,000~400,000円
50坪の屋根の場合 約600,000~1,200,000円

ゴムシート防水

ゴムシート防水は、シート状に加工された合成ゴム製の防水シートを屋根やベランダなどに貼り付ける防水工事の工法です。耐久性や耐熱性が高く、環境に優しいというメリットがあります。一方で、角や隅の施工が難しい工法となっており、傷付きやすい上に色あせや劣化が起こりやすいというデメリットもあります。

ゴムシート防水の費用相場は、約4,000~8,000円/㎡です。金額の目安は以下の通りですが、別途細かい費用がかかるため、最終的な見積もり金額はもう少し増えます。

10㎡のベランダの場合 約40,000~80,000円
10坪のベランダの場合 約120,000~240,000円
50㎡の屋根の場合 約200,000~400,000円
50坪の屋根の場合 約600,000~1,200,000円

アスファルト防水

アスファルト防水は、アスファルトを含浸させてコーティングしたルーフィングシートを屋根やベランダなどに溶着させる防水工事の工法です。耐久性や耐熱性が高く、20年程度の寿命なのでコストパフォーマンスが良いというメリットがあります。一方で、施工実績や経験が豊富な業者ではない場合、施工不良などトラブルが発生しやすいというデメリットもあります。

アスファルト防水の費用相場は、約6,000~8,000円/㎡です。金額の目安は以下の通りですが、別途細かい費用がかかるため、最終的な見積もり金額はもう少し増えます。

10㎡のベランダの場合 約60,000~80,000円
10坪のベランダの場合 約180,000~240,000円
50㎡の屋根の場合 約300,000~400,000円
50坪の屋根の場合 約900,000~1,200,000円

上記のように、防水工事の種類や工法によって費用相場や金額の目安が異なります。業者によっては、見積もり時の工法や細かな点が異なっていることも多く、金額が大きく違うというケースも非常に多いです。そのため、施工予定の建物や場所ではどの工法が適切なのか、という点などを簡単にでも理解することも必要です。

防水工事の費用を構成する主な内訳

防水工事の費用を構成する主な要素は以下の4つです。

  1. 材料費
  2. 施工費
  3. 足場費
  4. その他費用

防水材料費

防水工事に使用する材料の費用です。防水工事の種類や工法によって異なりますが、一般的にはシート防水が最も安く、FRP防水が最も高いです。

防水施工費

防水工事を行う作業員の人件費や機械費などの費用です。防水工事の規模や難易度、工期などによって変わりますが、一般的には屋上などの広い場所や複雑な形状の場所は高くなります。

足場費

防水工事を行うために必要な足場の設置や撤去の費用です。防水工事の場所や高さ、面積などによって変わりますが、一般的には屋上や高層階の場所は高くなります。

その他費用

防水工事に伴って発生するその他の費用です。機材のレンタル費用、防水工事前の下地処理や補修、防水工事後の清掃や廃材処分、防水工事中の養生や警備員の人件費などがあります。

上記は主な項目ですが、実際の見積書内では優良業者ほど各工程や施工場所で細かく項目ごとに費用が出されます。全てではありませんが、一式などの省略された見積書を提示するような業者は、不当に金額を上乗せする目的で細かい項目は出してこないという判断もできます。

防水工事の費用を抑える方法

防水工事の費用は建物や施工場所、依頼する業者によっても大きく変わりますが、自らの努力で費用を抑える方法もあります。以下では、防水工事の費用を抑える方法を紹介します。

  • 火災保険の適用を申請
  • 防水工事のタイミング
  • 適切な施工方法の選択
  • 必要以上の工事は回避
  • 定期的なメンテナンス
  • 補助金や助成金の活用
  • 複数業者に相見積もり

火災保険の適用を申請

施工予定の範囲が自然災害による破損を伴う場合は、火災保険で防水工事費用の一部を補償してくれる可能性が高いです。例えば、台風や地震などによって屋根や外壁が損傷し、雨漏りが発生した場合は、火災保険の対象となることがあります。

ただし、保険会社の調査員から経年劣化によるものだと認定された場合などは、もちろん火災保険の適用はされません。そのため、火災保険の適用を申請する際は、損傷の原因や程度を正確に説明する必要があります。火災保険の内容や条件は契約した保険会社やプランによって異なるので、事前に確認しておきましょう。

防水工事のタイミング

防水工事を依頼するタイミングも少なからず費用を抑えることに繋がります。10年経過していない場合など、依頼する時期が早すぎるとまだ必要のない工事を行ってしまい、無駄な出費になることがあります。

逆に15年以上経過している場合のように、遅すぎると雨漏りなどの被害が拡大して修理範囲が広がり、費用が高くなることがあります。そのため、建物の状態などを考慮した上で、10~15年を目処に信頼できる業者に依頼して見てもらいましょう。

10年以上になったら定期的に点検

防水工事は、一般的に建物の築年数が10年以上になったら定期的に点検を行い、必要に応じて修繕工事の実施が推奨されます。また、工事そのものは雨の少ない季節に行うことが望ましいです。雨の多い季節に行うと工事の進行が遅れたり、工事の品質が低下したりするリスクが生じます。

適切な施工方法の選択

防水工事の施工方法は多岐にわたります。その中から、施工する建物に最適な工法を選んでもらえば、将来的に無駄な出費を抑えることができます。見積もりを行う業者によって、同じ施工場所でも提案される工法が異なることも多いので、複数社から意見を聞くと良いでしょう。

必要以上の工事は回避

必要以上の工事を行うと、費用が無駄に増えてしまうことがあります。そのため、今行うべき必要な工事の範囲を把握して依頼することが重要です。例えば、屋根の一部に雨漏りが発生した場合は、状況次第では部分補修で対応できます。必ずしも全体を防水工事する必要はありませんが、多くの業者では高い方を提案してくるでしょう。

ただし、一部だけを部分補修した場合でも、依頼した業者に経験がなかったり技術力がないと、雨漏りなどが改善しないトラブルに巻き込まれてしまいます。そのため、複数の業者に見積もりを依頼した上で、話を聞いて検討する必要があります。

工事内容や工事範囲を明確にして発注

また、防水工事を依頼する際は必要な工事内容や工事範囲を明確にした上で、業者との契約内容に組み込んでおきましょう。不必要な工事を追加されたり、工事範囲を広げられたりすることで、費用が高くなることを避けられます。

定期的なメンテナンス

防水工事は一度行えば終わり、というものではありません。10~15年ほどで定期的なメンテナンスを行うことで、大規模な修繕を必要とするような状況を未然に防ぎ、長期的に見て費用を抑えられます。

メンテナンスや清掃を行えば防水工事の効果を持続させられる上、修繕対応の必要性やタイミングを把握することができます。点検や清掃を怠ると防水工事の効果が低下しても気づかず、雨漏りなどの被害が発生して初めて気づくことになります。そのため、防水層のメンテナンスは定期的に行い、トップコートなどで耐久性を上げておきましょう。

補助金や助成金の活用

一部の自治体では、防水工事に対する補助金や助成金制度を設けています。補助金や助成金を活用することで、各自治体によって金額は異なりますが工事費用を大幅に抑えることが可能です。

ただし、補助金や助成金を受けるためには、条件を満たした上で申請や審査などの手続きが必要です。また、補助金や助成金制度の内容や申し込み条件は、発行する自治体や時期によって異なるので事前に確認してください。

複数業者に相見積もり

複数の防水工事専門業者に見積もりを依頼し、それぞれの見積もりを比較することで、最もコストパフォーマンスの良い業者を選ぶことに繋がります。防水工事は、業者によって工事内容や工事費用が大きく異なるため、一つの業者に決めつけずに複数の業者から提案してもらいましょう。

また、複数の業者に見積もりを依頼することで、業者同士の競争を促して値引きやサービスを引き出せる場合もあります。ただし、工事を依頼する際は工事内容や工事費用だけでなく、業者の信頼性や実績なども考慮しましょう。費用が安いだけの業者に依頼すると、そもそも防水工事の品質が低かったり、トラブルが発生するリスクが非常に高くなります。

金銭的に厳しい場合、リフォームローンで調達も検討

防水工事を行う施工範囲が広い場合などは高額な費用がかかることも多く、依頼したくても一括で支払うことができない方が増えています。金銭的に防水工事費用の捻出が厳しい場合、リフォームローンという住宅の改修や修繕に特化したローンがあります。リフォームローンは、銀行や信用金庫などの金融機関だけでなく、業者やホームセンターなどでも提供されています。

そのため、防水工事を行う際の金銭的な負担を軽減する目的で、リフォームローンを利用することも一つの方法です。ただし、リフォームローンを利用する際は、金利や手数料などの費用や返済計画を立てましょう。無理な借入や返済をすると経済的な負担が増えてしまいます。

防水工事費用が安すぎる場合は注意

防水工事の費用が市場価格よりも大幅に安い場合は注意が必要です。安すぎる業者は、必要な工程が省略されているなどの手抜きで工事の品質が低い、または技術力がないので施工が適切ではないリスクが高いです。

工事費用があまりにも安すぎる業者に依頼すると、以下のような問題が発生する可能性があります。

  1. 防水工事の品質が低い
  2. 防水工事の保証がない
  3. 防水工事のアフターサービスがない
  4. 防水工事の途中で追加料金が発生する
  5. 防水工事のトラブルが発生する

防水工事の品質が低い

安価な業者は必要な工程を省略したり、手抜きをしたりすることが考えられます。防水工事の品質が低いと、工事後に水漏れやカビ、ひび割れなどのトラブルが発生する可能性が高くなります。また、工事の品質が低いことで建物内部や設備にも悪影響を及ぼし、雨漏りなどで建物の寿命を縮める恐れがあります。

防水工事の保証がない

防水工事の保証は、工事の品質や信頼性を施工した業者が示すものです。施工内容に関する保証がないと、工事後に想定外の不備などでトラブルが発生した場合、自己負担で修理や再工事を行わなければならない可能性があります。

防水工事のアフターサービスがない

防水工事のアフターサービスがない業者は、工事後にすぐ問題が起こっても対応しないなど、工事の品質に問題がある可能性を疑いましょう。防水工事のアフターサービスがないと、工事後にトラブルが発生した場合に対応が遅れたり、対応してもらえない場合があります。

また、有償にはなりますが定期的な点検やメンテナンスを行うのは、防水効果を持続させるために役立ちます。10~15年程度を目安にメンテナンスや点検を行わないと、防水層などに損傷が発生した場合に対応が遅れて建物にもダメージが蓄積します。そのため、アフターフォローサービスを実施していて、メンテナンスの計画や定期点検を実施してくれる業者を選ぶようにしましょう。

防水工事の途中で追加料金が発生する

他と比べて金額が安すぎる業者は、見積もりを低く見せかけて契約を取り付けた後に、工事の途中で追加料金を請求することがあります。このような悪質業者は、具体的な工事の内容や項目ごとの費用について、契約前に十分な説明や確認を行わない場合が多いです。

防水工事のトラブルが発生する

防水工事の施工技術力がなく、ただ安いだけの業者は工事でトラブルが発生する可能性が高いです。工事中にトラブルが発生して完成が遅れたり、業者の対応内容で近隣住民に迷惑をかけてしまうなど、様々なリスクがあります。

安かろう悪かろうという言葉のように、安すぎる防水工事業者に依頼してしまった場合、結局は普通よりも高くつくことがあります。防水工事は建物の寿命や快適性に大きく影響するため、費用だけでなく工事の品質や業者の信頼性なども重視しましょう。

まとめ

今回は、防水工事の費用が高くなる要因、防水工事の費用を抑える方法、安すぎる場合のリスクなどについて解説しました。

防水工事の費用は、選定する業者や工法など様々な要素によって変動します。しかし、最低限の知識を身に付けた上で工事の計画を立てることで、費用を抑えつつ品質の高い防水工事を行えます。施工場所の状況に最適な選択をするためには、複数の業者から見積もりを取ることをお勧めします。

また、自治体の補助金や助成金、火災保険の適用など、利用可能な費用軽減の方法も探すと良いでしょう。防水工事は建物という大切な財産を守るために必要な投資です。失敗しないよう、安いだけではなく適切な業者を選択して依頼するようにしましょう。