マンションの減価償却の計算方法!確定申告前に知っておこう
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マンション売却で収益が出た際には、確定申告の必要があります。これは売却益に応じた所得税の支払い義務が発生するからです。
そして、その売却益に大きく影響してくるのが減価償却費で、額面に応じて売却益が違ってきます。
そのためマンション売却で、どれくらいの収益が得られるのかを予測するには、減価償却費がいくらになるのかを把握しておく必要があるのです。
しかし、自分で事業をしているのならいざ知らず、一般のサラリーマンに減価償却の高度な知識を求めるのは酷な話ですよね。
そこで今回は「マンションの減価償却なんてチンプンカンプンだ!?」という人にもしっかりと理解してもらえるよう、分かりやすくマンションの減価償却と、その計算方法について解説していきます。
マンション売却を検討している人は、ぜひ最後まで目を通して、参考にしてください。
家を売りたいと考えている方へ
そもそも減価償却って何なの?
それではまずは、今回のテーマの根幹となる減価償却について理解してもらうことにします。
「減価償却くらい知っているよ」という人もいるでしょうが、今回の記事を分かりやすく読み進めてもらうためにも、おさらいの意味を込めて目を通すようにしてください。
減価償却の基本的な考え方
事業を行う際には、様々な設備が必要になります。
タクシー会社なら自動車、配送会社ならトラックやフォークリフトといった具合に、業種に応じて必要になる設備は違いますが、事業を継続していく上で、これら設備購入は必要不可欠です。
俗に言う設備投資ですね。これら設備は事業継続のために購入されたものですから、当然、会計上で経費としての計上が必要になります。
経費は事業で得た利益から差し引くことが可能です。そのため経費計上できる諸経費が多ければ多いほど、その分、利益を下げることができ、支払う所得税額は少なくなります。
設備購入費の経費計上は、節税対策には欠かせない存在と言えるでしょう。
では1,000万円の工業機器を会社で購入したとします。
この場合、購入費用1,000万円を一度に経費計上できるのでしょうか?
購入費用を購入年度に一括で経費として計上したい経営者もいるでしょうが、基本的には購入設備の法定耐用年数に応じて、購入金額を決算期ごとに分割し、経費計上する会計処理が取られます。
この会計処理が減価償却です。法定耐用年数は法律で細かく定められており、その概要は下記のように購入する設備によって異なります。
購入設備 |
法定耐用年数 |
小型車(総排気量0.66リットル以下) |
4年 |
2輪・3輪自動車 |
3年 |
自動車 |
2年 |
リヤカー |
4年 |
蓄電池電源設備 |
6年 |
給排水・衛生設備、ガス設備 |
15年 |
小型車(総排気量0.66リットル以下)を100万円で購入した場合は法定耐用年数が4年ですから、毎年25万円づつ、4年間に渡り、減価償却費として経費計上していくといった具合です。
減価償却とは事業用資産を購入した際の、会計処理に用いられる経費計上方法。と覚えておくようにしてください。
自宅用マンションは減価償却の対象
いま解説したように減価償却は事業用資産のみに適用される経費計上方法です。
しかし、例外的に事業とは全く関係ない自宅用マンションも減価償却の対象になっています。
「個人が購入した自宅用マンションで、減価償却に何の利用価値があるの?」と思われる人も多いことでしょう。
マンション経営を行い、利益を上げている人なら話は別ですが、自分が住んでいる自宅用マンションは何の利益も生み出しません。となれば、減価償却は個人にとって、何の利用価値もない存在です。
しかし、注意して欲しいことが1点だけあります。それは自宅用マンションを売却する場合です。
自宅用マンションが減価償却の対象になっていることで、マンション売却時にこの減価償却費が所得税額に影響を及ぼすことになります。
「マンション売却なんて考えたこともない。」そう答える人も多いことでしょう。しかし、将来的に自宅用マンションを売却する可能性は皆無とは言い切れません。
そうなった時に、この減価償却費がマンション売却に及ぼす影響を理解してるかどうかが大きく響いてくるのです。
よって、この件については、自宅用マンションを所有している人すべてが、共通知識として理解しておく必要があるでしょう。
それでは引き続き、減価償却がマンション売却時の所得税支払にどのような影響を及ぼすのか、その真相を解説していくことにしましょう。
マンション売却で減価償却費が重要な理由
マンション売却で売却益が出ると、その売却益は所得とみなされ、所得税の支払い義務が発生します。
所得税の支払いは、すなわち売却益を下げることになるので、支払う所得税はできるだけ抑えたいところですよね。
ここで節税効果に大きく影響してくるのが、ここまで話してきた諸経費です。
ここではその諸経費と減価償却費の関係性を理解してもらい、減価償却費が所得税支払いにどう影響してくるのかを解説します。
マンション売却時に減価償却費は諸経費計算に必要!
何かを売って利益(売却益)を生み出すか。これは商取引のセオリーですが、マンション売却に限らず、商取引における売却益を求める際には、下記計算式が用いられます。
- 売却益=売却額−仕入価格−諸経費
仕入れに掛かった金額と、商品を売るために掛かった全経費を、売却額から差し引いた額が売却益です。
先にも話しましたが、所得税はこの売却益に対して発生するので、差し引く諸経費が多いほど売却益は下がり、支払う所得税は少なくなります。
会社経営者がありとあらゆるものを、経費として計上したがるのもこういった理由からです。
諸経費の存在こそが節税対策そのもというわけです。諸経費は業種や取引によって異なってきますが、マンション売却では、取得費と譲渡費用と呼ばれるものがそれに当たります。
その取得費の計算に欠かせないのが減価償却費なのです。となれば、減価償却費が多ければ諸費用が大きくなり、節税対策となるのでしょうか?
先に解説した減価償却の節税効果を考慮すれば、普通はそう考えてしまいますよね。
ですが残念ながらマンション売却時には、減価償却費が大きければ大きいほど諸経費は少なくなり、節税とは全く逆の増税効果を発揮します。
減価償却費がマンション売却で重要だと言ったのは、この節税への影響を懸念してのことで、正確な売却益を算出するのに必要不可欠な存在だからです。
それではなぜ減価償却費が増税効果を生み出してしまうのでしょうか?
その理由をマンション売却時の所得税額の算出方法から検証していくことにしましょう。
所得税の算出方法から見る減価償却費がもたらす影響
マンション売却時の所得税は、売却額から取得費と諸経費を差し引いた課税譲渡所得に対して発生します。
その課税譲渡所得の算出方法は下記の通りです。
- 課税譲渡所得=売却額(譲渡価格)−取得費−譲渡費用
取得費 |
売却する不動産の購入価格(仲介手数料を含む)から減価償却費を差し引いたもの |
譲渡費用 |
売却時に発生した仲介手数料等の費用 |
先に話したように、この取得費と譲渡費用がマンション売却時の諸費用に当たるのですが、ここで注目してもらいたいのが取得費の内訳です。
取得費はマンション購入価格を指しますが、この取得費のマンション購入価格は購入時の価格ではありません。
売却時のマンションの不動産価値が用いられます。そして、その売却時の不動産価値を算出する際、必要になってくるのが減価償却費です。
取得費は減価償却費を用い、下記計算式で求められます。
- 取得費=マンション購入価額−減価償却費
この計算式を見てもらえば一目瞭然ですが、減価償却費の存在が諸経費となる取得費の減少を引き起こしています。
減価償却費は大きければ大きいほど取得費を引き下げることになり、諸経費の減少を引き起こしているのです。
冒頭でマンション売却を検討する際には、減価償却費をしっかりと把握しておく必要があると話したのも、その存在が売却益に大きく影響してくることが理由です。
特に現在マンション売却を検討している人は、減価償却費が及ぼす影響をしっかりと念頭に置いておくようにしましょう。
マンションで減価償却費が発生するのは建物部分だけ
マンション売却時に減価償却費が及ぼす影響について理解してもらったところで、ここからはその減価償却費の計算方法について解説します。
減価償却費を算出する際に、よく理解しておいてもらいたいのが、土地には減価償却費は発生しないという点です。
よって、減価償却費を求めるためには、まず土地を除く、建物部分の購入代金を確認する必要があります。
また建物部分も建物本体と水道や電気、ガスなどの設備部分では、法定耐用年数が異なるため、減価償却費の算出方法が異なります。
そのため、それぞれの購入代金の確認が必要です。正確な数値を求めたいならば、必ず分けて計算することをおすすめします。
建物部分の購入代金の確認方法
一番簡単に建物部分の購入価格を確認する方法は、購入時に不動産会社から渡された下記書類です。
- 売買契約書
- 譲渡対価証明書
しかし、これら書類には建物部分と土地部分の価格が分けて記載されてないものもあるようです。
その場合は消費税額が記載されていないかを確認してください。
土地は非課税のため、消費税は課税されません。
よって、消費税額が分かれば、その金額を購入当時の消費税率で割ることで、建物部分の価格を求めることができます。
消費税が200万円で、消費税率が10%であれば、建物部分の購入価格は下記の通りです。
200万円÷0.1=2,000万円
また消費税の記載がないこともあるでしょう。
その場合は購入した不動産会社へ問い合わせてみるようにしてください。
調べるのが面倒くさいという人は、この方法が一番手っ取り早い確認方法かもしれませんね。
設備部分の購入代金の確認方法
建物本体と設備部分の購入価格も、先ほどと同じように下記書類で確認できます。
- 売買契約書
- 譲渡対価証明書
しかし、建物本体と設備部分の購入価格も、先ほどと同様に書面に別記載されていないことが多いようです。
この場合も購入した不動産会社へ問い合わせるようにしてください。ですが築年数の古い中古マンションの場合は、不動産会社も把握しておらず、2つを区分できないことがあるといいます。
この場合は仕方ないので、建物部分の購入価格だけの確認で結構です。敢えて時間をかける必要はありません。
マンションの減価償却費の計算方法
次はテーマでもある減価償却費の計算方法についての解説です。
実際に売りに出せば、仲介業者が正確な金額を算出してくれますが、検討段階では自ら算出する必要があります。
どれくらいの売却益が出るのかを予測するためにも、しっかりと覚えておきましょう。
計算方法は2通り
減価償却費の計算方法には定額法と定率法があり、対象となる資産に応じて、利用できる減価償却方法が決められています。
それでは2016年4月1日以降に購入した資産の適用区分を見てみましょう。
資産種類 |
適用区分 |
建物 |
定額法 |
建物附属設備および構築物 |
定額法 |
機械および装置、船舶、航空機、車両運搬具、工具器具備品 |
定額法または定率法 |
無形固定資産および生物 |
定額法 |
2016年4月1日以降に購入したマンションは定額法しか認められていません。
2016年3月末日以前に購入したマンションならば定率法を利用することもできますが、定率法を利用するには税務署への届け出が必要で、届け出がない場合は自動的に定額法が適用されます。
ですが減価償却費の必要性がない個人が、わざわざ届け出を行うとは考えられません。
一般的には定額法が用いられていると考えておけばいいでしょう。
それではこれら2つの計算方法には、どのような違いがあるのかを見ていくことにします。
定額法とは?
まずは一般的な計算方法となる定額法から解説していきます。
定額法は法律によって定められた法定耐用年数間、毎年同じ額を減価償却していく方法です。
前項の「減価償却の基本的な考え方」で解説した減価償却の方法が、この定額法に当たります。
- 購入価格1,000万円
- 法定耐用年数10年
上記条件で定額法を用いると、減価償却は下記のように行われます。
決算期 |
減価償却費 |
1期目 |
100万円 |
2期目 |
100万円 |
3期目 |
100万円 |
4期目 |
100万円 |
5期目 |
100万円 |
6期目 |
100万円 |
7期目 |
100万円 |
8期目 |
100万円 |
9期目 |
100万円 |
10期目 |
100万円 |
上記のように毎期、同額の減価償却費が法定対応年数を経過するまで、経費計上されるのが特徴です。
この定額法のメリットは、資産購入時の減価償却費を少なく抑え、利益を高くできる点でしょう。
そのため資産購入後に大きな利益が期待できない、銀行借入を検討しているなど、利益計上を高くしたい場合には、おすすめの減価償却方法となってきます。
定率法とは?
定額法は単に資産購入金額を法定耐用年数で割るだけですから、毎期の減価償却費を簡単に算出できますが、定率法の場合は少々ややこしいかもしれません。
定率法は法律で定められた償却率を用いて算出し、資産購入額から前期計上分の減価償却費を引いた金額にかけることで算出します。
先ほどと同じ条件で算出した減価償却は下記の通りです。
決算期 |
減価償却費 |
1期目 |
1,000万円×0.2=200万円 |
2期目 |
800万円×0.2=160万円 |
3期目 |
640万円×0.2=128万円 |
4期目 |
512万円×0.2=102万円 |
*償却率0.2で算出
上記のように初期段階で定額法よりも、多く減価償却ができるのが一番の特徴と言えるでしょう。
しかし、定率法には購入資産額と保証率から算出した償却補償額という規定があり、減価償却費がこの償却補償額を下回った決算期以降は、毎年同額の減価償却に移行されます。
途中で定額法に変更されるというわけですね。
この定率法のデメリットは初期の減価償却費が多くなり、定額法の場合より、資産購入後の利益が低くなる点です。
ですが、所得税の節税と投資資金が早期回収できる2つのメリットは見逃せません。
定額法と定率法の2つを利用できる場合には、どちらの減価償却を選んだ方が高いメリットを生む出すのかを、しっかり検討するようにしてください。
減価償却費の計算に必要な項目
減価償却費の計算方法について理解してもらったところで、減価償却費の計算方法について解説します。
先に話したようにマンションは定額法による減価償却なのが一般的です。
定額法を用いたマンションの減価償却費は、下記計算式で求められます。
マンション購入代金×償却率
マンション購入代金については、先ほどの解説で確認方法を理解してもらえたかと思うので、後は償却率の確認方法が分かれば、誰でも減価償却費を算出することができます。
それではその償却率の確認方法について、解説していくことにしましょう。
償却率とは?
償却率とは1年間に発生する減価償却費を求める際に用いられる指標で、法律で定められた法定耐用年数に応じて決められています。
法定耐用年数は建物の用途と構造によって異なりますが、用途と構造が分かれば、簡単に確認可能です。
しかし、マンション売却時の減価償却費は、売却時の法定耐用年数の償却率を計算に用いるため、簡単に確認することはできません。
そこでその償却費を確認するために、必要なのが売却時の法定耐用年数です。
売却時の法定耐用年数は下記計算式で求められます。
法定耐用年数−(経過年数×0.8)
それではこの計算に必要な下記2つの確認方法を紹介していきましょう。
- 法定耐用年数
- 経過年数
マンションの法定耐用年数は、下記の国税庁HPで確認できます。
国税庁:確定申告等作成コーナー
個人マンションの場合、用途は住宅用、構造は鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造となるので、法定耐用年数は47年です。
そして次の経過年数は、マンションの築年数を用いることになります。
それでは実際に下記条件で、売却時の法定耐用年数を算出してみることにしましょう。
- 鉄骨鉄筋コンクリート造(法定耐用年数47年)
- 経過年数10年6ヵ月
法定耐用年数47年−(11年×0.8)=38.2年
計算時に注意して欲しいのは、経過年数と売却時の法定耐用年数です。
経過年数は端数月は繰り上げて用いますが、算出した売却時の法定耐用年数の端数月は切り捨てになります。
よって、計算では経過年数は11年、算出された売却時の法定耐用年数は38年です。
計算時には忘れないように気を付けてくだださい。
ここまでくれば、下記サイト「耐用年数省令別表第七、別表第八、別表第九」で法定耐用年数38年の償却率を確認するだけです。
売却時の法定耐用年数の償却率が0.027と確認できました。
マンション売却時の減価償却費の算出には、償却率の確認に、それを導くために以上の作業が発生します。
少々面倒ではありますが、一度トライしてみてはいかがでしょうか。
実際に減価償却費を計算してみよう!
それでは最後に、実際に例を挙げて減価償却費を計算してみましょう。
減価償却費を算出する条件は下記の通りです。
- マンション購入代金3,000万円(建物本体)
- 鉄骨鉄筋コンクリート造(法定耐用年数47年)
- 経過年数15年2ヵ月
*今回は建物本体に設備費用を含んで形で計算します。
それではまずは、売却時の償却率を求めていくことにします。
法定耐用年数47年で、経過年数15年2ヵ月ですから、売却時の法定耐用年数は下記の通りです。
- 法定耐用年数47年−(16年×0.8)=34.2年=34年
「耐用年数省令別表第七、別表第八、別表第九」で法定耐用年数38年の償却率をみると0.053と確認できました。
それでは減価償却費を求める計算式に、この償却率を当てはめると、その答えは下記の通りです。
- マンション購入代金3,000万円×償却率0.053=159万円
マンション売却時の減価償却費は、売却時の償却率が分かれば簡単に算出できます。
初めての計算では戸惑うことがありますが、今回解説した通りに勧めてもらえば、決して難しい計算ではありません。慣れれば数分で計算できるでしょう。
まずは今回のように設備部分を合算した形で計算し、慣れればそれぞれ分けた形で計算してみることをおすすめします。
マンション減価償却の計算方法のまとめ
今回解説した通り、マンション売却時には、売却時の減価償却費が支払う所得税額に影響を及ぼします。
通常なら節税対策となる減価償却費が、増税効果をもたらすことには納得できないと感じた人も多かったでしょう。
しかし、この事実は曲げられません。マンション売却を検討する際には、今回解説した減価償却費が及ぼす影響を念頭に置く必要があります。
どれくらいの売却益が得られるのかを予測するためにも、まずはいくらの納税額が発生するのかを試算してみることをおすすめします。
ただどうしても減価償却の仕組みが理解できない、理解したけどめんどくさいという場合は信頼できる不動産j会社に相談してみるのも手です。
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