大手業者と中小業者の強みの違いとは?どちらを選ぶべき?
大手不動産業者と中小業者の比較は、前の記事のなかでも触れています(「マンション・一戸建て・土地売買 不動産業者の得意分野を知る!|不動産会社は「業者の規模」で3タイプに分かれる」)。
ちなみにこの記事で示した「業者の規模」とは次の三つです。
- 大手不動産会社
- 中堅不動産会社
- 中小の不動産会社
3タイプに分けられたそれぞれの概要については、前出の記事が参考になると思います。
ここでは不動産の売却を依頼した場合、大手と中小では顧客対応や営業スタイルなどに違いがあるかを比較してみます。
大手不動産業者は中小業者では何が違うのか
不動産業者を比較する前に、こちらをご覧ください。
たとえば、業界最大手の三井不動産ですが、「三井のリハウス(三井リアルティ)」が売買を担当し、高級賃貸は「三井の賃貸」が担当しています。
また新築部門に大手ハウスメーカーとしても有名な「三井ホーム」がありますし、リフォーム事業は「三井のリフォーム」と、それぞれ独立して運営しています。
大手不動産業者は売買と賃貸をはっきり区分けしている
これは、不動産業務の中心となる仲介業務を、売買と賃貸で区分けしていることを示しています。ここまではっきり分かれているのは中小業者では考えられませんが、もちろん大手と呼ばれる他社も、スタイルの違いこそあれ、売買と賃貸は区分けされ、なおかつ別々に運営しています。
ローカルの不動産会社になるほど、賃貸業務の比率が高くなり、従業員全員で賃貸業務を支えている会社も少なくありません。そのため、中小業者は売買を担当しながら同時に賃貸も受け持つ営業マンの存在が多くなりますし、事務員も賃貸の案内にかり出されるケースもあります。
これは、事業として人を多く雇えることができると言った違いはあります。そのため、会社の事業規模が大きくなるにしたがって、売買と賃貸を別々に運営出来るようになったわけです。大手不動産業者と中小業者の違いは、売買と賃貸を明確に区分けしているかの違いと言っても良いと思います。
もちろんこの差異は、営業の進め方から顧客満足度にも影響することになるでしょう。
このほかにも、大手不動産業者と中小業者で、両者の強みや弱点を示す違いは、いくつか浮かび上がってきます。
大手と中小では顧客データの数も明らかに違う
大手と中小では顧客データの数も明らかに違います。
また、大手に限ったことではありませんが、不動産会社は売却物件に合致する購入希望者を条件で検索できる便利なシステムを持っています。ですから、売却物件が条件に恵まれたものだと、わりと簡単に見込み客を探し出せる場合があります。ただ、このときも、もとになる顧客データを多く管理している大手のほうが有利です。
中古マンション売却は大手不動産業者のほうが断然有利
中古マンションの売却案件は、大手不動産業者かマンションの売買を多く扱っている中堅クラスの不動産会社が圧倒的に有利です。また、売却希望のマンションが分譲会社になっている場合は、その不動産会社に依頼するようにしましょう。
地域要件に左右される中小業者は、中古マンションの売買を扱っていない場合があります。また、投資案件のマンション需要は都心部に集中しています。その意味でもローカルな中小業者はマンションについては圏外と言えるでしょう。
地域色を熟知していることが中小業者の最大の強み
いっぽうで中小業者にも固有のメリットがあります。中小業者の強みは地域色を熟知した、大手とは違った意味での深い情報力です。また、不動産取引の場合は、ある意味でそれがすべてでもあります。ですから、規模が小さくても、残り続けているのです。また、中小・中堅クラスの地域の不動産会社には、個人の能力が高い人が多いこともひとつの特徴でしょう。
不動産売却にメリットが多いのは大手不動産業者なの?
こうして見ていくと、スケールメリットを生かした大手不動産会社は、利用者にとってメリットがあり魅力的な会社だとわかります。
もう一度大手不動産業者のメリットをまとめてみますと以下のようになります。
- 売買と賃貸を明確に区分けしている(営業は売買業務に集中しやすい)
- 顧客データの数が圧倒的に多い(物件購入予定者により早く出会える)
- 中古マンションの売却ノウハウが豊富(マンション売却なら大手が有利)
あらためて見ても、売却ユーザーにとって有益なのは大手不動産業者のほうです。
ただし、査定を依頼する場合は、事業者の規模は考えず、3つの業態から均等に査定を集めるべきという考えは、前出の記事にも書いた通り変わりません(「マンション・一戸建て・土地売買 不動産業者の得意分野を知る!|3つの業態から均等に査定を集めてみよう」)。なぜなら、顧客は会社の規模ではなく、あなたを担当した営業マンに満足するからです。
業者を決めるのは営業マンに査定額の根拠を聞いてからでも遅くない
会社の規模は関係ないと書きましたが、良い営業マンは会社の規模に関係なく存在しています。もちろん大手にもいますし、中小業者にもいるかもしれません。ただ、注意した方が良いのは、会社の規模や大手の安心感だけで業者を選ぶと失敗するということです。
これから複数の業者に査定を依頼すると思いますが、その際、それぞれの営業マンに査定額の根拠を聞いてみましょう。その話を聞いて、その営業マンを信じられるかが、決め手となります。顧客から信頼される営業マンは、査定の根拠が明確で理にかなったものが多くなります(詳しくは「仲介業者選びで、最も便利な一括査定について」に書いていますので、そちらも参考にしてください)。
顧客から信頼出来る営業マンは、環境に左右されることなく業績は安定しています。また、そうした営業マンは会社が用意している営業ツールを使っている人は少ないため、ツールが充実している会社かどうかもそれほど関係ありません。
売却を希望している方は、環境が整っているからと言うだけで、不動産会社や営業マンを選ばないことです。そのほうが、本当の意味で能力のある担当者に出会えることになるはずです。
現時点で言えるのは、業者の違いを踏まえながらも、環境の整った大手だから間違いないだろうと早合点をしてはいけないということ。そして、このことは、次に示す”違”いでも分かることになります。
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違いはまだある!大手不動産業者に多い「囲い込み」の問題
不動産業界では「囲い込み」問題がよく取り沙汰されます。少し前には、週刊ダイヤモンド2015年4月18日号「大手不動産が不正行為か 流出する“爆弾データ”の衝撃」が話題となりました。
不動産で言うところの「囲い込み」とは、売主・買主双方から仲介手数料を得る目的で、故意に他社からの客付けを拒否することです。つまり顧客を独り占めするのが「囲い込み」です。そして、「囲い込み」を頻繁に行っているとされるのが大手不動産業者です。
「囲い込み」は業者だけではなく売主にも損失が及ぶ
「囲い込み」は大手・中小など業者の規模を問わず注意しなければなりませんが、とくに大手不動産会社で多く発生すると言われてきました。
「囲い込み」は客付けを拒否された業者だけに損失が及ぶだけではなく、物件の売主にも及ぶことになります。「囲い込み」に気付いた場合は、業者と媒介契約を解除することも考えなければなりません。
「囲い込み」をわかりやすく言うと
たとえば、ある中古マンションの売出を仲介した場合、専任媒介契約を結ぶとレインズに物件を掲載することになります。これを見た客付け仲介業者は「ぜひ紹介させて欲しい」と仲介元の業者に連絡すれば、物件資料等を客付け仲介業者に出したりするのが普通です。
ところが、これを「ただいま契約を前提とした打ち合わせをしている最中です」と嘯くなど、客付けを拒む行為を「囲い込み」と言います。
また、「囲い込み」によって売主・買主双方から仲介手数料を得ることを「両手契約」を言います。
「囲い込み」が売主にもたらすデメリットとは
「囲い込み」は宅建業法では禁止されていますが、「両手契約」は禁止されていません。「両手契約」自体は法律上も問題がないですが、「囲い込み」は売主の販売チャンスを奪う行為となり、宅建業法では禁止されています。
また「囲い込み」は行為を実証し難いということがあります。したがって「囲い込み」は、業者のモラルの問題として片付けられやすい面があります。これを良いことに、一部の大手不動産業者が「両手契約」を得るために、売出物件の「囲い込み」を行うと、次のようなデメリットを売主にもたらします。
- 物件の販売機会ロス
- 売却期間の増長
- 売出価格の低減
そろそろ、大手不動産業者による「囲い込み」の事実が、売主にも少しずつバレています。
販売環境だけが良くても、その理由だけで大手を選ばないでほしいと言ったのは、売主が被るデメリットを見ればわかるでしょう。
2016年1月から売主もレインズをチェックできるように変わった
ただ、状況は少しずつ変わりつつあります。
2016年1月から囲い込み対策として、売主がレインズをチェックできるようになりました。それ以前は、レインズは不動産業者しか見られなかったのですが、売却依頼主向けに登録物件をチェックできるように変わったのです。このことが、すぐ「囲い込み」を無くすことにはなりませんが、その影響は少なからず広がるものと思います。
またソニー不動産がやっている、売主だけを担当するエージェント制度が広がることで「囲い込み」や「物件隠し」(レインズに登録してもすぐに登録物件を削除する)が良くないことだとする認識が浸透すれば、「囲い込み」を行う大手不動産業者も減少するのではないでしょうか。
まとめ|不動産売却は大手・中小よりも担当してもらう営業マンに
不動産業者は大手と中小業者では、同じ事業をしているとは思えないような環境上の違いがあります。ただし、個人がひとりの営業マンを通じて売却を進めていく過程には、大手でも中小でも、思っているほどの差異はありません。営業マンは日々の売却活動で、当該物件を勧める顧客がどれだけ育てられるかがカギになります。
ここでは大手不動産業者と中小業者では、どういった違いがあるかをまとめていますが、業者を表面的な要件の違いで選ぶのではなく、その会社がどんな営業スタイルを大事に考えているかを知ることです。あなたを担当する営業マンを知ることで、その会社が何を追求しているのかがわかってくるでしょう。