事務所・オフィスの原状回復費用を抑える4つのコツ!費用相場や工事の流れも解説
会社の中にはそれまで利用していた事務所との契約を解約して別の事務所に移転したり、会社自体を倒産させたりすることもあるでしょう。コロナウィルスの蔓延に伴ってテレワークが本格化し、事務所を持たずに営業を行おうと考える会社も増えています。事務所を離れる際に必要となるのが原状回復工事であり、基本的には借りた時と同じ状態に戻す必要があります。今回は原状回復の範囲や工事期間、原状回復工事の流れや費用面に焦点を当てながら解説を行います。
事務所・オフィスの原状回復範囲や期間の目安
事務所やオフィスを移転させる場合には既存の事務所の原状回復工事を行う必要があります。会社としては移転費用と原状回復工事の費用がかさむことで経済的な負担が高まります。
その中で原状回復の範囲や期間について知っておくことは重要です。どこまで元に戻せば良いのか、あるいは工事の開始時期などを把握することで、オフィス移転や解約の計画を立てやすくなります。具体的な範囲や工事期間の目安などを確認しましょう。
原状回復の範囲
原状回復の範囲としては「借りた時の状態に戻す」ことが基本です。入居する際に空っぽのスケルトン状態であったのであれば、退去する際もスケルトン状態にして戻す必要があります。
間仕切りやキッチン、照明など、もともとあったものがあれば、それは残しておいて問題ありません。最終的には契約書の内容が優先されますが、オーナーとの交渉次第で工事範囲が変わることもあります。
基本は元の状態に戻すことですが、柔軟に対応してくれる物件オーナーもいるので相談することがおすすめです。事務所の原状回復工事を行う際の主な作業は以下の通りです。
- ドアやガラスを含めた間仕切りの撤去
- 床やタイル、カーペットの張り替え
- 造作物の撤去
- 天井ボードの交換
- 壁のクロスの張り替え
- 床下配線の撤去
- 窓やブラインドの清掃
- 照明の撤去
- 電球の交換
- 残置物の廃棄 など
造作壁なども含まれる
原状回復の範囲として造作物の撤去がありますが、その中には造作壁の撤去も含まれます。造作壁とは支柱となる軽鉄を建てて、その上に石膏ボードを貼り付けた壁のことです。造作壁を採用することで、以下のような仕上げを楽しむことができます。
- クロス(壁紙)
- 塗装
- カラーガラス
- タイル
- グラフィックシート など
造作壁は会社内の雰囲気を作り上げるものであり、ポップな印象にしたりシックな感じにしたりすることができます。入居時に手を加えた場合は退去時に撤去することが原状回復の基本です。造作壁に関しても同様であり、借りた時の状態に戻すようにしましょう。
工事期間の目安
工事期間の目安としては100坪程度のオフィスで1ヶ月程度を見込んでおくと良いでしょう。100坪よりも小さいオフィスであれば1ヶ月以内が目安となり、100坪以上のオフィスであれば1ヶ月よりさらに長い時間がかかることもあります。
あらかじめ工事期間を頭に入れた上で退去の連絡や業者探しをする必要があります。したがって、オフィスの退去や移転を検討し始めたら、早め早めにオーナーに相談したり業者探しをしたりすることが求められます。
明け渡しのタイミング
事務所やオフィスの明け渡しは契約期間内に済ませなければなりません。住居として借りた賃貸物件を解約する場合は解約日までに引っ越しをすれば問題ありませんが、オフィスの場合は原状回復工事を終えた上で明け渡す必要があります。
万一、契約期間内に工事が終了しなかった場合は日割り計算での家賃が発生することもあり、余計な出費となります。オフィスの規模にもよりますが、契約期間の1ヶ月程度を目安に原状回復工事を開始することがポイントです。
オフィスの解約を検討している場合は契約期間を踏まえた上で工事計画を立てるようにしましょう。
事務所・オフィスの原状回復費用相場
ここからは事務所やオフィスの原状回復費用についてご紹介します。オフィスを解約する場合には元の状態に戻して返却することが一般的であり、そのための工事を行う必要があります。
原状回復工事に関しても一定の費用が必要となるので、あらかじめ予算を組むことが大切です。そのためには一般的な費用相場について把握することが求められます。想定よりも費用が高かった場合の対処法も含めて確認しましょう。
一般的な費用相場
オフィスの原状回復工事を行う際の一般的な費用相場については以下の通りです。
オフィスの規模 | 坪単価 |
---|---|
小・中規模オフィス | 2万円~3万円 |
大規模オフィス(100坪以上) | 3万円~7万円 |
オフィスの規模によって坪単価に違いが出ることが特徴です。小規模や中規模程度のオフィスであれば2万円から3万円が目安です。仮に30坪のオフィスの原状回復工事を行う場合は60万円~90万円程度が目安となります。
100坪以上の大規模オフィスに関してはやや坪単価が上がる傾向にあります。表では上限7万円が目安となっていますが、オフィス内の残置物や作業量によっては坪単価が10万円程度まで跳ね上がることがあります。
大規模オフィスの場合は小規模や中規模のオフィスと比べて費用が高額になりやすいので注意しましょう。
原状回復費用が借主負担になる理由
基本的に事務所やオフィスとして借りた物件は借主負担で原状回復工事を行わなければなりません。それは契約者や企業によって使い方が全く異なることが理由です。
住宅として契約する場合は、ある程度どういった使われ方をするのか想定できます。そのため、あらかじめ敷金やクリーニング費用、修繕積立金などを徴収して物件のオーナー負担で工事を行うことができます。
一方で、事務所やオフィスの場合はあらかじめどういった使われ方をするのかオーナー側では把握できません。企業によっては数多くの間仕切りを使って個室を多く作るケースもあるでしょう。
あるいは、壁や天井、鉄部の装飾やデザインに凝っている企業もあるでしょう。実際に利用している間は問題ありませんが、退去する際に必要な工事はオフィスごとに異なるのが現実です。
あらかじめ原状回復にかかる費用が想定できないことから、借主負担によって工事が行われます。また、通常摩耗と呼ばれる普通に使っていて汚れた箇所の工事や修繕についても借主負担です。
住宅の賃貸契約とは事情が異なるので理解しておきましょう。
事務所・オフィスの原状回復費用を抑えるコツ
原状回復費は削減の余地があることを知る
原状回復工事に関して、相場よりも費用が高くなることがあります。例えば、工事業者がしっかりと現地調査を行わずにおおよその見積もりを出してきた場合などに、「想定よりも高い」と感じることがあるでしょう。
そうした場合は必ず現地調査を行ってから再度見積もりを出してもらうことが重要です。
業者の中には借主が素人であることを良いことにあえて高い金額を提示してくることもあります。疑問に思う部分があれば、なぜその金額になるのか細かく説明してもらうと良いでしょう。
その他には必要のない工事まで含まれている可能性があります。例えば、一部だけ張り替えれば良い壁や床材が全面張り替えになっていることもあります。
また、壁紙や床材の素材が元よりもアップグレードされているために費用が高くなることもあります。基本的に素材のアップグレードまでを行う必要はないので、しっかりと確認することが重要です。
費用面に関して少しでも不安に思う部分があれば必ず業者に確認するようにしましょう。
費用が高い場合はオーナーとの交渉も重要
想定よりも費用が高いと感じた場合はオーナーと交渉することも重要です。提示された作業内容や費用に関して何も言わずにいると、本当にそのまま工事が行われて借主の経済的な負担が重くなってしまいます。
本来行う必要のない工事まで依頼された場合は、オーナーに相談して排除してもらいましょう。上記で取り上げた素材のアップグレードなどもその1つです。あるいは、交換したばかりの電球や照明を再度交換するように要求されることもあります。これも交渉次第では不要と判断されることがあります。
契約書に記載がある内容は覆すことが難しいですが、そうでなければ十分に交渉の余地があります。工事業者の選定も含めてオーナーとの交渉を大切にしましょう。
居抜き募集の相談もおすすめ
事務所やオフィスを明け渡す際は居抜き募集を行うこともおすすめです。
居抜き物件
過去に入っていたお店やオフィスの内装や空調設備、什器などの設備がそのまま残った状態の物件のこと。
次に入居を予定している個人や企業がオフィスの設備をそのまま使いたいという場合は居抜き物件として募集することで双方にメリットがあります。
退去する側としては原状回復工事を行わなくて済みますし、入居者側としては必要な設備が揃った状態で事業を開始できます。
居抜き募集を行うためにはオーナーの承認が必要です。次に入居する事業者の要望も踏まえつつ、居抜き募集が可能かどうか相談することも悪くないでしょう。
複数の業者に相見積もりをとる
一回の見積申込みで複数の解体業者から相見積もりをとることができる一括見積りサービスがあります。このサービスを利用することで、業者間に価格競争が生まれるため、より安い価格で発注できる可能性が高くなるのです。
ここで気になるのは、安かろう悪かろうにならないのか、ということだと思います。その点については、一括見積りサービス提供元が業者と提携する際に一定の審査基準を設けているため、粗悪な業者に依頼してしまうというリスクはほぼ0になっています。
物件オーナー指定の解体業者などに依頼しなくてよいのであれば、積極的に一括見積りサービスなどを使って相見積もりをとることが最もコストを抑える方法となります。
事務所・オフィスの原状回復工事の流れ
- 事務所(オフィス)の契約書の内容をしっかり確認する
- 工事業者に見積もり依頼の問い合わせをする
- 工事業者に現地調査してもらい工事内容の確認をする
- 原状回復工事にかかる費用の見積もりと工事日程などを確認する
- 原状回復工事の正式発注と工事着工
- 原状回復工事の完了、事務所(オフィス)の引き渡し
事務所(オフィス)の契約書の内容をしっかり確認する
事務所やオフィスを解約する際は必ず契約書の内容を確認することが重要です。基本的には元の状態に戻して返却する必要がありますが、契約書に原状回復の範囲や義務が記載されていることがあります。
また、工事業者が指定されているケースもあるので確認が必要です。契約書で工事業者が指定されていなければ自分たちで探すことができますが、指定されている場合はその業者に依頼しなければなりません。
そうなると、原状回復費用が高めに設定される可能性もあるのでオーナーと交渉してみることもおすすめです。まずは契約書の内容を確認した上で疑問点があればオーナーに相談してみましょう。
自分たちだけで判断するのではなく、オーナーを交えて話し合うことで疑問点や不安な部分を解消することがポイントです。
工事業者に見積もり依頼の問い合わせをする
続いては工事業者に見積もり依頼の問い合わせを行います。工事業者が指定されていなければ、自分たちで自由に業者を探すことができます。その際は一括見積りサービスを利用して相見積もりをとることがおすすめです。
基本的に業者選びの際は比較対象を持つことがポイントです。3社程度から話を聞くことで費用面やスケジュール面、工事内容面などの検討を行いやすくなります。一括見積りサービスを利用すれば簡単に相見積もりをとれるので積極的に活用しましょう。
また、オフィス内に廃棄が必要な残置物がある場合、それらの処理が可能かどうか尋ねることも重要です。残置物の種類や量によっては費用が高くなることもありますが、必ず事前に確認しておきましょう。
工事業者に現地調査してもらい工事内容の確認をする
一括見積りサービスを利用して業者選びを進める中で、工事業者に現地調査をしてもらうことも大切です。実際に現地を見てもらうことでより具体的な工事内容やスケジュール、費用面の話をしやすくなります。
業者によっては電話やメールだけで見積りを出そうとすることもありますが、それは避けておいた方が良いでしょう。現地調査を行わずに契約を結んでしまうと、後から追加費用を請求されたり金額の修正をされたりする可能性が高まるので注意が必要です。
担当者や業者の雰囲気を知るという意味でも現地調査を通して工事内容の確認を行うことがおすすめです。
原状回復工事にかかる費用の見積もりと工事日程などを確認する
現地調査まで終えたら具体的な費用面の話を行います。原状回復工事を依頼する側としては最も気になるのが費用面やスケジュール面でしょう。特に費用に関しては数十万円から数百万円単位でかかるものであり、少しでも安くしたいと考えるのは自然なことです。
相見積りを行っている場合は、全ての業者の金額と工事日程を聞いた上で最終的に1社に絞ることがポイントです。業者の信頼性なども含めて検討することで、より納得感のある工事を行うことができます。
費用面や工事日程の面も大切ですが、担当者の雰囲気や対応、コミュニケーション力なども含めて総合的に信頼できると思った業者を選びましょう。
原状回復工事の正式発注と工事着工
費用や工事日程の確認を終えたら正式に原状回復工事の依頼を行います。施工業者によっては手付金などの支払いが必要となるケースもあるので、事前に確認しておきましょう。手付金に関しては工事代金の3分の1や半額の支払いなど、さまざまなケースがあります。
手付金をとらずに工事が完了してから全額を徴収するという業者もあるので、その辺は確認しておくと良いでしょう。正式に工事を発注することになったら、後は施工業者に任せるだけです。スケジュール通りに工事が終わることを想定して、新しいオフィスへの移転作業やその他諸々のやるべきことを行っておきましょう。
原状回復工事の完了、事務所(オフィス)の引き渡し
原状回復工事が完了したら事務所の引き渡しを行います。次に入る企業が決まっている場合はそのまま引き渡せば問題ありません。場合によっては次に入る企業が決まっていないこともあるので、その際はオーナーに工事が完了したことを報告しておきましょう。
工事代金に関して、手付金を支払っていた施工業者の場合は残金の支払いを行います。それ以外の業者に関しては一括で工事代金を支払います。
要望通りに工事が完了したことを確認してから事務所の引き渡しを行いましょう。
事務所・オフィスの原状回復トラブルや注意点
ここからは事務所やオフィスの原状回復におけるトラブルや注意点についてご紹介します。オフィスの原状回復工事が何事もなく終われば良いですが、なかなか一筋縄ではいかない部分もあります。
実際に工事を行う際にはさまざまなトラブルに注意する必要があります。具体的にどういったトラブルや注意点があるのか確認しましょう。
保証金と同額に近い費用を請求される
まず原状回復工事のトラブルとして、保証金と同額に近い費用を請求されることが挙げられます。例えば、オフィスの入居時に300万円の保証金を納めていたと仮定します。
実際に原状回復の見積もりを依頼すると工事費用の総額が300万円程度になることがあります。本当にそれだけの費用負担が必要であれば問題ありませんが、オーナー側の意向で保証金ぎりぎりいっぱいの工事を行おうとしている可能性もあります。
特に工事業者が指定されている場合は注意が必要です。電球の交換やクロスの張り替え、その他の作業を含めて以前よりも内装をアップグレードさせようとしている可能性もあるのでオーナーに確認しましょう。
本来必要のない工事まで依頼される
本来必要のない工事まで依頼されることも注意点の1つです。原状回復工事とは基本的に借りた時の状態に戻すことを指します。
それにも関わらず、新たなカーペットの交換を依頼されたり、入居時とは異なるクロスの張り替えを要求されたりすることがあります。
その方が費用的に安くなるのであれば検討の余地はありますが、費用的に高くなるようであれば受け付けないことが重要です。交換したばかりの電球なども使える状態であれば再度交換する必要はありません。借主側としても主張すべきところはきちんと主張しましょう。
指定業者以外は受け付けない
オーナー側の意向で指定業者以外は受け付けないという物件も少なくありません。指定業者以外受け付けない場合、借り主としては相見積もりを行うことができません。そうなると、提示された金額がいくら高くても比較対象を作ることができず、渋々費用を捻出することになります。
契約書に業者に関する記載がある場合は交渉することが難しいかもしれません。一方で、契約書に何の記載もなくオーナーが口頭で言っているだけであれば交渉してみると良いでしょう。
他の業者の方が安くて質の良い工事をする可能性も十分にあります。経済的な負担も含めて最後まで粘り強く交渉することが大切です。
敷金の返還時期
オフィスを退去した後に気になるのが敷金の返還についてです。原状回復費用の計算と支払いが済んだ後は、敷金(保証金)が返還されます。返還時期に関しては物件によって異なるので契約書を確認することが大切です。
主な返還時期としては以下の通りです。
- 速やかに返還する
- 3ヶ月以内に返還する
- 6ヶ月以内に返還する など
一般的には3ヶ月以内や6ヶ月以内の返還が多いです。居住用の物件と比較すると長い期間ですが、事業用の物件の場合は隠れた破損や損傷が多いことに起因しています。
明け渡した後に何か破損が見つかった場合に対応するため敷金の返還時期にゆとりを持たせています。「速やかに返還する」と記載があった場合は、退去後1ヶ月以内が目安となります。
注意したいのは契約書に返還時期の記載がない場合です。その場合はいつまでに返還されるのかオーナーに確認しましょう。退去後に金銭トラブルが発生しないように確認すべきことはあらかじめ確認することが重要です。
困った場合はオーナーへの相談と契約書の確認を
原状回復工事ではさまざまなトラブルに見舞われる可能性があります。何か困ったことがあれば必ずオーナーに相談することが重要です。一番良くないのは自分たちだけで判断してしまうことです。自分たちだけで判断すると、最終的に損をするのは借主側になることが往々にしてあります。
まずはオーナーに相談してどうにかならないかと交渉してみることが重要です。
また、契約書の内容を再度確認することも重要です。契約書に記載がある内容に関しては基本的に覆すことができません。記載がなければ交渉の余地があるので、オーナーに取り合ってみると良いでしょう。
まとめ
事務所やオフィスの原状回復工事に注目して解説を行いました。原状回復に関しては借主の責任で行う必要があり、基本的に借りた時の元の状態に戻すことが求められます。費用負担者も借主であり、最後の最後に経済的な負担がのしかかります。
オーナーによっては柔軟に対応してくれることもあるので、何か迷ったり困ったりしたことがあれば早めに相談することが大切です。オフィスの規模が大きくなれば工事にかかる費用負担も重くなります。居抜き募集の相談も含めて最善を尽くした上で返却に向けた歩みを進めましょう。