解体工事の着手金(手付金)事情とは?事前に知っておくべき注意点も解説!
解体工事を依頼する際に、着手金という言葉を耳にすることがあるでしょう。実際に着手金はどれくらい支払えば良いのか、一括払いのケースはあるのかなど、さまざまな疑問を抱える施主の方も少なくありません。そこで今回は解体工事と着手金の関係の関係に注目をして、その内実について解説を行っていきます。解体工事を行うためには一定の費用がかかるのが自然なことであり、代金の支払いタイミングも業者によってまちまちです。工事代金の支払い方法も含めて解説を行っていきますので、どうぞご覧ください。
解体工事と着手金の関係
それでは、解体工事と着手金の関係から取り上げていきます。着手金とは工事や作業を開始するために必要となる費用のことで、基本的には工事開始前に支払うことになります。施主としては、着手金の額によって資金計画を立て直さなければならない可能性が出てくるなど、少なからず経済的なやり繰りに影響を与えるものです。
実際に解体工事を依頼する場合、どういった形で代金の支払いをしていくのかわからないという方もいるでしょう。さまざまなケースを挙げていくので、それぞれの対応について理解を深めていきましょう。
均等割が多い
まず、解体工事の費用負担に関しては均等割と呼ばれる支払いが多くなります。均等割とは、それぞれの支払い時の金額を同一にすることです。
例えば、200万円の解体費用を2回払いとする場合、1回目が100万円、2回目も100万円支払うことで契約を履行してもらえます。
同様に300万円の解体費用を3回払いで支払う場合、1回目も2回目も3回目もそれぞれ100万円ずつ支払うことになります。
基本的に1回目に支払う代金のことを着手金と呼んでいます。工事開始前に支払うことが一般的で、工事着手に当たって納付する費用だと考えておけば問題ありません。全ての解体業者が均等割を採用しているわけではありませんが、最もポピュラーな支払い方法として頭に入れておくと良いでしょう。
一括払いのケースも
2回払いや3回払い、場合によっては4回払いなどもあるのが解体費用の支払いですが、一括払いのケースも珍しくありません。一括払いの場合は、解体費用の総額をまとめて支払うことになります。100万円であれば100万円を、200万円であれば200万円をまとめて支払うのが一括払いの特徴です。
一括払いの場合は、基本的に工事完了後にまとめて支払うことが多いです。工事の完了をもって代金の支払いを行うので、施主としては最も安心できる支払い方法でしょう。
それほど工事代金が高くない場合には一括払いが採用されることもあります。一括払いの場合は着手金という概念がなくなり、代金をまとめて支払うことになると覚えておきましょう。
分割払いの回数は交渉次第
均等割や一括払いなど、工事代金の支払い方法はさまざまですが、分割払いの場合は交渉次第で回数を決めることができます。基本的には2回払いや3回払いが中心となりますが、工事費用が高くなる場合は4回払いに応じてくれる業者もあります。
2回払いの場合は着手金と工事完了後の残金の支払い、3回払いは着手金と中間金、そして工事完了後の残金の支払いという形になります。4回払いの場合は、中間金が2回あると考えておけば問題ありません。
支払い回数に関しては特に規定があるわけではないので、施主と解体業者の話し合いによって決まることがほとんどです。両者の合意さえあれば、自由に回数を決められます。
例えば、ローンを組む関係で着手金を多く支払えないというケースもあるでしょう。その場合は、着手金を減らして中間金や工事完了後の支払いを増やすといった対応も取ることができます。
大切なのはお互いが合意することであって、柔軟な形で話し合いを行うことが重要です。解体業者としても、人件費や重機の運搬費用、燃料費用といった経費を負担しなければならないので、着手金や中間金が欲しいと思っているケースは少なくありません。
施主にも施主側のニーズがあり、お互いの妥結点を見出して合意することがポイントです。
着手金が多い場合は注意
分割払いの回数は交渉次第であり、場合によっては一括払いを採用することも可能です。その際に注意しておきたいことがあります。それは着手金を多く取ろうとする業者と巡り合った場合です。
分割払いの場合、基本的に均等割を採用する業者が多く、工事費用が200万円で2回払いであれば100万円ずつ徴収するケースがほとんどです。
しかし、場合によっては着手金が150万円で、工事完了後の支払いを50万円などと設定してくる業者もあるでしょう。着手金があまりにも多い場合、該当する業者の経営が上手くいっていない可能性があります。
着手金を多く取って持ち逃げすることを考えていたり、資金繰りが上手くいっていないので、最初に多く取ろうと考えたりすることがあります。全ての業者がそうとは限りませんが、着手金を多く取ろうとする業者には注意が必要です。
施主としても、なぜそれだけ多くの着手金を取ろうとするのか質問してみることもおすすめです。その際にきちんとした理由を述べられないようであれば、あえて契約を結ばないことも選択肢の1つです。
解体工事代金の支払い方法
ここからは、解体工事代金の支払い方法についてご紹介します。解体工事にかかる費用は高額になることが多く、施主も解体業者もしっかりと管理を行わなければトラブルにつながってしまう可能性があります。
その中で、代金の支払い方法や支払いタイミングに関しては事前にきちんと合意しておく必要があります。その具体的な考え方について確認していきましょう。
現金・銀行振込
まず、解体工事の代金支払いに関しては、現金払いや銀行振込となることが一般的です。特に高額な費用を支払う場合は、銀行振込を採用するケースが多くなるでしょう。
現金払いや銀行振込のメリットとしては、金利負担がないことが挙げられます。施主自身の手持ち資金内で支払うことができれば、特にローンを組む必要もありません。
銀行振込の場合は多少の振込手数料がかかりますが、ローンの金利などと比べれば安いものです。解体業者としても確実に費用を回収できるので、双方にメリットがある支払い方法です。
まずは現金や銀行振込によって支払いできるかどうか、施主自身の資金面も含めて確認してみると良いでしょう。
クレジットカード・ローン払い
続いての工事代金の支払い方法として、クレジットカード払いやローン払いを挙げることができます。個人で解体工事を依頼する場合、まとまった資金を持っていないこともあるでしょう。
その場合は、ローンを組んだりクレジットカード決済によって分割払いを可能にしたりすることが有効です。
特に建て替え工事を行う場合は、建て替えのための費用としてローンを組むことができます。そこに解体工事の費用を組み込むことも可能であり、手持ち資金が十分になくても無理なく支払いを行うことができます。
また、解体工事のみを行う場合でもフリーローンなどの活用をすることができます。まずは金融機関に行って、どういった種類のローンを組める可能性があるのか聞いてみることがポイントです。
ただし、クレジットカード払いやローン払いの場合、金利負担を強いられることになるので注意が必要です。現金や銀行振込であれば金利が発生することはありませんが、クレジットカードやローンを活用する場合は相応の金利が発生します。
そのため、支払い総額が大きくなることを想定した上で借入を行うようにしましょう。
着手金は現金払いが基本
解体工事の代金支払いに関して、着手金は現金払いが基本となることを頭に入れておきましょう。ローンを組む場合や借入を行う場合でも、基本的に着手金だけは現金払いとなることが一般的です。
工事完了後に一括払いとなる場合は特に問題ありませんが、分割払いをする場合は工事開始前に着手金を支払うことになります。
着手金として必要な現金を持ち合わせていない場合は、業者にかけ合って着手金の金額を低くしてもらったり、支払い時期をずらしてもらったりすることがおすすめです。
場合によっては、ローン払いやクレジットカード払いに対応してくれることもあります。一般的に着手金は現金払いであることを念頭に置いた上で、業者との交渉を進めていきましょう。
支払いのタイミングは事前に確認を
解体費用の支払いのタイミングに関しては事前に確認をしておくことが重要です。一括払いの場合は工事完了後の支払いが基本となるので、特に確認しなくても問題ないでしょう。
一方で、分割払いの場合はどのタイミングでどれくらいの費用を支払うのか確認することが大切です。業者によって均等割のケースもあれば、毎回支払う金額が異なるケースもあります。
例えば、解体費用が100万円の3回払いで、着手金が20万円、中間金が30万円、最終支払いが50万円といったケースもあります。金額や回数はさまざまですが、施主としては最低限、以下の3点について確実に認識しておくことが大切です。
- 支払い回数
- それぞれの支払い金額
- 支払いのタイミング
特に支払いのタイミングに関しては、どの時点で支払い完了となっている必要があるのか入念にチェックしておきましょう。中間金の支払い期限なども重要なポイントです。ローンを組む場合も、それぞれの支払いをしようとする時期に必要な資金があるのかどうかを踏まえた上で、最終的な合意形成を図ることがポイントです。
解体工事の着手金トラブル
ここからは、解体工事の着手金トラブルに焦点を当てて解説を行っていきます。解体工事の支払い回数や支払いタイミングに関しては特に規定があるわけではなく、業者との交渉によって決められることがほとんどです。
順調に工事が進んで何のトラブルもなく解体が進めば一番ですが、そう上手くいかないこともあります。着手金だけを取って逃げようとする悪徳業者が存在することもありますし、不測の事態が発生して工事が進まないこともあります。さまざまなトラブルがあることを理解するために、具体的な内容について確認していきましょう。
解体工事開始の予定が立たない
解体工事の着手金トラブルとしては、解体工事開始の予定が立たないというケースが挙げられます。悪意のあるなしに関わらず、着手金を支払った後に工事を開始できないと言われることがあります。
その理由はさまざまですが、例えば、急遽工事を予定していた作業員が退職してしまったというケースや、会社自体が倒産したというケースが想定されるでしょう。
また、建て替え工事を行う場合、解体工事と新築工事を行うのは別々の業者となります。ハウスメーカーや工務店経由で解体工事を依頼していた場合、急遽解体を予定していた業者に断られてしまい、なかなか次の業者が見つからないといったケースもあります。
いずれにしても施主としては困った状況になりますが、こうしたケースがあることを想定しておくことが大切です。
着工時期の遅れ
着工金に関するトラブルとしては、着工時期の遅れも挙げることができます。工事開始の予定は立っているものの、本来契約していた時期より遅い着工になるというケースがあります。
その原因としては、人手不足や資材不足などが挙げられます。解体業者としてもより多くの契約を取りたいことから、工事契約を先に結ぼうとする傾向があります。
需要があれば、個人や法人を問わず多くの契約を結んでいくことになりますが、結局社内の人材が不足していて着工に遅れが出るということも珍しくありません。この辺は、業者の実情や契約書の内容などを見て総合的に判断することが大切です。
見積もり提示や契約交渉を行う段階で、解体スケジュールに関して曖昧なことを言われた場合は他の業者に切り替えることも選択肢の1つです。
解体工事の放棄
解体工事の着手金に関して、さらに悪質なケースになってくると工事を放棄してしまうこともあります。工事の着工はしたものの、途中で何らかの理由をつけて工事をやめてしまうケースがあるのです。
施主としては信じられないような思いでしょうが、業者としては最初から工事を完了する気がなかったかもしれません。
こうした事例に対応するために、「工事完了保証」と呼ばれる制度を活用することがおすすめです。解体業者自身でも制度を用意していることがありますし、業者探しを行うサイトによっても工事完了保証を謳っていることがあります。
何らかの理由で解体工事を行えなくなった場合、工事完了保証を受けていれば、別の業者に引き続き解体工事を行ってもらうことができます。また、工事代金に関しても当初予定していた代金を超えることはありません。
保証金の支払いなど、多少費用が高くなることはありますが、途中で工事を投げ出されるよりは安心感が高まるでしょう。本来はしっかりとした解体業者に工事を依頼して無事に解体してもらうことが一番ですが、悪質なケースがあることも頭に入れておくことが重要です。
解体業者の破産
着手金に関するトラブルとしては、解体業者の破産も挙げることができます。着手金を頼りにしているような自転車操業の業者の場合、いつ倒産したり破産したりしてもおかしくないような状況にあります。
会社の財務状況まではなかなか見破れないかもしれませんが、担当者の対応や契約を取るための執着心など、違和感を覚える部分があれば他の業者に切り替えた方が良いでしょう。
また、工事代金の総額と比較して着手金があまりにも高い場合にも注意が必要です。均等割の場合、もしくは中間金や最終支払いの金額と比較して着手金が安い場合はそれほど心配ありません。
着手金に関しては、安い業者であれば総額の20%程度を提示してくるケースも珍しくありません。そうした業者であれば比較的安心ですが、反対に着手金が総額の70%や80%となるケースは注意が必要です。
場合によっては最初から工事の着工をする気がなく、着手金を持ち逃げしようとしていることも考えられます。さまざまな点を総合的に判断する中で、1つの基準として着手金の割合に気をつけておきましょう。
契約内容と異なる工事
さまざまなトラブルがある着手金の問題ですが、契約内容とは異なる工事が行われることもあります。解体工事では建物本体の取り壊し以外に、付帯工事と呼ばれる工事を依頼することがあります。
例えば、以下のような工事を挙げることができます。
- ブロック塀の撤去
- 樹木の撤去
- 庭石・庭木の撤去
- カーポートの撤去
- フェンスの撤去
- 外構除去工事
- 井戸・浄化槽の撤去
- 土間コンクリートの撤去 など
建物本体の取り壊しに関してもそうですが、事前に依頼していた工事を行わずに工事完了としようとするケースがあります。施主が注意をして対応してくれれば問題ありませんが、何の悪びれ感もなく代金を請求しようとしてくるケースもあるでしょう。
こうしたトラブルに対応するために、契約書の内容をきちんと確認しておくことが大切です。優良な業者であれば1つ1つの工事や作業内容がきちんと記載されており、それぞれの項目にどれくらいの費用がかかるのか記載されています。
一方で、簡易的な契約書しか提示しない業者の場合、「工事一式〇〇万円」といった書面を提示してくることがあります。こうした業者に工事を依頼して何らかのトラブルが発生した場合、施主としても強く言いにくくなってしまう部分があります。
契約内容と異なる工事をされることがないように、あらかじめ契約書の内容をしっかりと確認した上で不備があれば訂正してもらうようにしましょう。
解体工事の着手金トラブルに遭った場合の対応
ここからは、解体工事の着手金トラブルに遭った場合の対応についてご紹介します。上記でも取り上げたように、解体工事においてトラブルはつきものであり、着手金関連のトラブルも後を絶ちません。
施主としては確実に解体工事を遂行してもらいたいところであり、トラブルが発生するのは避けたいのが本心でしょう。しかし、不可抗力などを含めてどうしてもトラブルが発生してしまうことがあります。そうなった場合にできることについて理解を深めていきましょう。
消費者センターに相談
まず、着手金トラブルに遭った場合の対応としては消費者センターに相談することが有効です。着手金に限ったことではありませんが、特に金銭トラブルについては当事者間だけで解消することが難しいケースがあります。
その場合は第三者を交えることで、客観的にトラブル解決への道筋を探ってもらうことがおすすめです。
消費生活に関わるトラブルや相談などの対応を行うのが消費者センターの役割であり、解体工事で生じたトラブルにも対応してもらえます。
消費者センターについては全国各地に窓口が開設されており、日々対応を行っています。まずは、消費者センターに電話をしてみて、必要な指示を仰ぐことが有効です。
弁護士や法テラスに相談
解体工事の着手金トラブルに遭った場合は、弁護士や法テラスに相談することもおすすめです。消費者センターでも解決に向けたヒントを提示してくれることがありますが、それだけでは解決が難しいこともあります。
その場合は、弁護士や法テラスに相談することで、法的な観点から交渉を行ってくれます。弁護士の中には建設業界のトラブルに強い方も多数存在します。
過去の事例などを引き合いに出して、施主が有利になるような働きかけをしてくれることもあるでしょう。着手金を含めたトラブルに巻き込まれた場合、自分1人で悩むのではなく、第三者の力を借りることが重要です。
まとめ
解体工事と着手金の関係に注目をして、具体的に解説を行ってきました。着手金の有無や金額については業者によってまちまちであり、特に決まった規定があるわけではありません。業者と施主の間で合意した形で、支払いを行う必要があります。
着手金の支払いに関してはトラブルが発生することもあります。事前にどういったトラブルが起こり得るのか想定しておくことで、対策を立てることもできます。自分では解決できないと思った場合、消費者センターや弁護士、法テラスといった第三者を活用することが重要です。最終的に安心して解体工事を終えられるように、事前にできることは確実に行っておきましょう。